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無職が始める異世界争乱記  作者: 六輝ガラン
争乱1 巨悪竜の砂漠、インシジャーム
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七十八話 黄昏と鬼神-14

 オレリアを抱きかかえたまま地面を蹴った。後ろは振り向かない。怪音は鳴りやんでいる。毒光もこれだけ離れれば届かない。

「―ー栄太さん?」

 オレリアがつぶやいた。

「ヒラール姫と合流する」

「他のみなさんは?」

 答える必要はない。取り乱されても面倒だ。

「離して下さい。私は大丈夫ですから」

 オレリアは、怒っているようだ。弱者として扱われることが耐えられないのだろう。安いプライドなんて命より価値があるとは思えないが。


「直視したら精神が焼かれるぞ」

 歪な神聖もはや汚染源でしかない。己の根源すら忘れ、消滅することすら許されず世界を彷徨うもの。

「……みなさんは無事でしょうか?」

 その言葉込められた真意に答えてやることはできない。一兵卒の治療に専念するほどの時間はない。

 最適解は、こいつらの状況をヒラール姫に伝えて、避難を促すことか。だとすると、兵士一人を持参したほうが説得力があるかもしれない。


 荷物が増えるば、さすがに逃げきれないか。オレリアと兵士、どちらを優先したものか……。

「オレリア、良く聞いてくれ。兵士たちはみんな重症を負っている。だけど、俺にはどうすこともできないんだ」

「それなら私がーー」

「オレリア! 俺はオレリアのことを仲間だと思っている。だから、守りたい」

「でも……」

 このやり取りに何らの意味も見いだせない。強いて言えば、オレリアの利用価値を損なわないためか。それも些末なことではあるが。

「ヒラール姫に状況を報告してから、助けに戻ろう」

「……そうですね。一刻も早く姫様に報告すればきっと大丈夫ですよね」

「あぁ」

 オレリアは優しい。故に、現状が把握できていない。何も切り捨てずに、ことを成すなんて不可能だ。



 闘技場の周りを走っていると、何度か小隊に出くわした。ただ、みな一様に昏睡状態で地面に倒れていた。

 堕天使の怪音の影響範囲はわからないが、常人が耳にしていいものではないようだ。

 正面口に続く石段のたもとから少し離れた位置でヒラール姫が陣を指揮していた。といっても、活動をできているのは月の牙の連中だけのようだ。

 一兵卒はダウンして荷物状態になっている。ヒラール姫は何を血迷っているのか、精鋭の兵士たちに荷物回収をさせている。その分、自分の守りが手薄になるというこを理解していないのか。

「姫様!」

 オレリアを下す。飼い主に駆け寄る愛犬のような様で、ヒラールに近づく。

 ヒラール姫がオレリアの安否を確認している。俺が近づこうとすると、月の牙の残党が殺気を向けてきたけど、ヒラール姫がそれを制した。


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