四十三話 太陽と月の邂逅-22
「これ以上、ヒラール様に近づいたら攻撃します」
「主体性を欠いた従僕は、どいててくれないかな」
黒髪従者がヒラール姫を庇うように立っている。
「交渉を続けようじゃないか」
「盾が来たくらいで、強気になるなんて底が知れるよ、お姫様」
女同士の戦いか。何か恐いな。
「本来なら、そちらに合わせて交渉する必要なんて一ミリもないんだけど。激アマなお兄ちゃんの意向を汲んでそちらの要求をある程度は聞いてあげるよ」
「それはありがたいことだな。私からの要求はただ一つだ。神代栄太には責任を取ってもらいたい」
「責任? もしかして、水妖を目覚めさせて軍事拠点を機能不全にしたことを言っているのかな」
「そうだ」
「本当に、お姫様はおこがましね。そもそもあの水妖は水神メルクリウスの管理下にあったものだよ。それでも所有権を主張するのかな?」
「デアが兄王様を選んだんのだ」
「その論法だと、水妖自らの意思が最優先されるてことだよね。だとすれば、今水妖はお兄ちゃんと契約している。つまり、所有権はお兄ちゃんにある」
「その通りだーー」
凛は主張は正しい。ヒラール姫だってそんなことはわかっている。その上で、国民を納得させるために俺に入隊試験を受けろと言ったんだ。凛は、一体何を考えているんだ。
「栄太」
凛とヒラール姫の応酬の隙間を縫って、聞きなれた声が耳に届いた。
「ソール」
振り向くとそこにはソールがいた。
「フェンリルはどうしたんだ?」
「フェンは目立つからな。悪目立ちしても良いことはないからな。顔を隠しているのもそのためだ」
ソールが首元に巻いた布を取り外した。
「その傷、カッコイイと思うけどな。何か激戦を潜り抜けてきましたみたいな印象を受けるし」
「だから、隠してたんだ。強いだなんて誤解されて面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。だだでさえ、入隊動機が不純なんだ」
「--私のお兄ちゃんのほうが百倍素敵だね」
「あんな凡夫と兄王様をくらべるな、愚か者」
「なになにもしかして、お姫様はブラコンなの?」
「ブラコン? 意味はわからないが侮蔑の類の言葉か」
「悲しいね、お姫様。その言葉の意味を理解できないなんて……。ブラコンは最高の褒め言葉なんだよ」
「そうか。私もお前もブラコンか」
「そうなるね。仲間だね私達」
あれ? 何か良い雰囲気じゃないか。




