三十九話 太陽と月の邂逅-18
「主様、お体の調子は如何ですか?」
物思いにふけっているとノック音に続いて、アワイが部屋に入ってきた。
アワイはガブを抱きかかえている。ガブは眠たそうだ。
「騒ぎがあったようでございますね」
「ああっ、魔剣アナラビと一戦交えた。奇跡的に勝てはしたけど」
「アナラビですか。かの魔剣は光明五剣に数えられる精霊武具でございます。運だけで下せる相手ではないと思いますが……」
「何かすごそうだな」
「常人種が振るうことを許された最高位の剣といって過言ではございません。アナラビは何処に」
「真っ二つに折れた。その後はわからない」
たしか、アナラビは博物館の所蔵品だったよな。損害賠償とか請求されたらヤバそうだ。
「それは良かった。ようやく解放されたのでございますね」
「解放?」
「アナラビのような精霊武具は、精霊術の素質がないものでも扱うことができます。精霊を召喚するわけでも使役するわけでもなく、ただ、武具に宿らせた精霊から力を引き出すのでございます。もちろん、無理やり武具に精霊を宿らせる方法は悪手ですから、通常は契約を結んだ上で武具が形成されるのでございますが……。一度、武具に宿った精霊は自ら契約を破棄するこができません。本来、一代限りの契約が、二代三代と継承されてしまうこともざらでございます。戦場なので使い手が命を落とした場合など全く縁も所縁もない者の手に渡ってしまうこともございます。このように常人種の不義に長い間晒され続けると、封じられた精霊は変質してしまうのでございますよ」
もしかしたら、アナラビも苦しんでいたのかもしれない。だから、暴走した。
「しかしながら、主様。どのようにして、アナラビの刀身を分断したのでございますか?」
「火竜丸ーー精霊器を使った。それに凛、妹がだいぶ頑張ってくれたから」
「妹様でございますか?」
「さっきまで、ここにいたんだけど。アワイは凛と会ってないのか?」
「気絶した主様とガブをここまで運んできたのは兵士でございます。兵士も、妹様のことは言っておりませんでしたが」
凛はアワイのことを知っているような口ぶりだったけど……。
「きっと、入れ違いになってしまっただけでございましょう。それより、主様は精霊器を使いこなせると判断して良いのでしょうか」
「一応は使えると思う」
火竜丸ならすぐに再現できると思う。一度膨らませた風船が、膨らませやすいのと同じだ。
「であるならば明日から始まる入隊試験も、問題ないでござますね」
「大丈夫かな」
「主様はできる男でございますから。残りの時間は休息をとって英気を養いましょう」
「了解」
アワイは用事があるらしく、部屋を出ていった。寝息を立てて丸くなっているガブの背中を撫でながら今日の出来事を思い返す。
色々なことがあった。記憶もだいぶ戻ってきた。何より、凛に会えた。やっぱり、今までどうりってわけにはいかないよな。
使命というか仕事というか。俺は姉ちゃんと凛を守るために行動しなけらばならない。できれば、アワイやガブ、ソール達とも上手くやって行きたいとは思う。
何も失いたくないと考える俺は少しばかり傲慢だろうか。




