三十七話 太陽と月の邂逅-16
「びっくりしたよ。お兄ちゃんが倒れたと思ったら、突然、兵士がやってくるんだもん」
「俺、監視されてたのかな」
「そんなのあたり前だよ。私達はこの世界にしてみたらすぐにでも吐き出したい異物だもん」
「異物か。……姉ちゃんと一緒じゃないのか?」
「ごめん。たぶん一緒に来たとは思うんだけど、記憶があやふやでさ」
「凛も記憶を失っているのか?」
だとしたら姉ちゃんも記憶を失っている可能性が高い。
「やっぱり、お兄ちゃん記憶が欠けているんだね。外見もそうだけど、雰囲気が全然違うだもん気づかなくて当然だよ」
「そうか。中一までの記憶はあるし、就職活動に明け暮れていた最近の記憶はちゃんとあるけどな」
「一番重要な記憶が抜け落ちているじゃない。異界への侵入は容易じゃないって言われてた意味がわかったよ。最強のお兄ちゃんでこの様だもん。並みの異界守じゃ転生は免れない」
「ちょっと待て、凛。最強って、俺は二桁止まりだったはずだ」
「はぁ~つ、重症だね。お兄ちゃんは第四位まで上り詰めたんだよ」
「俺がか? だって四位って……」
心がざわつく。嬉しさよりも、不安が脳裏をよぎる。一桁は人間として欠落した人外の集まりだ。四位だとしたら俺は相当狂っていたに違いない。
「懇切丁寧に説明したい所だけど、時間が惜しいからこの話はまた今度にしようよ。お兄ちゃん、この世界のことどれだけ把握している?」
「料理の味付けが薄い」
「真面目に答えて」
凛が語気を強めた。
「まず、神と言われる上位存在がいるみたいだな。それらに連なる水妖やら火竜が存在している。人間は常人種て呼ばれていて、転生者って呼ばれる超人が軋轢を生みだしている。おそらく、害魔に連れ去られた一般人が転生者なんだと思う」
「さすがはお兄ちゃん、それくらいのことは把握済みなんだね。私は、その神と呼ばれる存在が害魔を操っているんだと思うんだ。それで、転生者は神の手先。現存する神には創造する力はないみたいだから、外から手駒を集めているって感じかな」
「なるほど。で、俺達は神を叩くために送りこまれた先兵てわけか」
引退? した俺を投入したくらいだ。状況はだいぶ切迫している。
「そう考えるのが妥当だろうね。これから私達は神と戦わなくちゃならない。全く、無茶ぶりもいいところだよね」
「増援はあてにできないか。まずは姉ちゃんと合流して……凛、少しだけ時間をくれないか」
「どうして」
凛が目を細めた。