二十五話 太陽と月の邂逅-3
せっかく有意義な情報を教えてくれたわけだし、何か適当な物を購入しよう。
「なぁ、おやっさん。おススメの防具とかってある?」
「おやっさんてお前、俺はまだ40前だぞ。まあ、お前くらいのガキがいてもおかしくない歳ではあるがな」
防具はどうやら店の中にあるらしい。さっさと買い物を済ませて、博物館に向かわなければならない。
何かが俺の背中にぶつかってきた。突然のことに反応できず、ガブともども地面に倒れた。木箱が倒れて武器が散乱している。
「痛い。ガブは大丈夫か?」
背中に誰か乗っていて起き上がれない。
「ギィ~」
さすがの寝坊助さんも目が覚めたらしい。
「イテテテテ。さすがにさっきの斬撃、直撃してたら危なかったかもにゃ」
「はやくどいてくれると助かる」
「ごめん、ごめん。でも、リンはそんなに重くないと思うけど。よいっしょっと」
見上げた先にあったのは黒髪のツインテールとチェツク柄のプリーツスカート。
「そこの優男君は戦力になるのかにゃ?」
「戦力?」
「状況把握能力はゼロか。オジサンは戦える?」
「無茶を言うな。俺はしがない武器屋の店主だ。あいつはどうしちまったんだ」
全然状況が把握できない。さっさと起き上がったほうが良いみたいだ。
「あいつは何をしているんだ?」
道の真ん中で男が剣を振り回している。通行人は避難済みのようで人影は見当たらない。
道向かいの道具屋はすでに扉を閉めて防衛準備を整えている。
「もしかして、アナラビが暴走しているのか?」
「あの子は悪くない。未熟な使い手が全部悪いわけで。オジサン、武器を借りても」
「あぁっ、緊急事態だ。好きに使ってくれて構わない。しかし、君一人で戦うのか?」
「あの光剣は少し厄介だけど、何とかする」
少女がダガー二本を拾い上げた。
「これなら持ちそう。中々の目利きだねオジサン。では、参ろうか」
そう言った途端に少女は飛び出した。その動きは素人のそれではない。
熟練された動きだ。脚力を生かした突進。一対のダガーが魔剣アナラビと激突する。
目にも止まらぬ応酬が続く。
半袖のブラウスに赤いリボン……恰好が女子高生ぽいんだよな。てことは彼女も異世界転移者なのか。
そう言えば自分のことをリンって呼んでいたな。あれ、凛ってたしか……。
俺こと神代栄太には、九歳違いの妹がいる。名前は神代凛。寄宿制の高校に通っている。それ以外の情報は思いだせない。
でも、俺の妹があんな鬼強い美少女なわけないよな。