二十二話 入隊試験-14
「で、具体的にその精鋭部隊とやらに何人くらい入隊できるんだ?」
「前回、前々回と一人だけだったようでございます」
「一人? 難関過ぎるだろ。コネで元から決まっているってオチじゃないよな」
「試験で首位の成績を収めた者が入隊しているようでございますね」
「俺が首位を取れる可能性はどれくらいだと思う?」
「……不正を働かない限り無理でございましょうね。戦闘力が問われるのであればいかにようにも手は打てますが、筆記試験や高官による面接などもありますので……」
今から不眠不休で挑んでも難しいだろうな。そもそも俺に異世界語の読み書きができるかどうかも怪しい。軍のお偉方への印象も最悪だろうしな。
「俺の人生、ここで詰んだな。来世にこうご期待か」
「諦めるのが早いでございますよ、主様。首位を獲得する以外にも入隊の方法はございます」
「ほう。聞くだけ聞こうじゃないか。どうせ、無理難題なんだろう。期待を持たせておいてどうせ裏切られるんだ」
今まで最終面接まで駒を進めたことは数えることしかないが、どうせ落とすならもっと早い段階で落としてほしい。期待していた分、落胆も大きくて、立ち直るに時間がかかる。
ヤバい。完全に卑屈モードに突入してしまっている。
「それでは読みあげます」
アワイが何処からともなく紙を取り出した。
・入隊試験において最上位の成績を収めたもの。
・現役精鋭部隊員を打ち負かしたもの。
・神の加護をその身に宿すもの。
・神具に選ばれしもの。
・精霊術及び使役術を極め、転生者に劣らぬ力を保有するもの。
・インシジャーム砂漠に出没する影竜の討伐を成し遂げたもの。
・幻の都シャムスを発見したもの。
・地下宮殿の謎を解いたもの。
「時間短縮のため抜粋いたしました。まだまだ、条件は羅列されておりますが、大きくわけて二系統の条件があるということにございますね。バリークに有益になる偉業を成し遂げるか、単純に力を示すかの二択にございます」
「偉業ってことは一朝一夕にはどうこうできないんだろう?」
「短時間で成し遂げるのは難しいかと。ヒラール姫は主様に入隊試験を受けるように進言しているわけですから、やはり分かりやすく力を誇示することが最良の道でございましょう」
「となると、一番可能性があるのは、強い兵士を打ち負かすことか?」
「そうでございますね。ただ、並みの精鋭部隊員を打ち滅ぼしたのでは、国民は納得しないでございましょうね。理想は部隊最強の兵士を滅殺して、その地位を奪うことにございます」
「何んだか物騒な物言いだけど、要は公衆の面前で勝てばいいんだろう。試験中にその機会はあるって考えていいのか?」
「試験内容に、現役兵士との模擬戦があるようでございます。相手は入隊希望者が選択できるようでございます」
全く勝てる気がしないけど、当たって砕けてみるしかあるまい。
「お~い、寝坊助。そろそろ起きろ。寝るなら俺の背中で眠ると良い」
「主様?」
「少し、外の空気をすってくる。本番までにガブとの絆を深めておきたいからな」
「そうでございますか。では、ごゆっくり」
「留守を頼む」
客間を脱出してトボトボと通路を進む。
さっきから震えが止まらない。心臓がバクバクと脈打っている。きっとこれが武者震いってやつだろう。