百三十二話 末神の憂鬱-1
「デス、デス、デスです。死ぬデスよ」
我ながら何を考えているのですかね、私は。
ブツに直に触れるわけではないのですから、なんてことはないのです。
ほら、上を向いて、デスをキャッチです。
「きゃあああああっ――」
「どけ」
労りの欠片もない、全力の体当たり。痛い気な女児をなんだと思っているんですかね。
パタ、パタ。砂汚れをはたく。平常心、平常心。ここは威厳のある言葉で場を和ませつつ、何事もなかったように振舞うのが得策ですね!
「コワかったデス。今の気分はデス、デスです」
「一つ、意味不明だ。二つ、俺の服を汚すな」
「少しくらい、胸を貸してくれても神罰は下らないですよ」
金髪のツンツン頭は、全然、優しくないです。そんなんだからモテないんですよ。
「何か言いやがったか、チビッ子」
「うぐぐっ」
慌てて口を元を抑えるです。
「――それよりこれは一体何なんだ? あの野郎がよこしたってことは、そこそこに使える代物なんだろう」
「おやおや、ツンツン頭さんじゃなかったエナトスさんは、あの御仁のことを嫌っていたような――」
「それとこれとは、話が別だろうが。一つ、全員で生き残る。二つ、無傷でバリークに帰る。それだけだ」
「それは無理難題でしょうが、ルピカも賛成なのですよ」
と、言ってみたものの状況は逼迫しているのです。負傷した方々には満遍なく治癒を施しましたけれど、それはあくまでも応急処置なのです。
「時間が惜しい。さっさと、使い潰させてもらうおうぜ――」
ドスンと音がして、私はまた地面を転がります。
「……一つ、痛ぇ――。二つ、次やりやがったら殴るからな」
「ひえぇ――つ。ついに本性を見せやがりましたね非モテさんじゃなかった、エナトスさん――」
寒くてブルブルするのです。別に、噂に聞く、ツンデレに該当しそうなエナトスさんに慄いているわけではないです。
エナトスさんが放り投げた革袋から、例のブツが転がり出てしまったのです。さて、どんな悲劇がおこるのやら、喜劇なら大歓迎なんですが……
「すげぇな」
恐る恐る目を開くのです! 別に怖くなんかないんだからねっ、フフッ、エナトスさんのツンデレ姿、気持ちわるいです。
はあっ!? 現実逃避は良くないのです。いざ、オウプン、ザ、ゴッドアイズ。
チラッ。
「何なのです、これ――」
サラサラの砂に、青い空。異様な光景なのです。ブツがころがり落ちた場所を起点にした小規模な範囲が、正常な状態に戻っているのです。
「すげぇな」
お頭の弱いエナトスさんのボキャブラリーは、お猿さんなみのようです。
「聞こえてんぞ」
「うぐぐっ」
エナトスさん、青筋が立ってますよ! 全く口は災いの元なのです。




