百四話 作戦会議-7
「神の眷属は、常人種を疎ましく思っているのでございますよ。大樹が枝葉を広げるように、勢力を拡大していく。外部の力を取り込み、分岐していく種族。獣人、鬼人、竜人、翼人。少数種族や亜種を加えれば、相当な数に上るのですよ。人はそれを神化などと表現しているようでございますが。中には、私達を凌ぐ力を保有している個体もいるのでございます。故に、簒奪者、盗賊などと一部の下位眷属は侮蔑をこめて言うのでございます」
世界の形。人の進化?を許容する世界。その先にまっているのは、荒廃か繁栄か。俺にはわからない。様々な種族が共生する坩堝。その分だけ思想や願いがある。 そんな世界で新な生を受ける転生者。その存在理由は……。
「派生した種族は、物理的に神の眷属をも屠る力を持つ。だから、常人種は最弱ではないって解釈であっているか?」
「さすがは、主様でございます。ミスリードにわざと引っかかったのでございますね」
「……そうだとも」
「主様も疑問に感じていることと思いますが、どうして私がシュルーク様に力を貸したのか、お分かりでございますか?」
「さっき言っていたじゃないか。シュルーク王子の人柄に惹かれたって……」
どうしてか歯切れが悪くなる。
「そうでございますね。俗な言い方をすればそうなるのかもしませんね。しかし、私が興味を持ってーー今では尊き誉ごとだと思っているのはシュルーク様だけが持っているものではございませんよ。その力を、ヒラール姫からも、そして、今の主様からも感じるのでございます。言葉で言い表すと陳腐に聞こえてしまうかもしれませんがーー」
『運命に抗い、立ち向かう力』
アワイはそう言った。その言葉から様々なことを連想してしまう。
「アワイから見れば俺……常人種はそんな力を持っているように見えるのか?」
昔の俺にはなくて、今の俺にあると信じたい力。欲張りな俺は、運命を変える力を欲しているわけだけれど……。
「血統というわけではなく、個人の資質に拠るところが大きいように感じているのでございます。ただ、派生した種族とくに己を上位存在などと宣う種族の中にそのような強者を見初めたことはございませんが」
アワイの口ぶりからして、常人種の評価がずば抜けて高いように感じる。客観的に見れば、一番能力値が低いのは常人種だと思うけどな。人口の比率はわからないから、総合力がどうかわからないけれど。




