用語解説
作中に登場する専門用語やら地名やらの解説。
きみは読んでもいいし、読まなくてもいい(世界樹並感)。
葦原中国
地上世界。国産みの神たるイザナギとイザナミによって作られた、我々人間の住む世界である。要するに日本列島だ。
葦原中国で生まれた神や、高天原から天下ってきた神のことを国津神と呼ぶ。
なお古事記が成立した頃の大人の事情により、東北や北海道、沖縄などは含まれていない。知らないんだからしゃーない。
誓約
日本神話においてたびたび登場する、選択に迷った時に行う神頼みのこと。行う前に、二者択一の条件を提示するのが一般的なやり方である。
本作では棒倒しや花びら摘みといった簡単な事例を紹介しているが、日本神話の誓約はどういう訳か、下手をすれば命に関わるような場面でばかり使用されていてとても怖い(笑)。
穢れ
日本の神道における考え方のひとつ。正確に言うと「あるものが理想的ではない状態」とされ、死は穢れであり、穢れがついている人やモノは、災いを引き寄せるとされる。
という訳で薄汚れているとか、不潔な状態をイメージしがちだが、精神的に参っちゃってるような時も「理想的ではない」のだから穢れ(気枯れ)状態である。
穢れを祓うために身体を清める禊をしたり、宴や祭を催す習慣が我が国にはある。日本人が風呂好きなのもこの影響なのかな?
別天神
天地開闢の折、国土がまだ不安定だった頃に現れては消えていった、伝説の五柱の尊き神々の総称。
本作ではアマテラスら天津神が崇める、神々の神といった立ち位置である。ちとややこしい気もするが(笑)。
実際のところは世界各地に共通して見られる星々の神であり、彼らは名前だけを残して具体的な信仰がアッサリ消えてしまう傾向にある。
まあ、お星様ってキレイだけど手が届かないし。生きてくためにはもっと身近な神様に頼らないとだし。仕方ないね!(笑)
魂魄
古代中国における霊の考え方。
天からの陽の気を司るは魂。精神の源であり、死しては天に昇るという。
地からの陰の気を司るは魄。肉体の源であり、死しては地に帰るという。
太極図(白黒の勾玉が重なり合ったような例のあのマーク)は魂魄を表現しており、天から下る魂と地から上る魄が、人の身体に宿る様を描いている。
高天原
天上世界。太陽神アマテラスが統べる高く尊い都であり、ここに住む神々は天津神と呼ばれる。
本作では具体的な位置はぼかしているが、宮崎県は高千穂町に近い場所じゃないかなぁ? 一説によれば阿蘇カルデラなんて話もある。
最高神であるアマテラスですら農作業をしている辺り、ちゃんと地面のある高台ではあるようだ。
常世国
海の向こうにあるとされる、不老不死の国。浦島太郎が辿り着いた「竜宮城」もここの事らしい。
実はこの国からやってきた神というのが意外といて、知識の神オモイカネも常世出身という記述があるし、オオクニヌシの国造りを助けたスクナビコナ(註:一寸法師のモデルともされる、酒造ほか諸々を司る神)なんかも常世国からやってきた神だ。
この手の海の果てにある理想郷伝説は世界各地に存在する。有名どころではアーサー王伝説のアヴァロンや、北欧神話のヴァルハラ、ギリシャ神話のエリュシオンなんかがそう。
つまり、なろう系小説でやたら異世界に飛ばされてチート無双する話が多いのは……人間誰しも現実がイヤになって逃避したくなるって事だね!(笑)
~柱
神々を数える時に使う言葉。人間を「一人」「二人」と数えるのに対し、神々は「一柱」「二柱」と数える。
古来より神々は自然物に宿ると信じられ、大木には神が宿るとされる。その大木を使って作り上げた柱は「神が降りてくるための通り道」としての役割を果たしていた。
日本神話においてもたびたび重要な役割を担う柱が登場しており、神と柱は密接な関係にある。そのため神は「柱」で数えるのだ。
家の中心にある柱の事を「大黒柱」と呼ぶのは、大黒柱にその家の氏神が宿ると信じられているからである。
女陰
女性器の外陰部を意味する古語。古事記においてはたびたび登場する。
現代でも「火照る」「ほとばしる」等、女陰を語源とする言葉が存在している。
古代は世界各地で性表現に関する規制は緩い、というか……結構な割合で神聖視されていた。
実際のところ、男女が交わって子供が産まれるというのは「子宝に恵まれる」という表現があるように、神の御業として珍重されていたのである。
余談だが日本各地にも男根の形をした御神体を(時には女陰もセットで)祀っている神社が多数存在するが、決してスケベ目的ではなく五穀豊穣や子宝を願っての事である。詳細はググって下さい(笑)。
禍神
人々に災いをもたらす穢れた邪神・悪神たちの総称。
有名どころではイザナギが禊を行った際に最初に生まれた八十禍津日・大禍津日の二柱が代表的な禍神である。
古代の神々はもともと、自然の恵みや災害を理由づけするために生まれた存在であり、利益だけでなく災いをもたらす二面性があった。しかし禍神はきちんと祀る事で鎮める事ができ、災いを避ける事が可能であるとも信じられていた。
黄泉の国
死後の世界であり、死者はこの国に送られる。出雲国の地下に登場する事から、地下世界のイメージが強い。
この当時の葬儀は殯と呼ばれるやり方が主流であり、死体は棺や山の穴などに封じ、白骨化するまで経過を観察してから埋葬していた。
その過程で死体は当然腐っていくし臭いし穢らわしいって事で、黄泉の国のイメージがグロいのは間違いなくコレのせいだろう。
余談になるが、日本において最初に火葬が行われたのは8世紀初頭であるとされ、歴代天皇としては持統天皇が初めて火葬された。
ヨモツヘグリ/黄泉戸契
ヨモツヘグイとも呼ばれる、黄泉の国の食べ物の総称。
食した者は黄泉の住民となってしまう。イザナミはこれを食べていたため、イザナギの出迎えが間に合わなかったとされている。
詳細は不明だが、黄泉の国のかまどで煮炊きして作られているそうな。一応ちゃんと調理してんのね(笑)。
夜之食国
ツクヨミの治める夜の世界。「食す」とは「支配する」の意。
実際のところ、この国がどのような国なのかを明確に記している文献は存在しない……っていうか古事記に名前しか出てこない(笑)。黄泉の国と同一視する意見もあるようだ。
本作においては黄泉の国が「死」ならば、夜之食国は「眠り」をイメージして描いている。
ギリシャ神話風に例えるならツクヨミが眠りの神ヒュプノス、後に根の国の主となるスサノオが死の神タナトスといった所だろうか。ちょうど兄弟だし(笑)。




