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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

百物語の先

作者: タマ3

初投稿です。稚拙な部分は生暖かい目で見て頂ければ幸いです。感想等コメント頂けると嬉しいです!

 「_____で、その後彼を見た者はいないそうだ」


 叔父さんは、話を終えると彼の前にある蝋燭の火を吹き消した。



 私達は今、田舎のお祖母ちゃんの家にいる。

お盆になると親戚が集まり、夜な夜な怪談話をするのが恒例行事になっている。小さい頃は怖かったが、慣れたもので最近は少しゾクっとする位で済む。



 皆は百物語と言っているが、実際は10人が1つずつ話をして終わる。居間の丸テーブルを皆で囲み、語り手の手前に1本ずつ置き、話が終わると手前の蝋燭の火を消していく。10本目の火が消えたらお開きの合図。



 私の膝を枕に従兄弟の圭太が寝息を立てている。時計を見ると午前3時。先刻まで頑張って起きていたが、力尽きて眠ってしまった。


 「オバケが来ても僕がお姉ちゃんを守るからね!」


なんて言って勇んでいた今年7歳になる私の騎士の頭を撫でながら、10年前の私を思い出す。


 怖がりだった私はお祖母ちゃんにしがみつきながら話を聞いてたっけ。お祖母ちゃんは私の頭を優しく撫でてくれて、私は圭太の様に安心して眠ってた。


 全ての蝋燭の火が消えた為、辺りは真っ暗になっている。街灯もあまり無く、周囲は畑が多いので完全な暗闇。


 私はこの瞬間が一番苦手だ。何か嫌な物が近付いてくるような気配がして、気持ち悪くなる。


 お父さんが明かりをつけ、皆で寝る支度を始める姿を見て安心する。大丈夫、別に何も起きてなんかいないんだ。



 圭太を抱いて寝室に連れていく。

 布団をかけ、そっと離れようとすると、手をグッと掴まれた。驚いて振り向くと圭太が泣きべそをかいていた。


 「お姉ちゃん、僕、今すごく怖い夢見てたみたい」


 寝惚けながらそう言う彼に大丈夫よ、と言いながら私は圭太の横で寝そべる。


 「大丈夫。今日はお姉ちゃんが横にいるから怖くないよ」


 そう言うと圭太は安心した様に見えた。さっき見たという夢の話をし始めた。


 「あのね、家に怖い人が来てお父さん達が_______ 」


その時、台所の方から何かが落ちる様な音が聞こえてきた。


 お父さん達の声が居間から聞こえてきた。まだ叔父さんと居間でお酒を飲んでいたらしく、襖の隙間から光が漏れている。


 「念の為台所を見に行ってくる」


 お父さんと叔父さんはそう言うと台所の方に行った。

 私に身を寄せながら圭太が震えている。怖い夢を見たせいだろうか。 私は圭太に大丈夫、と言いながら抱きしめた。 


 さっき暗闇の中で感じた嫌な物の気配がまた私を襲っている。もしかしたら、圭太では無くて私が震えているのかもしれない。



 その時台所の方からお父さんと叔父さんの怒鳴り声が聞こえてきた。

続いて争う様な音。


 

 お父さん達の怒声が聞こえてきた時、激しい頭痛が私を襲った。まるで何かで頭を割られるような激しい痛みだった。



 痛みが治まってきた頃、お母さんや叔母さんが警察に連絡を、様子を見に行ったほうが、と話している声が聞こえてくる。

 どうしよう、私は圭太と抱き合いながら震えていた。そこへお祖母ちゃんが来て私に御守りを渡しながら、


 「なんかあっといけないから、圭太と押入れに隠れてじっとしてなせ。御守りが2人の事守ってくれっから」


 といつもの優しい笑顔で言いながら、私に御守りを渡してくれた。その笑顔を見て私は少し安心した。そして、お祖母ちゃんも一緒に隠れようと私が言うと、


 「私は2人を守らんと」


 と言い、お母さん達の方へ向かった。それを聞いて私は決心した。

 圭太を守ると。



 怯える圭太に御守りを渡し、お祖母ちゃんにしてもらった様に精一杯の笑顔を作った。少し強張っていたかもしれないけど。


 「圭ちゃんは念の為、上の戸袋に隠れててね。何があっても絶対に声を出しちゃダメ。お姉ちゃんは下の押入れにいるから、大丈夫だから」


 泣き出しそうな圭太をぎゅっと抱きしめ、戸袋に圭太を押し上げた。 圭太は御守りをぎゅっと握り締め、私にこくんと頷いて戸袋に隠れた。

 私は圭太が隠れた事を確認し、押入れに隠れた。

 


 直後、お母さん達の悲鳴、争う音、そしてお祖母ちゃんの悲鳴。

 一瞬の静けさの後、ミシ、ミシと押入れへ向かう足音が聞こえてきた。 



 私はこの場面を知っている。



 ゆっくりと襖が開けられる。私は戸袋に注意がいかない様に大声を上げながら、その嫌な物に飛びかかり、そして殺された。 

 


 私はここで殺されたんだ。



 ゆっくりと襖が開けられる。そこには、20代の男性が立っていた。開けられた押入れに花束を添え、手を合わせる。押入れの中は何も無く、埃が溜まり、隅には蜘蛛の巣が張っていた。



 彼は以前寝室だった場所、居間だった場所、台所だった場所にも花束を添え、手を合わせる。幼い頃、家族と一緒に過ごした最後の場所。


 圭太はポケットから色褪せた御守りを握り締め、誰に言うでもなく呟いた。


「必ず犯人を捕まえるから」

 

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