夏休み
「助けて欲しいんだ」
7月下旬。
よく晴れた夏休みのある日。
7月18日の終業式以来、一度も顔を見合わせていなかったクラスメイトの小早川から開口一番に告げられたのは、他の級友たちから聞いていた小早川に関する噂とは真反対な、SOSのメッセージだった。
「助けるって何を?」
冷房が壊れているのか、やけに温度の高い喫茶店の窓際で、僕は額の汗を拭いながらそう質問した。そしてその後すぐ、野暮なこと訊いたなと自分の馬鹿さ加減に呆れた。
一体この二週間の間に何があったのだろうと、僕は夏休みが始まる前の健康そうな外見をしていた小早川と、今目の前にいる細くやせ衰えた小早川の姿を交互に比べながらあれこれ考えを巡らせてみたが、どれも真実とはかけ離れていそうだったのでやめた。
二週間でダイエットに成功したのだろうか?それにしてはずいぶん浮かない顔をしている。
それに、僕が聞いていた小早川の噂を信じるのならば、小早川は夏休みが始まった後に太ることはあっても痩せることはないように思えたから。
「あのさ」
小早川は充血した眼差しで、僕をじっと見つめながら言葉を発した。
「呪いってさ、あると思うか?」