太陽を待つ(旧題:あなたとともに)
まだ暗い中、目が覚めた。
もしかしたらこれも夢かもしれないけど。
窓の外には水平線が見える。
白々とした空の向こうに。
海は少し遠くて、昼間は波の音があまり聞こえない。
けど、こんなに静かな、まだ日の登らない朝は耳鳴りのような、幽かな音が聞こえる。
まだ日が登っていないから、実際は空と海との境は曖昧でよく見えない。
でもあそこに水平線がある、というのはよく知っているのだ。
だから、あえて『水平線が見える』っていう。
あの向こうに、海の彼方に、ここからは見えないどこかに貴方はいるのだ。
「僕の心の一部を貴女に預ける。だから、貴女の心の一部も預からせて」
貴方はそう言って、わたしの心一部は持っていったんだろう。
だから、わたしは水平線の向こうが気になるんだ。
「……」
寂しい。
口を開いても言葉が出てこない。
いや、違う。出したくない。
出した途端にもっと、もっと気持ちがあふれるに違いないのだから。
あの水平線の下に太陽はある。
まだ太陽は登っていないから遍くすべてが暗いけど、たとえこの後完全に登ったとしてもわたしの心には陽はさしてこないんだ。
貴方がいなければ、明るさが足りなくなる。
心にまで射し込む陽が近くにないから。貴方がわたしの太陽なのに。
「貴女は僕の月だよ」
そう言って貴方は微笑んでもくれた。
確かにわたしは月なんだろう。
太陽がいなければ光らない。
太陽がいなければ。
「迎えに来るよ」
貴方はそう言って旅立った。
「次は貴女と一緒に行くからね」
今までに見たことも訪れたこともない場所に貴方は私を連れていってくれるんだろう。
「だから、待っていて」
目を瞑れば、瞼の裏に輝く笑顔が見える。
うん、待つよ。
だから、早く……。
暗い中、窓の外を見る。
水平線を見る。
わたしは、太陽を、貴方を待っている。
とある曲のオマージュ作品。
ちゃんと二人で旅立つ曲ですが、遠距離にして待つ方視点だと辛い部分もあるよねー、と思いつつ。
キーワード、難しい……。