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海鳴り

作者: かにゃんまみ。

NLです。軽いホラー。少しで良いので評価いただけたら幸いです。

深夜車を飛ばして僕は海へ向かった。


君との思い出深い場所だ。


その海の断崖絶壁に降り立ち、真っ黒な波立つ海を眺めていたら、君の笑顔が思い浮かんだ。


僕もその笑顔に微笑み返す。


けれど僕はもうどこへも行く所がない。



誰よりも愛している、誰よりも想っている。


僕がいつだって君をわかってた。


わからなかったのは君のほうだ。


この白い手を黒い海空にかざした。


僕の手は月明かりに照らされてとても綺麗だった。


それ以上君の歪んだ顔を見ていられなかった。


君の細くて白い首筋に愛しさに狂った手を伸ばした


僕のこの清らかな手が……。


でもこれで君は永劫に僕の物になった。


僕の傾慕は極上で君になくてはならないものだ。


そうだろう。


それなのに、拒絶、惑乱、錯乱、愛憎、歪愛。


どうかしてたって君は目を見開いて笑ってくれたね。


気づいてくれたんだ。



その時、海から君が呼びかけてきた。


笑顔で手招きをしてくれた。


こちらにきて……。


私のところへ……。


あなたの場所はこちらにあるわ……。


僕は君の笑顔に捕らわれた。


目を見開いた君の瞳が三日月みたいに可愛く歪む。


いいのかい?

僕がそこへ行っても、だって僕は。


僕が聞こえた声は本当に彼女の声だったのだろうか。


ああ、間違いない。君の声だ。


怒っているような、笑っているような、泣いているような。微笑んでいるような、悲鳴をあげているような、それらの声がすべて合わさってまるで狂奏曲のようなけたたましさで僕を呼んでいる。


僕は嬉しくなってあはははと笑いながら無我夢中で走った。

そしてすぐに足元をすくわれ、崖の上から冷たく真っ黒な海中に転落して行った。


その時初めて気がついた。その先は何もあるはずがない。


彼女の笑顔などあるはずがないのに。


けれど僕は確かに彼女と同じ場所に行けたのだ。


光も音も感触も全てが途切れた無の世界に。

評価していただけたら幸いです。

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