おおきなかおと少女
森のふかいふかい奥で少女は出会いました。誰もこないようなさみしい暗い森です。
そこには家のようなおおきなかおがあり、そのまわりを太い髪の毛のようなものがうねうねと波打っています。かおの半分はくずれたようになっていて、ぬめっとした目がこちらをじっと見ています。
「どうしてにげないのだ」
「なんでにげる必要があるか」
「わたしが怖くはないのかい」
「どうして怖いものか」
「わたしはおまえをとって食らうこともできるのだよ」
「わたしの父も狐を殺します。鹿を打ち、皮をはぎわたしたちは肉をくらいます。何の違いがありましょう」
おおきなかおと少女は友達になりました。
少女はおおきなかおのところへ通い、本を読みきかせ、話をよく聞きました。おおきなかおは山や村のことをよくよく知っており、話し方も上手でしたので少女はとても楽しく過ごしました。
そのうち少女の両親が、少女にききました。
「いつも森へいっているようだけれど、いったいどこでなにをしているのだい?」
「森のふかいふかい奥で、おおきなおかおとお話をしているの」
少女の両親の顔がふいに曇りました。父親はとても怒ったような顔をしています。母親は、とても怖がっているようでした。
「それはじぶるいのかみさまだよ。森の木をおり、がけをくずし、家を壊して、たくさんの人を殺す。恐ろしいかみさまだよ」
父親はすぐに村の男たちに声をかけ、手にたくさんの武器を持ってでかけていってしまいました。みんなたいそう恐ろしい顔をしていました。
父親たちが持つたいまつの灯りを目印に、少女も後をおいました。父親たちはいそぎ足でどんどんさきに行きます。
そのうちものすごい音がしてぎーっという何とも奇妙なうなりが聞こえてきました。それは悲しそうな、苦しそうな声のようにきこえました。
ようやく少女が父親たちにおいつくと、おおきなかおがぐちゃぐちゃになって転がっておりました。まわりにはいやなにおいがたちこめていて、少女は思わず小さな鼻をつまみました。
おおきなかおはじっと少女を見つめていました。
少女は父のかげからでて言いました。
「あなたの皮ははいで着物にするの。あなたの肉は食らい、精をつけましょう」
こうしておおきなかおは皮をはがれ、肉を食らわれました。その皮の着物を着たものはたちまち美しくなり、肉を食らったものはとてもとても長生きをしました。
さて、それからしばらくして、おおきなかおをしとめた少女の父親が村からいなくなってしまいました。誰も姿を見ていません。一ヶ月、また一ヶ月とたっても、帰ってくることはありませんでした。
それからだいぶ月日の過ぎたある日、小さな娘が一人、ずっと大きくなった少女のそでをひきました。
「かあ様、ふかいふかい森の奥でとてもおおきなおかおをみたよ。絵でみたおじいさまのおかおにそっくりだったよ」
ずっと大きくなった少女は、すぐに村の男たちに武器をとらせ、森の奥へいかせました。
「今日はごちそうだよ。きれいなおべべも着られるよ」
大きくなった少女はとてもとてもうれしそうなかおをしました。




