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ラディカルグッドおっぱいセンチメンタル!

作者: 7GO

故あって頭がおかしい時に書いた作品。色んな意味で病院が必要だった。アルカディアさんにも載せてあります。かなり前にね。

何故今更なろうに転載するのかと言うと、当時は代理投稿をお願いしていたのと、病んでいた時代を忘れない為。戒めですね。

 世界は廻るよ何処までも。

 ところで回るとか書くより廻るって書いた方がカッコいいよね。特に意味はないんだけど。


 空は青くて風は順風。

 今日もいい天気で、ならば明日もきっと快晴だ。

 なべて世はこともなし。日常に終わりはない。

 世界の何処かに多分ある、私立ダブルセカンドマークツーカスタム高校、通称カス校では、また何時もの様に一日の授業を終えようとしていた。


「先性はな、女子高性のパンツが見たくて性職者になったんだが……昨日、50歳の誕生日を迎えて気付いたんだ。あ、これバレたらヤバいって。だからこれからはもう少し慎重にパンツを模索して行こうと思う」


 と、教員が締めると同時に、授業終了を告げる軽やかな電子音が鳴る。

 机に向かっていた生徒たちは教科書を閉まったり、体を伸ばしたりとそれぞれの方法で、一日の終わりを体現していた。


「面倒だからこのままHRするか。よーし、紀野は先性のところにパンツを持って来なさい。あと田中は魔王に支配されたキンダーネルフ城に行くように。以上」

「えーまたですかー」

「それも学級委員の仕事だ。暗黒の時代を終わらせて来い」

「へーい。ったく、今月でもう19回目だぜ……」

「はい、じゃあ解散。気を付けろよ」


 面倒事が嫌いなのは、なにも生徒だけではない。

 教員だって、避けられる些事は避けたいもの。

 簡潔に終わったHRは、だけどこのクラスでは何時もの事だ。無駄なことは語らない。必要のないことは語らない。

 別に日々の生活や生徒を軽んじている訳ではない。このクラスの担任は、ただ効率主義なだけなのだ。


 学校生活と言う、年若いころは正しく監獄に思えるような、されど尊い時間を終えた生徒達は、それぞれ立ち上がったり、おもむろに服を脱ぎ始めたり、仲の良い友人と会話したり、思いのまま行動をし始める。

 それをゆっくりと見渡した教員は、先ほど受け取ったパンツを頭に被り、自らの巣である教員室に向かおうとした。

 と、そこで。


「あ、先生、バイトしたいんすけど。申請書に判子お願いしゃーす」


 金色に染色された、長髪の男子生徒が、その金髪を軽く揺らし、教員に近づく。

 生徒が片手に持ったA4の紙を見て、教員はその生徒と向き合った。

 カス校は進学校だ。加え、私立でもある。よって、それなりの校則は、きちんとある。

 だけれども、何もかも禁止されていたり、例えばアルバイトは絶対禁止、と言う程厳しくはない。

 この男子生徒の様に、きちんと担任からアルバイト申請書に印鑑を貰えれば、許可は降りるのである。


「む、何の仕事だ?」

「鞄に入ったイヤホンのコードをいつの間にか滅茶苦茶に絡ませるバイトっす」

「ああ、あれか。結構自給良いらしいな。ん? 剣菱、前のバイトはどうした」

「テレビのリモコンを隠すバイトっすか? あれはちょっと時間が厳しくなったんで辞めました」




 とまぁ、何時もの様に平和で、緩く、何一つ特筆すべきことがない、何時もの通りの日常。

 何の変哲もない、廻る世界の一ページ。

 されどしかし。

 日常に終わりはない。

 だけどまた、その日常の中に、極めてゆっくりと、微小に、なれど確実に。

 世界に牙が向いていた。


 これは、その牙をふんふんしてふがふがする、ほにゃららな、お話。








 ラディカルグッドおっぱいセンチメンタル








 肩口まである茶髪に、眼鏡を掛けた一人の生徒が、とある女子生徒を凝視している。

 一通り見た後、一つ嘆息し、対面に座る男子生徒を見据える。


「……気づいたか、エロ太郎」


 言われた男子生徒は、こくん、と一つ頷き、茶髪眼鏡の生徒に負けず劣らず、殊更に真剣な表情を浮かべた。



「ああ、一之宮のおっぱいが……」

「またデカくなっている」


 エロ太郎と呼ばれた男子生徒の二の句を継ぐように、茶髪眼鏡が言う。

 二人は同時に、件の女子生徒、一之宮を見る。


「むふー!」


 彼女はドヤ顔で胸を張り上げており、そして改めてそれを確認した二人は、顔を見合わせた。



「おかしいぞ、これは。毎日少しずつ大きくなっている……」

「ああ、具体的な数字は俺たちには分からないが……妹尾!」


 エロ太郎が、仲睦まじく会話している。一つの女子生徒たちの集団に声を掛ける。

 呼ばれた女子生徒は、エロ太郎の方を振り返った。

 間延びした声で、エロ太郎に問う。


「なーにー? どうしたのー」

「一之宮のおっぱい、昨日に比べてどれだけ大きくなっている?」

「ん、んー……」


 女子生徒、妹尾は、言われるままに一之宮のおっぱいを見た。

 僅かに逡巡し、エロ太郎に向き合う。


「0.000000072ミリメートルくらい、かなー」

「そうか……バストサイズがどれくらいになったかは、分かるか?」

「んーと、AA-ってとこだねー」

「くそっ、なんてこった……! ……ありがとう妹尾、参考になった」

「はいよー……んでねー、昨日お母さんがねーとうとう第二神性魔法に成功してさー、チョーウケルー」

「えー、チョーウケルんですけどー」

「愉快愉快」


 普通のガールズトークを再開した彼女たちを尻目に、二人の生徒は改めて顔を付き合わせた。

 そしてそのまま二人の距離はゼロになる。

 重なり合う唇と唇。エロ太郎、ファーストキスはモツ鍋の味がした。


「ぷはっ」


 名残惜し気に離れる互いの唇、その未練を象徴するように、唾液の糸がキラリと輝いた。



「これは由々しき事態だぞ、エロ太郎」

「不味いな……一昨日は0.000000080ミリメートルの肥大、その前は0.000000075ミリメートル……このまま一之宮のおっぱいを放置すれば……」

「……地球の容積は16228億×10の6乗トン。このまま一之宮のおっぱいの肥大化が止まらなければ、大凡6クインチリオン年後には、地球は一之宮のおっぱいで埋まってしまう……つまり」

「地球、滅亡の危機……!」


 クインチリオンとは10の18乗。

 そう、一之宮のおっぱい肥大化を阻止しなければ、6000000000000000000年後には地球が滅びてしまうのだ。地球がおっぱいで埋もれてしまうのだ。

 あまりにも残酷な事実を知ってしまった二人は、頭を抱える。 



「くっ……! 一体どうすればいいんだ……!」

「力づくで止めるしか、方法は……だがっ!」

「……ああ、あいつは堰天六十四鬼人より強い霊峰二十八准より強い雁豪十二臣より強いスーパー四天王より強いウルトラダイナミック三本指とはまったく関係ないただの女子高生だからな……」

「ちっ、まったく勝てる気がしないぜ……!」

 

 世界を滅ぼせる力を持つと言う『堰天六十四鬼人』

 それよりも強い、裏から世界を牛耳る『霊峰二十八准』

 更にそれよりも強い、世界の全てを知る『雁豪十二臣』

 更にそれよりも強い、全員血液型がAB型のRh-と言う『スーパー四天王』

 更にそれよりも強い、寝ている時によく階段から落ちる夢を見てガクンッとなる『ウルトラダイナミック三本指』

 とはまったく関係ないただの女子高生、それが一之宮なのだ。彼らが畏怖の念を覚えるのも、仕方がないと言えよう。


 体を僅かに震わせて、茶髪眼鏡が頷く。


「ああ。女子高生はこの世で一番、下らないことで笑える生き物だからな……」

「『エロ太郎君って、江口エロ太郎って名前なんでしょーチョーウケルー』とか言われたら、俺は……死ぬ……!」

「くそっ……どうすることも出来ないのか……!」


 敵はあまりにも強大で。

 二人はそれに対して、あまりにも無力だった。

 どうしようもないことは、どうしようもない。

 人にはそれぞれの臨界点、境界線がある。定められた、線がある。

 そこを飛び越えることは、どうしようとも出来ないのだ。

 それが、廻る世界の規律。

 決して曲げられない、無残な運命。



 しかしそれは、二人だけでは、の話。



「諦めないで!」



 一人の女性徒が高らかに声を上げる。

 その女性徒は、とにかく肌が美しかった。

 おそらく、いい化粧品を使っているのだろう。実際の効果には個人差があるかもしれないが。



「君は……!」

「マヤ文明の末裔のミキさん!」



 二人が驚き、とにかく肌が美しい女性を呼ぶと、また別の男子生徒がテニスラケットをぶんぶん振り廻して近づいて来た。



「どうしてそこで諦めるんだ!」

「大分県大分市松岡出身のテニスが上手いシュウ君!」



 また、生徒のみならず、恰幅の良い白髪の男性も寄って来る。



「諦めたら、そこで地球終了だよ」

「1年SLAM組担任、ぽっちゃり系あん何とか先生!」


 そう、彼らは、一人じゃない。あるいは二人でもない。

 このクラス、この学校、もしくはこの世界で、彼らは孤独ではないのだ。

 

「諦めないで!」

「ミキさん……」

「はい死んだー。君たちの「地球を救ってやるんだ」と言う気持ちが、今死んだよー」

「シュウ君……」

「最後まで……希望を捨てちゃいかん」

「先生……」

「パンダの尻尾って白いんだって」

「誰だお前……」



 様々な人たちから二人に贈られる、叱咤激励のメッセージ。

 一人じゃない。独りじゃない。孤独なんて、そんなものは、何処にもないのだ。

 茶髪眼鏡は笑う。エロ太郎も釣られて笑う。

 互いの笑い声を感じた二人は、微笑みあい、そのまま唇を触れ合わせた。



「ん……」



 エロ太郎、セカンドキスはフグ刺しの味がした。




「よし、行こうかエロ太郎、世界を救いに」

「おおともよ!」

「諦めないで!」



 そうして二人は戦場に向かった。

 勝てる見込みはないかもしれない。

 もしかしたら、負けるかもしれない。いや、ほぼ間違いなく、負ける。

 だけどそれは、諦める理由にはならないのだ。少なくとも、今の二人には。








「ふふふふーん! ふふふふふーん! ふふふふ、ふふふふ、ふふふふーん、ふふふふ、ふふふふ、ふふふふーん、ふふふ、ふふふふふ、ふふふ、ふふふふふ、ふ、ふ、ふーん……」


 JAふんふんにゃららC未申請。



「ちっ、ゴキゲンにクラシックを知らない人でも出だし位は聞いたことのある有名なアレを鼻歌しやがって……」

「しかも著作けなんちゃら対策もバッチリだ……やはり、あなどれないな、一之宮金剛力士宗孝アリス」

「それにしてもとんでもない名前だな。親の顔を見てみたいもんだぜ」

「ああ、そうだな。江口エロ太郎」



 所謂DQNネーム、もしくはキラキラネームである。

 ちなみに金剛力士像は言う程キラキラしていなかったりする。まぁ木像だし。



「おい、一之宮!」

「ん、なに? 紀野さん」


 茶髪眼鏡に声を掛けられた一之宮は相も変わらずドヤ顔を崩さずに呼び声に応えた。

 対する茶髪眼鏡は、先手必勝。余計な問答はせず、直球勝負を仕掛ける。


「お前、おっぱいをデカくしたろ……!」

「な、なななななな、なんのことかなあばばばばばばばばばばば」

「とぼけるな! 分かっているんだろ! そのおっぱいの肥大化を止めなければ、6クインチリオン年後に、地球はおっぱいで埋まってしまうんだ……滅びて、しまうんだぞ!」

「はぁっ!? 何言ってるの!?」


 何を言ってるか分からない、そんな表情をして、一之宮はとりあえず机の上に乗った。

 乗る前にはきちんと靴を脱いでるあたり、育ちの良さが伺える。

 机の上で、一之宮はバッと両腕を高々と広げた。

 まるでこの世界の全てを掌握したかのように、不遜な態度で叫ぶ。



「私が貧乳である世界なんて……滅びてしまえばいいのよ!」

「なっ!?」


 それは、一つの覚悟の現れだった。

 哀しくもあり、醜くもあり、だけど何処までも人間染みた、限界の覚悟。

 間違っていることは分かっている。正しくないことも知っていた。だけど、二人がそうであるように、彼女もまた、諦められなかった。

 善や悪の問題ではない。信念のぶつかり合いだった。 



「あはははははははは! いいじゃない! 私のおっぱいで地球が埋まる! ふん、今まで貧乳を馬鹿にしたこの世界に、私が復讐するのよ!」

「いや、巨乳とかいいもんじゃないぞ、肩凝るし」


 茶髪眼鏡は自身のおっぱいをくい、と持ち上げた。

 それはそれは見事なロケットおっぱいだった。

 一之宮はブチ切れた。


「爆ぜろFカップ! タンスの角に小指ぶつけろ!」

「お前えええええええええええええ! 俺の大事な大事な相棒に、なんてことを言うんだあああああああああああああああ!」

「五月蠅い江口エロ太郎! あんたの名前、チョーウケルんだけどー!」

「ぐはぁ!」

「え、エロ太郎ー!」



 その場に倒れこむエロ太郎。

 咄嗟に茶髪眼鏡がスライディングしたお蔭で、彼の頭は床ではなく茶髪眼鏡の膝の上に着陸したが、しかし彼は身じろぎひとつしなかった。


「し、しっかり、しっかりしろ!」

「…………」


 茶髪眼が震えた声で問い掛けても、エロ太郎から返事はない。

 そこで、茶髪眼鏡は一つの事柄に気付く。


(あ、私、パンツ履いてなかった)


 そんなこんなで地球は滅亡の危機。

 開き直った女子高生とは、この世で一番厄介な存在なのだ。

 





「ん、どした?」



 と、そこで全身を返り血で真っ赤に染め上げた少年が、騒めく教室の様子に、訝しげにやって来た。

 その少年を見た途端、一之宮は咄嗟に机から飛び降りた。


「た、たたたた、田中君! 魔王は倒せた!?」

「おお、今回もギリギリだった」


 そう言って、少年、田中は何かを思い出した様に、手のひらをぽん、と叩いた。

 彼が一之宮に向かい合うと、彼女は顔を真っ赤に染める(返り血ではない)



「そうだ、一之宮。俺、お前が好きだ」

「ふぇ、ふぇえええええええええ!? た、たたたたた、田中君!?」

「これを……受け取って欲しい……」

「こ、これ、1050円じゃない! そんな、消費税まで……!」

「俺、貧乳が好きなんだ。……結婚、してくれ」

「……う、うん!」



 二人は幸せの様なキスをして、終了。

 一之宮のおっぱいの肥大化は、止まった。




 一部始終を見ていた茶髪眼鏡は股のスースー感にモジモジしながら、だけど膝上にはエロ太郎を乗せっぱなしで、つぶやく。


「お、終わった……のか……?」

「ふ、ふふ、やっぱり最後には愛が勝つ、のさ……」

「エロ太郎!? い、生きて、い、生きてたのか……!」

「ああ、心臓を三つ持って行かれたが……なんとかな」

「よ、良かった。良かったよぉ……ぅ、ぐす」

「おいおい、泣くなよ……」

「だ、だってぇ……んうっ!?」

「ん……」

 


 エロ太郎、サードキスは獅子唐の味がした。



 世界は今日も平和で、明日もきっと、こんなもん。










登場人物紹介



・剣菱 学ばない

 堰天六十四鬼人が一人


・妹尾ノーマター加奈子

 堰天六十四鬼人が一人



・マヤ文明の末裔のミキさん

 美白



・大分県大分市松岡出身のテニスが上手いシュウ君

 テニスが上手い


・1年SLAM組担任、ぽっちゃり系あん何とか先生

 バスケ部顧問


・一之宮金剛力士宗孝アリス

 貧乳


・江口エロ太郎

 堰天六十四鬼人が一人


・紀野茶髪眼鏡

 堰天六十四鬼人が一人


・田中スペースキー

 堰天六十四鬼人が一人


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつものことながらわけわからんw ここまでくるとすがすがしいというか素晴らしいというかw
[良い点] わけがわかりません [一言] 堰天六十四鬼人が一人である江口エロ太郎の心臓を三つももってけるなんて、開き直った女子高生はまっこと恐ろしいですね。
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