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RED2  作者: ロッカ
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レッド・ゼルドギアと大いなる誤解5・完

まっ敵は知れてる。街に戻ってきてからずっと追い続けてる悪の組織です。結構大規模な組織で貴族の一部とも繋がってる。そこらへんとか厄介だったんだけども最近ようやく証拠も集まってきてね。部下さん達が頑張ってアジトも特定出来たところだったんだよ。人としてはアレな感じでも仕事はできるのだ。あとは時期を見計らって一斉逮捕となるはずだったんだけど・・・


「隊長とやりあった俺が言うのもなんだが、命知らずな連中だな血祭り絶対」

「いや、ただのバカなんだろ。じゃなかったら現実見ないバカだ血祭り遂行」

「それって同じではないか血祭り決定」

「エメちゃんに手を出すなんてバカ以外にないと俺も思う血祭り万歳」

「どのような世界にも似たようなバカはいるものでござるな血祭り祭り開催」


お前らどんだけ血祭り!?特に兵馬引っ張りすぎじゃね!?

まったく・・・よーくお聞きなさいそこの血祭り実行委員会。

確かに頭には来たけど隊長はそんな事しーまーせーんー。なんですその顔は。だいいち隊長に失礼だと思わないの。君達の隊長ですよ。顔は怖いけど中身は超友好よ。白い鳩だよ。ラブ&ピースよ。君の友達は俺の友達だよ。


「またまたぁ」


声揃えて言うなよ!ほんと失礼だな!テメエ等から血祭りにしてやんぞ!



* * *



ハイ無事エメ確保、保護いたしました。

あまりにもあっさり事件が片付いたのでその時の場面はカットです。ただ多数の犠牲が出た模様ですと伝えるに留めておきましょう。言っとくけど死亡者はゼロよ!?そこんとこちゃんと踏まえてな!


「すまん。俺の不注意だ」

「・・・・・・・・」


夕方。俺は馬でエメを自宅に送ってるとこ。後は部下さん達に任せてね。こんなとこ長く居たくないだろうし、後日話を聞く事にして先に帰してあげようって事になった。で、やっぱ謝っておこうと。エメが巻き込まれたのは明らかに俺の知り合いだからだろうしな。ああ~これで知り合いじゃなくなったらどうしよう。ぼっちか・・いやだぁあああ。ちなみに部下さん達は知り合いのジャンルから除外ね!


「・・・どうしてそこまでするの」

「ん?」


長い沈黙のあとエメが馬の歩みにユラユラ前後しながら呟いた。


「なんであんたがそこまでするの。あんた・・・偉い人なんでしょ?軍のトップだって聞いたわ。半端な貴族よりも偉いって。普通ここまでしないわ。あたしなんて唯の街娘よ。貴族でもなんでもない。あんたくらいの人なんて椅子にでも踏ん反り返って部下達を顎でこき使ってるのが普通でしょ」


マジで!?司令官てそんな楽だったのか!?滅茶苦茶こき使われてるぞ俺!・・いやでも・・それ違うと思うよ?ていうかそんな奴使えないから仕事振られないだけじゃないか?トップは部下に軽んじられては・・・俺は別の意味で軽んじられてるけどね。

取り敢えず否定の意味を込めて首を振った。


「あんたは違うって言いたいわけ?」


偉そうに言うけど俺ほど働いてる司令官ってあんまいないと思うよ。うん。そう言えるほど頑張って来たし。「お前の死因は過労死だな」って黒縄の前の司令官に言われた事あるし。

今度は肯定に頷く。

エメが振り返って俺と目を合わす。え、あ、あの・・参ったなぁ・・これ理由言えって目だよな。恥ずかしいから言いたくないんだよな。恥ずかしがり屋なんです。勘弁して。


エメ「・・・・・・・」

俺 「・・・・・・・」

エメ「・・・・・・・」

俺 「・・・・・・・」

エメ「・・・・・・・」

俺 「・・・拠り所だ」


負けた・・・女の子にメンチ切られて負けた・・・陛下にだって負けた事ないのに・・・

しょうがない。俺は覚悟を決め、少ない語彙をかき集めて話した。


「拠り所?」

「・・・俺の仕事は皆が安心して暮らせるようにする事だ。そのために必要とされる事は嬉しいしやりがいを感じる。皆が笑って暮らせる事の一端を担ってると感じる事が・・・俺の拠り所なんだ」


そうなんだよな。こんな俺でも社会の役に立ってる、必要とされてるって事は俺にも必要なんだ。だから一生懸命頑張れるし、人の事を思いやれる。そしてまた応えてもらう。それは孤独になりやすい俺にとってとても大事なことだ。それをなんて言うのか知らないけどね、たぶん拠り所ってヤツだと思う。俺の。


「それにエメは唯の街娘ではない、両親や友人にとって大事な人間だ」


俺にとってもね!貴重な女の子の知り合いだからね!恥ずいから言わないけどな!恥ずかしがり屋さんだからな!

エメは口を噛みしめて俺の話を聞いていたがやがて


「・・・言っとくけど全然見直してなんかいないから。助けてもらったからってお礼なんか言わないんだからね」


いつものツンデレに戻ってくれた。ホッ。


「・・・わかった」

「ちょっと、今笑ったでしょ」

「いや」

「絶対笑った!」

「笑ってない」

「嘘!絶対笑ってる!」

「すまん」

「笑ってるんじゃない!」


随分進んだところでエメは小さく「ありがとう」と言ってくれた。可愛さマーックス!妹がいたらこんな感じかな。


* * *


事件を解決させた俺達はついでとばかりにその夜、悪の組織を壊滅させた。アジトを急襲したのだ。敵達はまさかその日に行動を起こされるとは思っていなかったようだ。ボスと幹部達を軒並み確保。右往左往するチンピラ共も一人残らず捕縛した。その後の俺はというとめちゃ大忙しだった。次々と上がってくる報告に指示を飛ばし、溜まる一方の書類を捌き続けた。その傍ら、ディーン達が念入りに選んでくれた詰め所の新しい所長に簡単に引き継ぎを済ませる。慌ただしいお別れにそれでも結構な数の街の皆さんに来てもらったんだがその中にエメの姿はなかった。がっかりしたけどこれでいいのかもな。エメの事は気がかりだけど俺なんかが彼女の傍にいてもね。きっとこれから彼氏とか仲のいい男友達とか現れるだろうし、それを目の当たりにして平気でいられそうにもないしな。あ、いやあくまで妹としてね兄貴の複雑な感情ってやつ。


・・・エメ、元気でな。たまに会った時には憎まれ口でもいいから声、聞かせてくれ。


ちょっとだけモヤモヤしたものを残しながら俺はエメに心の中でお別れを言った。

城に戻って1週間後。


「なぜエメがいる」

「差し入れに来たのよ。有難く思えば」


結構早めに会えました。おい俺のセンチ返せ。恥ずかしい事言っちまったぞどうしてくれる。

その原因エメが俺の執務室に堂々と立っている。なるほど書類だらけのデスクに旨そうな焼き菓子が入ったかごがあるね。じゃなくて一般人が入ってよかったっけな。さりげなくデスクを見渡すが重要なものは置いてなかった。ま、当然です。さてと。


「ディーン?」

「いいふぁないれすか。うまいれすよこれ。たいひょうもひとふぉちいかがれす」


もう頂いてるんだな。俺より先に。俺の手刀もあげちゃおうかな。


「隊長!うまいっす!」


バイゼン君、ちょっと来なさい。


* * *


「家の人には・・」

「言ってあるわよ。私がそんなヘマすると思う?」

「いや・・・では送ろう。もう少し待っててくれ」

「・・・しょ、しょうがないわね!そこまで言うのなら待っててあげるわ!」


うむツンデレは健在だな。

なんかあったのかと心配だったけどもこの分じゃ大した事ないのかも。俺はホッとして書類を大型の金庫に仕舞った。そこには悪の組織に加担していた貴族達のリストや大事な証拠が保管してある。そろそろ告発の時期だ。逃げられない様に手も打ったしね。あー忙しいよー。


「そういえば隊長、噂の方ですがなかなかしぶといです」


まだ続いてたのそれ・・・噂って七十五日じゃなかったんか・・・


「噂?」


げっ!そういえばエメがいたんだ!喋るなよディーン!喋ったら今すぐ強制送還だからな!二度とこの地を踏めぬものと思えよ!いいなぜったい・・・いいいいい!!!!!一番注意しないといけないヤツg


「隊長が男色家って噂があってな」


遅かったかぁぁああああ!!!


「バイゼン・・・」

「バイゼン殿・・」

「バック貴様・・」

「殺しますか?」


いや俺が殺るよ。


「だんしょくかって何?」


・・・・ここに穢れなき天使が!神よ!起死回生のチャンスですか!即座にバイゼンの首を絞めるのを止め、エメに向き直る。


「何でもない」

「何でもなくはなさそうだけど」

「唯の噂だ」

「知りたいわ」

「聞かせるわけには・・」

「聞かせられないほどの事をしたのねサイテー」

「するはずな」

「じゃ言えるわよね?」

「・・・・・」


あるぇえ?チャンスが何故か尋問エア。そうじゃなくて誤解されたくないだけなんだけどな。しかし焦って回避しようにもエメの追及は鋭くなるばかりで・・・俺はたちまち追い詰められる。もう一度バイゼンの首絞めたくなってきた・・・


「浮気した亭主みたいだな隊長。・・・そうだこれだ!隊長いい案が!」


ディーンが何事かを思いついたようだ。助かったぁ。エメの目がキラリと光る。まだ話は終わってないと言いたげだ。うひー女の子って怖い。


「隊長、女性の知り合いは・・・いないですよね」


悪かったな!


「ではエメに協力してもらったらどうでしょう。要は隊長が・・・だと思われなければいいんです。ちゃんとお付き合いしている女性がいるように演出すれば噂も自然と収まるのでは」


あっなるほどねーノーマルだとアピールすればいいんだな。いいかもしんない。もっと早くに思いついててもよさそうなもん・・・・・だから、そもそもその時点で知り合いいねぇじゃん俺・・・・

自分で自分に回復不可なダメージを与えてしまった俺をよそにディーンはどんどん話を詰めていく。


「エメ、隊長は今謂れのない中傷を受けているんだ。隊長とても困っていてね、仕事やプライベートにも支障がでているくらいなんだ。そこでね、隊長と付き合ってもらえないかな?ああ勿論演技だよ、演技。時々こうして隊長に会いに来たり公式なパーティに一緒に出てくれればいいから」


エメは最初はきょとんとしていたが話が進むにつれ徐々に顔が赤くなってきた。


「で、でも私とじゃ釣り合わないんじゃない?唯の庶民だし・・・」


庶民って態度じゃな・・・すいませんどうしてわかったの睨むのやめてもらっていいですか。


「大丈夫。全然大丈夫。隊長だってもとは平民だし、それに隊長のエスコートしてる女性にそんな、そんな恐ろしい、そんな勇気ある奴この国にはいないから」


ディーンの言い方に腹が立つが事実だ。どうしても出席しなきゃいけない王家主催のパーティとか当然女性を供わなきゃならない決まりがある。でも俺に限って言えばそれは許されるし、突っ込んだ質問された事もない。陛下にすら。ある事件が起こったせいでな。この話はまた後でしよう。


肝心のエメだが・・嫌がってる様子は見えない、と思うんだけど。

俺はディーンと目を合わせた。いけぇ隊長!と言ってる、気がする。


「エメ・・助けてくれないか?」


どうよ!どうなのよ!


「協力しても・・いいわよ」


やった!しかしそこは「しょうがないわね!協力してやってもいいわ!だっだけど勘違いしないでよね!ああんたの事なんてこれっぽっちも好きじゃないんだから!わかった!?」て言ってほしかったなぁお兄ちゃん。ヤバい自重しないと俺変態みたいだ。


「やりましたね隊長。これで汚名返上ですね」

「うむ。でかしたディーン」


俺とディーンはガシィッと固い握手を交わした。持つべきものはアレだけど有能な部下よのぉ!


「隊長、上手く事が運びそうで重畳にございますな。ささ茶をどうぞ」


おー兵馬気がきくな、ありがとう。

俺はデスクに寄りかかったまま薫り高い緑茶を味わった。実は兵馬、茶にうるさくこの国にある茶葉を勝手に改良してなんと緑茶もどきを作ってしまった。なんか軽く言ってしまったがなかなか実現できる事じゃないよなー。どうしても飲みたかったんだろうなぁ日本人だもん。

向こうにいた頃はペットボトル入りの緑茶なんかを飲んでいたけど、こうしてちゃんと手順を踏んだ緑茶は比べ物にならないくらい美味しい。こだわった兵馬を笑えないくらい。

口一杯に茶を含む。そうすると


「隊長、行儀が悪ぅございます。何度申し上げたらわかるのですか」


早速兵馬からお小言をもらった。いいじゃねぇかよこうやって飲むのが好きなんだ。お母さんかお前は。

兵馬にくどくどと茶のなんたらを聞かされながら緑茶を味わっていると、ディーン達が話を詰め始めた。


「出会いは戦争前にしよう」

「それからはどうすんだ?隊長はエメに派手な出迎えされたんだろ?」

「・・・ケンカ別れした事にすればいいのではないか?」

「珍しく冴えてるなアレクシア。その線で行こうか」

「珍しくは余計だ!」

「戦地に行く行かないでケンカ別れした、距離があったのは気まずくてお互い歩み寄れなかった・・・という筋書きでござるな」


あーなるほど。そう考えればエメのツンデレも上手く作用してくれそうだな。


「しかし少し年が離れているのがな」


・・・だよね。俺今年30だもん。エメはどうみても16、7・・・俺エメから見ればおっさんだな・・


「今時これくらいなら形容範囲じゃないのか?エメ、君年はいくつ?」


そういや聞いた事なかっ


「10歳よ」


ゴフォッ!

皆で茶を拭いた。


「じゅっじゅっさいぃいいいいい!!!それじゃ隊長は幼女趣味じゃねぇか!!」


バイゼンが叫んだ。


ちょ おま


・・・・そしてまたドアが開いていた。







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それから、


俺が男色家などと忌まわしい噂は消えた。


しかし、


新たにロリコンという噂が国内に出回った。


国内に。


こ・く・な・い・に。


終わりました。

あと一話おまけを書く予定です。

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