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RED2  作者: ロッカ
3/6

レッド・ゼルドギアと大いなる誤解3

えっと・・取り敢えず水拭くか。

俺が懐に手を入れてハンカチ(持ってて悪いか)を取ろうとすると、何を思ったのか兵馬が止めに入った。


「た、隊長!早まってはなりませぬ!見ればまだ年若い!しばし!しばしご辛抱を!」


・・・・・・・・・・・。

お前・・・それはどういう意味ですか?答えによってはお前が真っ二つだよ?

俺はため息をつくと兵馬に構わず(テンパリ具合がムカつく)ハンカチを出すと濡れた髪や顔を拭った。

そして改めて女の子に向き合う。


「理由を聞こう」

「理由ですって!何を偉そうに!そんなものないわよ!あんたが気に入らないからに決まってるじゃない!」


えっ、えええええぇ・・・

いやぁあるでしょ。何もなくて見ず知らずの人に水ぶっかけないでしょ。君と俺初対面だよね。それとも何らかのバツゲームか?それだったら相当レベル高いな。


「本当か(バツゲームでもない?)」

「しつこいわね!あんた達なんて見るだけでムカつくのよ!」


ひ、ひでぇ。

・・・しかしうーん。

俺はそれとなく周りを見渡した。・・・殺気だってる。これは一歩間違えば暴動に発展するな。

兵馬とアレクシアの顔も緊張に引き締まった。よし。


「・・・わかった。今日は帰ろう」

「二度と来ないで!街に一歩でも入ったら許さないんだから!」

「・・・・・・・」


俺は馬に跨ると馬上から女の子を見下ろす。失礼だなとも思うけど優位に立たせるわけにもいかない。


「また来る」

「聞いてなかったの!二度と」

「また来る」

「っ!」


俺はゴリ押しでいうと馬首を返して平民街を抜けた。街の皆さんの視線が突き刺さる。

平民街でこうなもんだから貧民街はもっと風当たりが強かった。皆さんいまにも殴りかかってきそうだ。

俺達は彼らを刺激しない様になるべく静かに視察を続けた。



***


「・・・視察の結果はよくなかったみたいですね」


執務室に帰ってくると残業していたディーンに苦笑された。そんな丸わかりの顔・・・してるだろうな。俺はディーンに応えず、無言で椅子に座るとため息をついた。

一年前の彼らを知っているだけに今日は・・・ハァ。

でも・・当たり前だろうな。彼等からしてみれば俺達は裏切ったも同じ事をしたんだ。


「そんなに落ち込まないで下さいよ。なくしたものは帰ってきません。また一から頑張りましょう」


・・・ディーン。

お前ほんといいところでいい事いうね。何時もは俺をいいように使ってるくせに。ゴメンネこの前腹黒リアンとか心で呼んじゃって。

そうだな。ここで挫けてる場合じゃないよな。街の皆さんはもっと辛い目にあって来たんだ。

俺は目をぎゅっとしてから気合いを入れると目の前の書類をさばき始めた。・・で、あのディーン君、その気味悪いスマイルやめてくれませんか。生温そうな目もやめてくらさい。俺疲れてるんです。君のその胡散臭いプリンススマイルにうっかり鉄拳叩き込みそうです。


そして視察から一週間経ちました。

俺さ、その間よくよく考えて決めた事がある。しかし俺一人で到底こなせそうにもない。なので朝一で皆に集まってもらった。


「隊長、何かありましたか?今度は誰を殺めたんです」


爽やかな朝一開口一番でそういう冗談やめてくれる!?俺に向かって言うとほんとに殺ってるみたくなるからさ!・・ってまたドア開いてんじゃんかよぉおおお!!


「・・・街に引っ越す」


・・・・・・・・・・・・うん、伝わってない。

えーと・・・説明・・・説明・・くっ、俺説明長いセリフとか疲れるんだよな!俺の言語能力とかコミュ障どうにかならんか!あとドアは閉めた。


「生活の場を街の詰め所に移し、そこで執務を続けるつもりだ。直接現場にいたい」


これでどうだ!まだだめか!結構頑張ったけど!これでもな!


「詰め所の所長は使えない男・・・というよりはクズですからね。隊長がそう思われるのも無理はありませんが」


おお!伝わったか!?やったね!


あの散々な視察からロウコと兵馬に街の事を表から裏から徹底的に一から調べ直させた。それほど街の皆さんの様子は前とは違っていたからさ。戦争や治安の悪さの他に何かあるんじゃないかと。そしたら案の定出てきました。その最たるものが詰め所です。詰め所というのは日本風にいうと交番みたいなものにあたるんだけど、そこの所長がとんでもない奴だった。

このフレディ・アトキンスという男、俺達が戦地に行っている間、任せておいた本来の所長をでっち上げた不祥事で追い出し後釜に座った後、裏組織と手を組んで点在している詰め所全てを手中に収めてしまった。こんな不届き者が指揮する詰め所だ、心ある部下達を追い出すと犯罪者と変わらぬもの達を引き入れ、悪事に見て見ぬふりどころか暴力、殺人に手を染めるところまで落ちていた。

その戦地に送られて来ていた報告書とあまりにも違う現状に眩暈がしたよ。即刻この所長とその部下達を叩きのめし逮捕。逃走しようとしていたみたいだけどね。裏組織の情報も聞き出さにゃならんので逃がしません。あ、勿論家宅捜索もしました。

当初シラを切っていたが数々の証拠を突き付けた俺と対峙したとたん、震えながら白状したというところだ。・・何ですかそこ。なんか言いたい事でもあるんですか。俺が睨んだ方が簡単早いとか言うつもりですか。オホン。次いで、この男と結託して偽の報告書を作っていた事務方の男達も逮捕、処断を下した。


「代わりのをスゲ換えればいいじゃねぇか」

「バーカ。隊長は今すぐ街の治安を良くしたいんだ。なのに今の俺達には時間が全然足りない。・・・まだわからないか?いいか、詰め所なんて俺達の代表、顔みたいなものだ。それをあのクソ野郎が台無しのメッタクソにしやがった。そのお陰で今じゃ町民の信頼度なんて0に近い。今後の人事は厳選にも厳選して選ばなければいけない。なのに選んでる時間がないんだよ。終戦の処理もあるしな。・・・これ以上、二度も三度も失敗できるか」


俺に代わってディーンがバイゼンに説明してくれた。うむ楽だ。


「組織の全容もまだ掴んでいない以上、またがあってはならん。本人に気がないまでも家族や知人にまで害が及べば揺らぐかもしれん。ここは俺が街に常駐し、目を光らせたい。囮になってもいいしな」


暗殺通り魔ヒットマン、どーんと来い!ちょっとイラついてるので特別サービスしますぜ!


「それはまたビッグな餌ですなぁ」


バイゼンがニヤニヤしながら顎鬚を撫でる。アレクシアが顔を顰めた。


「バック、貴様隊長が囮になってもよいと言うのか?私は反対です!隊長自らそんな危険な事を!それなら私が詰め所に入ります!」


アレクシアがはいはい!と元気よく手を上げるので「はいソフィア君!」と指しそうになったが我慢して首を振るだけにした。なんかランドセルの幻まで見える。大丈夫かしら俺。長く喋ったストレスか。


「アレクシア、学習って言葉知ってるか?」


ディーンがひやっとする声で割り込んだ。おお説教の気配。


「・・・ハァ。あのね君貴族でしょ。君に何かあったら皺寄せが隊長に来るんだよ。只でさえ隊長伯爵家に睨まれてるのにこれ以上迷惑かけるな。何度言ったらわかるんだ?」


ディーンが声と同じく氷のような視線でアレクシアを睨むと途端にアレクシアがしおしおとなってしまう。


「ディーン殿言い過ぎでござる」

「そういう事言うなよぉ。アレクシアだって」

「黙れ。隊長、隊長達はアレクシアに甘すぎます。はっきり言ってやった方がコイツの為でもあるんですよ」


俺とロウコは目が合うと苦笑した。アレクシアは皆の妹分みたいなものだからなぁ。あ、今はそんな話じゃないか。この話はまた後でしよう。


「本題に戻す。そういうわけで俺は街に居を移す。そこで・・・・後の事をお前達に任せたい」

「わかりました」


返すのはっや!俺結構無茶ブリな感じで言ってみたんだけど!


「会議や訓練及び行事などは俺が司令官代理として出席します。言い訳はお任せ下さい。奴らを言い負かすのは慣れてますから。簡単な判断ならここで処理することにして重要な案件のみ隊長の指示を仰ぐ事でよろしいでしょうか?」


・・・おおおお!さすが副官!そうしてくれると助かるよ!すげぇな!よしここは褒めとこう!


「さすがディーン。良い副官だな」


「えっ・・・」


何故そこで頬を染める?何故そこで頬を染める?何故そこで頬を染める?

そして何故お前達は羨ましそうにディーンを見る?

・・・隊長怖いんだけど。なのでツッコんでやんない。


「俺は警備を頑張るぜ!隊長の留守は俺が守ってみせる!だから褒めてくれ!」

「拙者は指揮伝達を迅速に行えるように整えて参ります!ですからおほめの言葉を!さぁさぁ!」

「俺は裏組織の情報を集めてきます。必ずや成果を上げてみせます。・・褒めてくれますか?」

「私は黒縄封軍の士気を高めます!何時如何なる時も使えるようにしておきます!私も欲しいです!」


ツッコみたいけど!滅茶苦茶ツッコみたいけど敢えてツッこまない!ツッこまないったらツッこまない!見て見ぬ振りも人生には大事だ!スル―だ!


「あっ、あの!噂の方はどうしましょう!多少忙しくなるので進展は遅いと思われるのですが・・・」


うぁわぁああ!ディーン!頬染めたまま上目遣いやめてぇ!俺の方が身長高いから自然そういう風になるのわかるけどやめてぇ!あと他明からさまに意気消沈すんのやめて!


あ、えー、噂・・・噂・・・あ~・・あったなそういえば。


「放っておけ」

「よろしいのですか」

「事態は急を要する」


気にならないと言えば嘘になりますよホモ疑惑。でもこっちの方が重要だろ。それにそんな噂していられなくなるほどこき使ってやるさ!


***


俺は早速荷物をまとめその日のうちに詰め所に入った。


「あんた!何しに来たのよ!」


あ、俺に水ぶっ掛けた子だ。ここは愛想よく・・・


「今日からここに住む」


出来る筈もないけどな!


「はぁ!?冗談でしょ!?二度と来ないでって」

「俺がここの所長をする」

「・・・・・・・・・」


うう・・・目がこわいよぉ。


「今更・・・アンタが何したって無駄よ」

「・・・・・・・・」


だよな。でもどんなに詰られたって罵倒されたって引くわけにはいかない。

俺は黙々と詰め所内に荷物や書類を鉾び込んだ。連れてきた部下達も黙ってそれに倣う。

いつの間にか街の皆さんが集まって来て、石とか投げられたらどうしようとか思ったけど(・・・ちょっとやられてみたい気はするけど。いや映画とかアニメとかで・・そういうシチュってやってみたくなんだろ!チャンスって大事だろ!)そんな事にはならなかった。


「フン。どうせ見掛けだけよ。すぐに本性を現すわ」


女の子は見事な捨て台詞を吐くと通り向こうのパン屋さんへと入って行った。


あれもしかしてお向かいさんですか?

すいません。多分5話で終わりになります。

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