表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある歌姫の受難  作者: 葉二
第一楽章
5/11

4,「妹との再会と脅迫」

 

 僕が声が出せたことによる歓喜に染まり、無言で幸運をかみしめていると。

ノックの音と「失礼します。」の声とともにだれかが病室に入ってきた。


呆然としていた僕とはっきりと目が合う。

髪の毛も長くなり、身長も少し伸びたようだがはっきりと分かる。

僕の妹の(なごみ)である。


「あっ」

俊兄(しゅんにい)のバカぁ。」



 バコッ。


 (くち)を開いた直後に妹に殴られました。

グーで。


「俊兄、無茶しないっていったよねぇ。

 なのになんでそんなに寝込んでたのさぁ。

 もう起きないかと思った…。

 また家族と別れるかと思っちゃったぁ…。ぐすっぐすっ。」


そして、いきなり抱きついてきて泣き出した。


失念していた。

父と母(家族)を亡くしたばかりの妹にとって、()を失うことは何にも耐えがたかったに違いない。



僕は、しっかりと抱きとめて声をかける。

「和、もう僕はどこにも行かないよ。」

「本当?」

「約束する。」

「絶対だよ。」

「うん、絶対だ。」


僕たちはしっかりと抱き合い続けた…。






しばらく抱き合い続けてふと思う。

あれっ、何か忘れているぞ。


その時、ふと目に映る白いもの。

僕の髪の毛。


時間がたち、泣きやんだ和に聞いてみる。

「和、何か僕おかしくない?」


泣きやんで少し安心していた和の顔が少しこわばる。

「何…かな…。あんまり変わってないよ。」


「じゃあこれは?」

僕は少し笑みを浮かべて、前髪を一房つまみ、和に見せる。


「何かなぁ。」

即座に顔をそむけ、知らない顔をする和。

その顔は、さっきとは打って変わって焦っているようにも見える。


そこに笑みを浮かべつつ追撃。

「目をこっちにむけてくれないと見えないよ。ねえ、これは何かなあ?」

「そっち向いたけど見えない。」

小学生のように目を閉じてこっちを向き、言う和。

しかし、汗の量はあきらかに増えている。


僕は微笑しつつ、

「ねえ、なごみ。おにいちゃん、もういちどきくね。これなにかなぁ?」

と、とどめをさす。


いよいよ汗の量が尋常じゃなくなってきた和。

左右見るが逃げ場などないし、僕がしっかり手首を握っている。

黒い笑みを浮かべる僕。



「さあ、()いてもらおうか。」


妹が喜ぶ話のはずだったのに最後が迷走してしまいました…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ