4,「妹との再会と脅迫」
僕が声が出せたことによる歓喜に染まり、無言で幸運をかみしめていると。
ノックの音と「失礼します。」の声とともにだれかが病室に入ってきた。
呆然としていた僕とはっきりと目が合う。
髪の毛も長くなり、身長も少し伸びたようだがはっきりと分かる。
僕の妹の和である。
「あっ」
「俊兄のバカぁ。」
バコッ。
口を開いた直後に妹に殴られました。
グーで。
「俊兄、無茶しないっていったよねぇ。
なのになんでそんなに寝込んでたのさぁ。
もう起きないかと思った…。
また家族と別れるかと思っちゃったぁ…。ぐすっぐすっ。」
そして、いきなり抱きついてきて泣き出した。
失念していた。
父と母を亡くしたばかりの妹にとって、兄を失うことは何にも耐えがたかったに違いない。
僕は、しっかりと抱きとめて声をかける。
「和、もう僕はどこにも行かないよ。」
「本当?」
「約束する。」
「絶対だよ。」
「うん、絶対だ。」
僕たちはしっかりと抱き合い続けた…。
しばらく抱き合い続けてふと思う。
あれっ、何か忘れているぞ。
その時、ふと目に映る白いもの。
僕の髪の毛。
時間がたち、泣きやんだ和に聞いてみる。
「和、何か僕おかしくない?」
泣きやんで少し安心していた和の顔が少しこわばる。
「何…かな…。あんまり変わってないよ。」
「じゃあこれは?」
僕は少し笑みを浮かべて、前髪を一房つまみ、和に見せる。
「何かなぁ。」
即座に顔をそむけ、知らない顔をする和。
その顔は、さっきとは打って変わって焦っているようにも見える。
そこに笑みを浮かべつつ追撃。
「目をこっちにむけてくれないと見えないよ。ねえ、これは何かなあ?」
「そっち向いたけど見えない。」
小学生のように目を閉じてこっちを向き、言う和。
しかし、汗の量はあきらかに増えている。
僕は微笑しつつ、
「ねえ、なごみ。おにいちゃん、もういちどきくね。これなにかなぁ?」
と、とどめをさす。
いよいよ汗の量が尋常じゃなくなってきた和。
左右見るが逃げ場などないし、僕がしっかり手首を握っている。
黒い笑みを浮かべる僕。
「さあ、吐いてもらおうか。」
妹が喜ぶ話のはずだったのに最後が迷走してしまいました…。