1,「始まりの朝」
三人称でスタート。
次からやっと主人公視点です。
「ガシャン」
一つの目覚まし時計がその生涯を終えた。
享年一か月。
まれにみる短期間でのご臨終だ。
ちなみにその目覚まし時計を壁に投げつけて破壊した少年はというと…。
「すやすや」
音もしないほどぐっすりと眠っている。
この少年実は結構壮絶な人生を送っている。
一月ほど前に事故で同時に両親を亡くし、母方父方ともに親戚縁者がいないため、二人暮らし。
そして、妹の学費を残すために入学したばかりの高校を中退。
もちろん高校中退の人間を採用しようとする稀有な会社もなく、フリーター生活と、少ない父母の遺産でなんとかやりくりをしている状態である。
それに加えて、
とある病にかかり、その病はいまだ治る気配もない。
少年の不幸はまだまだ長いのだが、そろそろ彼が目を覚ますのでこのあたりにしておこう。
少年は目を覚まし、目をこすりつつ目覚ましを探す。
発見できなかったので、メガネをかけ、掛け時計をみる。
もちろん、『目覚ましが鳴る』という行為には何らかの決められた時間があるということである。
それに気がつかず、あまつさえその目覚ましを破壊した少年の末路はというと…。
「やばい、バイトに遅刻だぁ~。」
こうなるわけである。