表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/42

そして新たな世界へ

お待たせいたしました

刀身に走っていた亀裂に沿って、剣がバラバラと崩れ始めたのだ。みるみるうちに刀身は複数の破片になって、カイゼルの足下に散らばった。

 

「ネメフェア様‥‥これはいったい‥‥?」

 

戸惑うカイゼルを見て、ネメフェアは楽しそうに笑った。

 

「壊れたわけではありませんよ。破片をよく見てみなさい」

 

カイゼルが足下の破片に目を凝らすと、破片同士を繋ぐ青白い糸のような光に気づいた。光は破片の全てを繋ぎ合わせ、柄元まで続いている。一続きに連なったその形状は、剣の名のとおり蛇のようだ。一般的な形状とは違っているが、カイゼルはその形に見覚えがあった。

 

「これは‥‥鞭ですか」

「その通り。鞭としても使える魔剣、それが世界蛇のもう一つの姿です。使いこなすにはそれなりの技量が必要ですが、便利でしょう?」

 

カイゼルが感触を確かめるように剣を振るう。

 

「破片を繋いでいるのは魔力で構成された糸、魔導糸です。細いですが非常に頑強ですし、貴方の意志である程度の伸縮も可能です。伸びろと念じてみてください」

 

カイゼルが念じてみると、魔導糸はカイゼルの意志に反応してするすると伸びた。

 

「逆に縮めと念じれば糸は縮みます。剣に戻したければ封刃(ロック)と唱えてください」

「なるほど‥‥封刃(ロック)

 

カイゼルが言葉を発すると、破片は瞬く間に元の長剣の形に戻っていった。

 

「気に入りましたか?」

「はい。この剣にしようと思います。」 

「分かりました。では鞘を用意させましょう。ディーナ」

「お呼びでしょうか」

 

ネメフェアの呼び掛けに、音もなく部屋のドアを開けて現れたディーナが応える。

 

「この剣に合った鞘を用意しなさい」

「かしこまりました。カイゼル様、鞘を見繕って参りますので剣をお借りします」

 

ディーナはカイゼルから世界蛇を受け取ると、一礼して部屋を出ていった。

 

「さあ、準備もこれで全て終わりました。後は貴方を転生させるだけ。最後に聞いておきたいことはありますか」

 

ネメフェアの問いかけにカイゼルは少し逡巡したあと、口を開いた。

 

「聞いても良いものか迷いましたが、一つお聞きしても良いでしょうか」

「何でしょう」

「王は‥‥クリス陛下達は無事に逃げることができたのでしょうか」

「‥‥貴方が戦場で逃がしたあの王ですね?」

「はい。無事に逃げ切れたのか、それだけが気がかりでした」

 

あの時王を逃がした隠し通路は城外まで続いており、出口も複数ある。しかもそのどれもが巧妙に擬装されていた。逃げ切れる可能性は高い。が、確実ではない。カイゼルはネメフェアの言葉を待った。 

 

「安心しなさい。彼等は無事に逃げ切りましたよ」

 

ネメフェアのその言葉に、カイゼルの身体から力が抜けた。

 

「そうですか‥‥これで心残りはなくなりました」

 

カイゼルはそう言うと、どこか晴れやかな表情を見せた。

 

「お待たせいたしました」

 

ちょうどその時、ディーナが世界蛇を手に戻って来た。

 

「カイゼル様、剣をお返しいたします。どうぞ」

 

ディーナから渡された世界蛇は、細部の金具まで手抜きのない造りをした漆黒の鞘に収まっていた。カイゼルはそれを腰に提げる。

 

「さあ、それでは貴方を転生させましょう。その方陣の中に立ってください」

 

カイゼルが方陣の中心に立つと、方陣全体が輝き出した。

 

「ではカイゼル、良い旅を」

「ネメフェア様、ありがとうございました」

 

そして方陣が更に輝きを増すと、カイゼルの意識はゆっくりと輝きの中に飲み込まれていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ