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異世界の旅にご招待!?

「私が‥‥ネメフェア様の眷族に‥‥?」

「不満ですか?」

 

覗き込むようにしながらネメフェアはカイゼルに問いかける。

 

「いえ!そのようなことはあるはずもごさいません!ただ、私のような者がネメフェア様にお仕えできるなどとは夢にも思っておりませんでしたので‥‥」

 

ネメフェアの眷族になる、つまりはネメフェアに仕え、共に働くということだ。そのような大役を任されるとは思っていなかったカイゼルは驚愕していた。

 

「私の眷族になるということは輪廻の輪から外れ、永い刻を私と共に歩むということ。下界には二度と転生できません。それでも引き受けてもらえますか?」

「はい!謹んでお受けいたします」

 

カイゼルは即答し、深々と頭を下げた。人ととして二度と下界の地を踏めない悲しみよりも、ネメフェアのために働ける喜び、誇らしさの方が勝っていた。

 

「引き受けてくれますか。ありがとう。さて、戦場での活躍と今回の眷族の件もあります。貴方には褒美を取らせなければなりませんね」

「とんでもございません!お仕えできるだけでも充分過ぎる栄誉にございます。この上褒美など、頂けません」

「遠慮はいりません。受け取ってくれないと困ってしまいます」

「ですが‥‥」

 

なおも断ろうとするカイゼルを見て、ネメフェアは笑みを浮かべた。

 

「褒美といっても、それほど大した物ではありません。貴方を転生させるだけのことですから」

「転生ですか?しかし先程、もう転生はできないと‥‥」

「そうです。先に話したように私の眷族になる者は二度と転生する事はなくなります。ですから最後の転生を褒美として与えるのです。私のために働くのはその転生後の人生を終え、再びここに戻って来た後でかまいません。どうでしょう、受け取ってもらえますか?」

「ネメフェア様‥‥ありがたく頂戴いたします」

  

二度と転生できないと覚悟していたカイゼルは、喜んでネメフェアの褒美を受け取る事にした。

 

「受け取ってもらえますか。では、転生をするにあたって希望があれば聞いておきましょう」

「希望ですか?」

「本来の転生では転生先は選べません。ですがこれは私から貴方への褒美です。裕福な家に産まれたいと言えば叶えますし、他にも希望があれば極力それに沿うようにしましょう」

 

ネメフェアにそう言われたカイゼルは暫く考えた後、自分の希望を口にした。

 

「それでは、今私が持っている剣の腕、技術、知識を残したまま転生させていただけますか?」

「それだけ‥‥ですか?貴方が望めば一国の王の子供に転生して、楽に暮らすこともできるのですよ?」

「元より金や権力にそれほど執着がないのです。ですが、剣は幼い頃より修練を積み身につけた私の全て。できれば忘れずにいたいと思いまして」

 

カイゼルの言葉に、ネメフェアは苦笑した。

 

「欲のない人ですね。分かりました。ですがその願いを叶えた場合、転生は赤子からではなくある程度成長した状態からになります。さらに転生後は身寄りのない、天涯孤独の身になってしまいますが構いませんか?」

「それは構いませんが‥‥理由を聞いても宜しいでしょうか」

「精神衛生上仕方ないのです。貴方の希望である剣の腕、技術、知識を残して転生させた場合、今の自我を残したまま転生する事になります。そのまま赤子として転生すれば、今の自我を持ったまま授乳や排泄の世話を受けることになってしまうのです」

 

ネメフェアの話を聞いて、カイゼルは赤子になった自分が母から乳をもらったり、おしめを換えてもらう姿を想像してしまった。

 

「確かに‥‥それは耐え難いですね」

「分かってもらえましたか?もう一つ、転生後は天涯孤独の身となってしまう理由ですが、転生後の家族関係の構築がかなり難しくなってしまうためです。成長した状態で転生したとして、そこで初めて会うことになる自分の肉親といきなり良好な関係を築けますか?」

「なるほど、難しいでしょうね」

 

赤子として転生すれば問題はないのだろうが、成長した状態で下界に生を受け、いきなり『これが貴方の家族です』と言われても戸惑うだけだろう。

 

「他に聞きたいことはありますか?」

「いえ、もう大丈夫です」

 

頭を下げるカイゼルに、ネメフェアはもう一度尋ねる。

 

「本当にそれで良いのですか?もっと楽な人生にする事も可能なのですよ?」

「身寄りがないのは確かに大変そうですが、それで構いません。何にも縛られず、自由気ままに生きてみるのも面白そうですしね」

 

カイゼルはそう言うと、楽しそうに笑った。


 





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