接触(セシルSide)
遅れに遅れた上に前話のセシル視点になります(*_*;
良かったら見てやってください。
(柄じゃないんだよなぁ‥‥)
そんなことを考えながら、私、セシル・フラムレイルは窓の外をぼんやりと眺めていた。ここはアテナ女学院。これから私が通う学び舎だ。本来ならこれからの学院生活を想像し、期待に胸を膨らませるところなのだろう。けれども私は入学初日から少し憂鬱だった。
(どちらを向いてもお淑やかなお嬢様ばかり‥‥正直私がいてもいい場所じゃないと思うんだけど)
私の憂鬱の原因、それは他の生徒達だ。この学院は生粋のお嬢様が通う学院として知られている。名のある貴族の令嬢、有力商人の娘、そんなお嬢様方が通う学院なのだ。確かな家柄の娘達だけあって、皆お淑やかで物静か。はっきり言って私とは正反対の性格の子ばかりだ。私は早くもここで生活していけるのか不安になっていた。私がそんなことを考えながら窓の外を眺めていると、教室の扉を開ける音がした。誰か入ってきたようだ。同時に教室がざわついた。
(何‥‥?)
皆の反応につられるように、私は教室の入口に視線を向ける。そして目に入った光景に、私の視線は釘付けになった。そこにいた私と同じ新入生と思われる女生徒と、彼女の側付きらしいメイド。そのどちらもが、同性の私から見てもため息の出るほどの美人だったからだ。
「それではイゼル様、私はこれで」
「ええ。ありがとうディーナ」
集まる周囲の視線を気にすることもなく二人はそんな言葉を交わし、メイドは一礼すると教室から出て行った。
「席順は決まっているのね」
残された女生徒はそう呟くと、机の上にある名前の書かれたプレートを確認しながらこちらへと向かってくる。そして私の隣の机に置かれたプレートを確認すると、椅子に腰掛けた。そんな彼女を、私はついまじまじと見つめてしまう。癖一つない艶やかな長い黒髪。不思議な美しさを感じさせる銀色の瞳。凛とした表情と姿勢。見れば見るほど美しい女性だった。そんな風に私が彼女を見つめていると、不意に彼女がこちらを向いた。突然のことに動揺している私に、彼女は優しい微笑みを見せる。
「初めまして。私、イゼル・セグナムと申します。隣同士、仲良くしてくださいね」
「わ、私はセシル・フラムレイル。こちらこそよろしく」
微笑みに見とれていた私は、慌てて名前を名乗った。かなりぶっきらぼうな名乗り方をしてしまったけれど、そんな私に気分を害した様子もなくイゼルさんは優しい微笑みを浮かべていた。
(こんな人が隣なら、これからの生活も何とかやっていけるかも)
世の男性が見たら確実に虜になるようなイゼルさんの微笑みを見ながら、私はそんな事を考えるのだった。