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眠りの間に変わったことは?

遺跡を後にしたカイゼル達は、冒険者ギルドに戻って来ていた。依頼達成の報告と、フェリシアとブレイガードの事をギルド長に相談するためだ。

 

「すみませんフェリシアさん。フェリシアさん達の事は伏せておく約束だったのに、こんな事態になるとは‥‥」

「仕方ありませんよ。まさか三百年眠っている間に、身分証などという物が必要な世の中になっているとは思いもよりませんでしたしね」

 

そう、フェリシア達は身分証を持っていなかった。遺跡から帰る途中、何気ない話のなかで発覚したのだが、話を聞くと三百年前にはそのような制度はなかったらしい。カイゼルは困り果てた。この世界では今や身分証は絶対に必要な物だ。何よりこれから帰るグレイセルの街に入る際にも必要になる。悩んだ末、カイゼルはギルド長にフェリシア達の事を話し、助けを請うことにしたのだ。

 

「それにしても一時はどうなることかと思いました。このまま街にも入ることができないのか、と‥‥」

 

ブレイガードが安堵のため息をつく。身分証を持っていないフェリシア達は街に入ることができない。そのためカイゼルとタリムが先に街に入りギルド長に事情を話した上で、ギルド長の権限で半ば強引に二人を街に入れたのだった。そんな紆余曲折の後、カイゼル、タリム、フェリシア、ブレイガードの四人は冒険者ギルドの執務室へ通され今に至っている。

 

「しかしこれからが大変です。街には入ることができましたが、身分証がないという問題はまだ解決していないのですから」

「その事なら心配するな」

 

カイゼルの言葉に答えたのは落ち着いた低い声。振り返るとそこにはギルド長、ナヴァル・ハイドライドが立っていた。ナヴァルは執務室の自分の机に腰を下ろすと、葉巻に火をつけた。

 

「あんた達が遺跡で眠っていた二人かい?カイゼルから粗方の事情は聞いた。これから幾つか質問に答えてもらうぜ」

 

そういうとナヴァルは机の引き出しから書類を取り出しフェリシア達に名前や出身地等の簡単な質問を始めた。挨拶も無しに投げかけられる質問に、戸惑いながらも二人は淀みなく答えていく。やがて質問が終わると、ナヴァルは机上のベルを鳴らした。

 

「お呼びでしょうか」

 

ベルの音に呼ばれ部屋に入ってきたギルドの職員に、ナヴァルは記入の済んだ書類を渡した。

 

「この二人の身分証に必要な書類だ。頼むぞ」

 

ナヴァルの言葉に一礼すると、職員は職員を受け取り部屋を出ていった。

 

「これで良し。二、三日もすれば身分証は出来上がるだろう。こちらに届き次第使いの者をやるから取りに来てくれ」

 

そう言うとナヴァルは葉巻の火を消し、フェリシアとブレイガードの二人に向き直った。

 

「自己紹介が遅れて悪かったな。俺はナヴァル・ハイドライド。冒険者ギルドの長をやらせてもらってる」

「私はフェリシア・エルクラフトと申します。故あって数百年ほど遺跡で眠っておりました鍛冶師です」

「私はブレイガード。主であるフェリシアを守るために作り出されたホムンクルスです」

 

互いに自己紹介を済ませた後、不意にナヴァルはカイゼルに笑いかけた。

 

「しかしあのメイドの姉ちゃんに、今度はこんな美人が二人か。両手に花どころの騒ぎじゃねえなカイゼル。ハーレムでも作るのか?」

「ギルド長!冗談は止めてください!」

 

顔を赤らめながら抗議するカイゼル。

 

「別に構わねえだろ?一夫多妻は認められてるわけだしな。後はお前の甲斐性次第さ。頑張りな」

 

そう言うとナヴァルは椅子から立ち上がり、壁に掛けられた鍵の束から一つの鍵をカイゼルに投げてよこした。

 

「報酬の借家の鍵だ。ご苦労だったな。今後の働きにも期待してるぜ」

 

鍵を受け取ったカイゼルは冒険者ギルドを後にし、ディーナの待つ『紅龍の翼亭』へと向かった。

かなり放置してしまって申し訳ありません。私生活がかなり多忙で、今後も今回のように投稿が遅くなる可能性があります。のんびり気長にお待ちいただけると幸いです

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