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謁見

死んだと思ったのに目覚めれば見知らぬ部屋で、現れた女性は戦女神に仕える精霊だという。短時間に様々な事があり過ぎて、カイゼルの頭はパニック寸前だった。

 

「突然のことで混乱されておいでのようですね。宜しければカイゼル様の現状をご説明いたしますが?」

 

カイゼルが混乱しているのを察したのか、ディーナがそう提案してくる。

 

「‥‥ああ、頼む」

 

状況が全く掴めないカイゼルはディーナから話を聞くためにベッドを抜け出し、部屋に置かれていた椅子に腰掛けた。

 

「かしこまりました。まず現状の説明をさせていただきます。今いるここは戦女神ネメフェア様の宮殿、そして、カイゼル様は既に魂だけの存在となってここに存在していらっしゃいます」

「つまり私はもう死んでいるんだな」 

 

ディーナの言葉で、カイゼルは自身がすでに死んでいることを再確認した。

 

「残念ながら。亡くなった方の魂は本来であれば天界へ向かい、そこで次の輪廻を待つことになります。ですがカイゼル様の場合、少々特殊な状況となっております」

「特殊な状況‥‥とは?」

「カイゼル様の魂は、天界へ向かう前にネメフェア様に召喚されたのです」

 

戦女神ネメフェアはカイゼルがいた世界でも信仰のある女神だ。戦女神の名の表すように、戦を司り戦士を守護する女神として主に兵士や騎士、冒険者達に崇拝されていた。

 

「騎士にとっては光栄な事だが、なぜ私は召喚されたんだ?」

 

心当たりが全くないカイゼルは首を傾げた。

 

「その点は私にも分かりかねます。これからネメフェア様に謁見していただきますので、そこで聞かれるのが宜しいかと」

「お会いできるのか!?」

 

突如として告げられた事実にカイゼルは驚愕した。

 

「カイゼル様が目を覚まされたら連れてくるように指示されております。早速ですが謁見の間までご案内いたしますので、ご同行願えますか」

「分かった」

 

カイゼルが椅子から立ち上がると、ディーナが扉を開けた。

 

「こちらです」

 

部屋を出て、広い廊下をディーナを先頭に進んで行く。しばらく歩くと前方に一際大きな扉が見えてきた。

 

「こちらが謁見の間でございます」

 

ディーナがその扉の横に立って、そう告げた。どうやら案内はここまでのようだ。カイゼルはディーナに促され、扉を開けた。

 

「貴方がカイゼルですね」

 

扉の先、ディーナが謁見の間と呼んでいた広間にある玉座に腰掛けた美しい女神は、優しい笑みを浮かべながらカイゼルを迎え入れた。


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