初依頼達成と新たな仲間
久し振りの更新です。何だか話数のわりに話が先に進んでいないような‥‥そういった点も御指摘下さると嬉しいです。
「まさか女性だったとは‥‥しかし先程フェリシアさんはブレイガードさんを『作り上げた』と言っていたような‥‥」
タリムの呟きにブレイガードは頷いた。
「その通りです。私は主に作られた人造人間なのですよ」
「ホムンクルス!?」
カイゼル達が驚きの声を上げる。ホムンクルス──生殖行為ではなく、錬金術で無から人間を作る秘術の一つだ。
「話すと長くなりますが、ブレイガードはただのホムンクルスではありません。とある理由で知り合った消滅しかけの精霊種とホムンクルスの融合体なんです。ですからブレイガードはホムンクルスというよりも、精霊種に近い存在なんですよ」
フェリシアの説明を聞きながら、カイゼルはブレイガードに視線を移した。均整の取れた体躯、蜂蜜色の美しい髪、大きな翠玉の瞳、非常に整った顔立ち。そのどれもが、人工的に作り上げられたとは思えないほどに生気に満ち溢れていた。
「これでタリムさんの懸念は解消できましたか?」
「はい。ですが‥‥甲冑はどうなったのですか?」
フェリシアの言葉に頷きはしたものの、タリムはブレイガードの甲冑がどこにいったのか疑問に思ったようだ。それはカイゼルも同じだった。
「甲冑ならばここにありますよ」
カイゼル達の疑問に答えたのはブレイガードだった。彼女は右手を上げ、手首で輝いている銀のブレスレットを一撫でした。そして
「甲冑はこの中です」
そう言ったのだ。
「そんな馬鹿な!?」
驚きの声を上げるタリム。カイゼルも同じ気持ちだったが声を上げることはせず、ブレスレットに目をやった。銀でできたそれは、隙間がないほど緻密な彫刻が施された美しい物だ。そのブレスレットに埋め込まれている深い蒼の宝玉。それに魔力が宿っていることにカイゼルは気付いた。
「もしかして甲冑はその宝玉の中に‥‥?」
「流石はカイゼル殿、素晴らしい観察眼ですね。正解です」
そう言うとブレイガードは右手を高々と掲げた。
「装着」
短く紡がれたブレイガードの言葉に反応して、宝玉が青い光を放つ。その光は瞬く間に彼女を包み、次の瞬間その場には最初に見た甲冑姿のブレイガードがいた。
「コレハ主ガ作ッタ甲冑デ、名ヲ幻影鎧ト言イマス。今見セタヨウニ使用シナイ時ハ、ブレスレットニ収納シテオク事ガ可能デス」
「甲冑を着ると声が変わるのは、そういう機能なのか?」
カイゼルが質問する。ミラージュを身に纏ったブレイガードの声は、再び耳障りな響きに変わっていた。
「ソウデス。デスガ任意ニ変エラレマス。こんな風に」
軋んだような声が打って変わり、凛としたブレイガード本来の声が響く。
「侵入者対策ですよ。これなら声で威圧できますし、声だけで怯えて逃げ出してくれる者もいるかもしれません。戦わずに済むなら儲けもの、といったところです」
そう言いながらブレイガードは鎧を収納した。
「さあ、心配事もなくなったことですし、そろそろここから出ましょうか。外の世界は本当に久し振りですから楽しみです」
待っていたかのようにフェリシアはそう切り出すと、カイゼルに向き直り穏やかに笑った。
「ブレイガード共々、これからお願いしますねカイゼルさん」
その言葉に笑顔で頷きながら、カイゼルはディーナにどう説明したものか、と頭を悩ませるのだった。