衝撃の発言と甲冑の下の真実
サブタイトルって考えるの大変ですよね‥‥
「あら?私何か変なことを言ったかしら?」
衝撃的な発言に固まったままのカイゼル達を眺めながら、フェリシアは首を傾げた。
「イエ、主ノ発言二可笑シナ点ハ無カッタヨウニ思イマスガ」
フェリシアの疑問にブレイガードが答えるのを遠くに聞きながら、カイゼルは混乱した思考を必死に整理していた。
(居候!?確かにそれならば私もフェリシアさんも住む場所が確保できるが‥‥いや、しかし恋人でもない異性同士が一つ屋根の下というのはまずくないか?)
前世で騎士だったカイゼルは常に清廉である事を求められていたため、異性との付き合いに関して非常に古風な考えを持っていたのだ。
「フェリシアさん、やはり家はあなた方が使ってください。私は他の物件を探しますので」
「何故ですか?私の提案ならカイゼルさんと私達の住む場所が確保できます。全て丸く収まるではありませんか」
「それはそうなのですが‥‥何か間違いがあっては困りますので」
そう言ったカイゼルの顔を見つめたフェリシアは、静かに微笑みながら、
「カイゼルさんはそのような事をするような方ではないでしょう。お会いしたばかりですがそれくらいは分かります。それに私はそうなったとしても構いませんよ?無理矢理に、というのは困りますが」
ごく自然な口調で、先程よりも更に衝撃的な発言を口にした。これにはカイゼル達も絶句する。
「今‥‥何と?」
「ですから私はカイゼルさんと男女の関係になっても構わないと言ったのです。もちろんもっと互いのことを知った上で、どちらかがそれを望むなら‥‥ですけれど」
フェリシアの発言でカイゼルの思考は再び混乱の中に叩き落とされる。
「どうでしょう。男女の関係になるならないはともかくとして、居候の件、考えてはいただけませんか?」
返答に窮するカイゼル。だがこちらを見つめるフェリシアの両手がきつく握り締められているのを見て、カイゼルはフェリシアの強い決意を感じ決断した。
「分かりました。フェリシアさんの提案に乗りましょう」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「さ、先に言っておきますが、やましい気持ちでこの提案に乗ったわけではありませんからね!?」
慌てて言葉を継ぐカイゼル。
「そうなのですか?残念ですわ」
そんなカイゼルに冗談めかした口調でフェリシアはそう言った。
「と、とにかくこれで決まりです!タリムさん、勝手に決めてしまいましたがそれで良いですか?」
顔を朱に染めたカイゼルの問いかけに、タリムは笑顔で頷いた。
「ええ、構いませんよ。丸く収まって良かったです。ですが、その‥‥ブレイガードさんの格好はどうにかならないでしょうか」
タリムの発言で、その場の全員の視線がブレイガードに向けられる。
「ドウニカ、トハ?」
「流石に常時甲冑を着た姿で生活していますと、悪い意味で目立ってしまう気がするのですが‥‥」
「それでしたら問題ありません。ブレイガード、武装を解除しなさい」
「イエス、マスター」
フェリシアの命令にブレイガードは短く応えると、右手を挙げた。
「解除」
ブレイガードが発したその声に呼応して、甲冑が一瞬青く強い光を放つ。そのまま甲冑は光の粒子となってブレイガードの右手に吸い込まれ、次の瞬間には跡形もなく消えていた。そして、ブレイガードが立っていた場所には女性が一人。
「まさか‥‥ブレイガードなのか?」
確かめるようにゆっくりと紡がれたカイゼルの言葉に、
「如何にも。私がブレイガードですよ、カイゼル殿」
そう言いながら美しい女性──ブレイガードは艶然と微笑んだ。