神殿に眠りし者
今回短めです。上手く書けなくなってしまっておりますので、今回の話も変な所があるかもしれません。もしありましたら御指摘願います。
突如として響きわたった声に、双方の剣が止まる。声のした方を見ると、そこには一人の美しい女性が佇んでいた。紫水晶の色をした艶やかな長い髪を腰の辺りまで伸ばした褐色肌の美女。その額には、小さな一本の角が生えている。
「我ガ主ヨ、目覚メラレマシタカ」
甲冑が女性に歩み寄ると、その前に跪いた。彼女が甲冑の主、そしてこの鍛冶場の主なのだろう。
「久しいですねブレイガード。懐かしい魔力を感じて目が覚めました。ところで私はどれほどの間眠っていましたか?」
「オヨソ二百年程カト」
甲冑はブレイガードという名前らしく、女性の問いに跪いたまま答えた。
「そうですか」
ブレイガードの答えにさして驚く事もなく、女性は髪の色と同じ紫水晶の瞳でカイゼル達を一瞥した。
「初めまして。私の名はフェリシア・エルクラフト。鍛冶師をしております。貴方達は?」
「カイゼル・セグナムです」
「タリム・ノーグです」
突然の展開について行けず茫然としていたカイゼル達は、目の前の女性──フェリシアの言葉を受けて我に返ると、戸惑いながらも名を名乗った。
「カイゼルさんにタリムさんですね。まずは手荒な対応をしたことをお詫びします。このブレイガードは私の僕。私が眠っている間、鍛冶場に侵入してきた者を排除するように命令しておいたのです」
フェリシアがそう言うと、ブレイガードは立ち上がり深々と頭を下げた。
「さて‥‥お二方はどの様なご用件でこの場所へ?」
「ここへは調査に来たのですが‥‥」
「調査ですか?」
タリムの言葉に、フェリシアは不思議そうに首を傾げた。
「なるほど、そうでしたか」
カイゼル達がここへ来た理由を詳しく説明すると、フェリシアはそう呟いた。
「ブレイガード、私は二百年眠っていたと言っていましたね?その間、このお二方以外に誰かがここを訪れたことはありましたか?」
「イエ、一度モ御座イマセン。百年程前に何者カガ扉ノ前マデ来タ事ハアリマシタガ、扉ノ開ケ方ガ分カラナカッタヨウデ暫クシテ立チ去リマシタ」
ブレイガードの答えに、フェリシアは深いため息をついた。
「そうですか。誰からも忘れ去られて二百年‥‥自ら望んだ事とはいえ、少し寂しいですね」
「その事なのですが、あなたは何故二百年もの間眠っていたのですか?それにこの剣から魔力が放出された途端に、今まで開かなかった扉が開きました。この剣はあなたに関係がある物なのですか?」
カイゼルの矢継ぎ早な質問に、フェリシアはしばし沈黙した後口を開いた。
「‥‥そうですね。お二方にはお話ししましょう」
そう言うとフェリシアは世界蛇を指差した。
「その魔剣、世界蛇は私が鍛えた剣、二百年前の私が鍛えた最後の一振りなのです」