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剣戟乱舞

甲冑と対峙したカイゼルは徐々に間合いを詰めていく。

 

(さっきの禍々しい雰囲気に声‥‥あの甲冑は恐らく人間じゃないな)

 

人間でないとするならば、どんな攻撃をしてくるか分からない。それ故にカイゼルは、無闇に攻撃をするわけにはいかなかった。

 

「来ヌノカ?ナラバ、此方カラ行クゾ!」

 

先に仕掛けたのは甲冑の方だった。低い姿勢から一気に間合いを詰める。

 

(速い!)

 

避け難い下段の一撃を、カイゼルは何とか受け止めた。間髪入れずに襲いかかる二撃目三撃目を、カイゼルは後ろに飛んで避ける。

 

(何て速い斬撃だ‥‥しかも一撃一撃が重い!)

 

甲冑の技量にカイゼルは驚愕していた。鈍重そうな見た目に反して動きも速い。

 

「ドウシタ?マサカソノ程度ノ腕デハアルマイ」

 

そう言いながら甲冑は悠然と構えている。カイゼルは一つ息を吐くと甲冑に切りかかった。

 

「甘イ」

 

カイゼルの一撃、それを甲冑は剣ではなく、信じられないことに拳を剣の腹に叩きつけて弾いた。同時に繰り出された甲冑の突きがカイゼルに迫る。

 

「何っ!?」

 

バランスを崩されたカイゼルは剣を弾かれた勢いをそのまま利用し、際どいタイミングで身を捻ってそれを避けた。

 

「フム、少シハ出来ルヨウダナ」

 

相変わらず耳障りな声だが、カイゼルはその声に先程とは違う感情が含まれていることに気づいた。それは歓喜だ。もし甲冑に表情があれば、その顔は笑っているのかもしれない。

 

「サア、次ハ私ノ番ダ!」

 

甲冑が再び間合いを詰め、剣を振るう。カイゼルはそれを剣で受け流した。ヒューとの戦闘で見せた受け流しだ。今度は甲冑のバランスが崩れる。

 

「ホウ?」

 

嬉しそうにそう呟く甲冑に、カイゼルはすかさず剣を振るう。

 

「これでどうだ!」

「マダマダ!」

 

バランスを崩した不自然な体制のままで、甲冑はカイゼルの剣を受けきった。

 

「面白イ。私トココマデ戦エル者ハ久シブリダ」

 

嬉しそうに──本当に嬉しそうに甲冑はそう言った。この戦いを心底楽しんでいるかのように。

 

「サア強キ者ヨ、カカッテ来ルガ良イ!」

「言われなくとも!」

 

カイゼルと甲冑は同時に地を蹴った。互いに繰り出す剣を避け、受け止め、弾く。幾度となく剣が交わり火花を散らす。初めは確かめるような速度で、そして剣が打ち合わせられる度にそれは速さを増していく。

 

「す‥‥凄い‥‥」

 

その戦闘を離れた場所で見ていたタリムは思わずそう呟いていた。命を賭けた斬り合い。しかしその剣筋はどちらも美しく華麗で、まるで剣舞を見ているかのようだ。いつしかタリムは呼吸すら忘れて二人の戦いに見入っていた。そしてタリムが見つめる中、二人の戦いは斬撃の応酬から鍔迫り合いへともつれ込んでいた。

 

「愉快ダ。実二愉快ダ!貴殿程ノ使イ手ニハ、今マデ会ッタ事ガ無イ!」

 

鍔迫り合いの最中、甲冑は剣越しにそう言った。

 

「私も貴方程の使い手には初めて会いましたよ!」

 

カイゼルもそう言葉を返す。その顔には笑みが浮かんでいた。いつしかカイゼルは、この戦いを楽しんでいた。剣に生きる者として、強者と戦える喜びを感じていたのだ。

 

「フンッ!」

「ハアッ!」

 

交わっていた刃が離れ、二人はそれぞれ後方へ飛び退いた。距離を空け、互いに出方をうかがう。場を張り詰めた空気が支配し、どちらも構えたまま微動だにしない。音さえしない緊張した空間の中、先に静寂を破ったのは甲冑だった。床を踏み抜かんばかりに踏み込むと、瞬く間にカイゼルに迫って来る。カイゼルも同時に駆け出す。そして二人の剣が打ち合わさろうとした刹那、

 

「双方剣を引け!」

 

戦いの場に、凛とした美しい声が響きわたった。

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