調査開始
書き方が迷走しております(*_*;
変な文章になっていないか心配‥‥
翌朝、カイゼルは七の刻よりかなり早めにタリムの家に着いていた。扉をノックするとタリムが姿を見せる。
「おはようございます。何か手伝えるかと思って早めに来たのですが」
「これはカイゼルさん、お心遣い感謝します。準備は昨日の内に済ませてしまいましたので、後は荷物を馬車に載せるだけです。手伝っていただけますか?」
そう話すタリムの後ろに、今日の調査で使う荷物がまとめられているのが見えた。
「もちろんです。これを馬車に載せれば良いんですね」
そう言いながらカイゼルは用意された荷物に近寄る。その荷物の内の一つがカイゼルの目を引いた。
「これは、松明ですか」
それは一抱えはあろうかという松明の束だった。カイゼルはそれに軽く触れる。
「凄い数ですね」
「今回は地下の調査ですからね。かさばるのですが何本必要になるか分からないので、家にあるものをかき集めたんです」
カイゼルは再び松明の束に視線を移す。
(昨日ディーナに教わったライトの魔法があれば、松明は数本で良いかもしれないな)
そこまで考えたカイゼルは、タリムに提案してみることにした。
「実は昨日身内の者に照明魔法を教わったのですが、明かりはそれで賄えませんか?」
「本当ですか!?それは助かります。何しろ場所を取るものですから」
やはりタリムも松明がかさばる荷物になることに頭を悩ませていたのだろう。カイゼルの提案に嬉々として松明の束を脇に避ける。
「あ、タリムさん。万が一魔法が使えなくなった時のために松明は二、三本持っていきましょう」
「それもそうですね」
カイゼルの言葉に同意したタリムは松明の束から三本だけ抜き出すと、それを荷物の中に戻した。
「それでは荷物を積んで出発しましょう」
「はい」
二人は手分けして馬車に荷物を積み込むと、魔鎚の神殿に向けて出発した。
「さあ、着きましたよカイゼルさん」
「これが魔鎚の神殿ですか‥‥」
グレイセルの町を出発して数刻後、二人を乗せた馬車は魔鎚の神殿の前にあった。
「確かに神殿の名に相応しい遺跡ですね」
カイゼルは馬車を降り、遺跡を見上げる。魔鎚の神殿はカイゼルが想像していたよりも大きなものだった。長年風雨に晒され、手入れをする者もいなくなった遺跡は所々崩れてはいる。しかし崩れ落ちずに残った壁や柱に彫り込まれた装飾は実に美麗であり、遺跡特有の重厚感と相まってまさに神殿と言っても差し支えないほどの神秘的な雰囲気を放っていた。
「隠し通路はこの遺跡の一番奥の部屋で見つかりました。早速そちらに向かいましょう」
遺跡を見上げていたカイゼルに声をかけ、タリムは馬車から大きな背負い袋を降ろすとそれを背負った。中には調査で使う道具類が入っているため袋はかなりの重量があるはずなのだが、タリムは苦もなく袋を背負っている。
「重くないですか?良ければ私が背負いますが」
カイゼルはそう申し出る。
「慣れていますから大丈夫ですよ。それに護衛役のあなたに荷物を持たせては、いざという時困るでしょう?」
申し出に笑顔でそう答えると、タリムは遺跡へと入っていく。カイゼルもタリムの隣で辺りを警戒しながら遺跡に足を踏み入れた。
「隠し通路のある部屋までは、今までの調査で罠等の危険がないと判明しています。気楽にしていてください」
遺跡の内部に入ってすぐ、タリムがカイゼルにそう声をかけてくる。
「分かりました」
そう言いながらカイゼルは周囲を見回した。遺跡の内部は天井も高く、通路もカイゼルとタリムが並んで歩いても充分な余裕があるほど広い。また、柱や壁には遺跡の外側と同じく美しい彫刻が施され、外壁が崩れ落ちた所から射し込む日の光が実に幻想的だった。
(タリムさんは危険がないと言っていたが、何があるか分からないからな‥‥気を引き締めなくては)
辺りを警戒しつつしばらく通路を道なりに歩いていくと、行く手に一際大きな金属製の扉が姿を現した。
「ここが隠し通路のある部屋です」
タリムが扉を開ける。部屋の中は殺風景だった。奥の壁に簡素な石造りの棚があり、その横にタリムの家で見た件のレリーフが壁に埋め込まれている。
「あのレリーフを写し取っている時に、偶然隠し通路を見つけたんです」
そう言うとタリムはレリーフの前に立ち、レリーフを壁に押し込んだ。すると歯車が回るような音と共に、隣の棚がゆっくりと床に沈み始める。見る間に棚は完全に姿を消し、その後ろに地下へと伸びる階段が現れた。
「ここから先はまだ誰も足を踏み入れていません。何があるか分からないので気をつけてください」
タリムの忠告を聞きながら、カイゼルは地下への入り口を慎重に調べ始めた。
「罠はなさそうだが、一応ディテクトを使っておくか‥‥」
カイゼルは魔力を練ると、ディテクトを発動させた。
「反応なし。罠は仕掛けられていないな。タリムさん、入り口付近に罠はないようなので先に進みます。準備は良いですか?」
「はい、こちらはいつでも構いません」
少し緊張気味なタリムの言葉を背後に聞きながら、カイゼルは階段の先に目を凝らした。
「少し暗いな‥‥ライトを使うか」
ここまで遺跡の中は明かりがなかったが、所々外壁が崩壊し外の日光が射し込んでいたためそれほど暗くはなかった。だが隠し通路の先は暗闇に閉ざされ、視界が悪い。カイゼルはライトの魔法を使うため魔力を練り始めた。
──我が道を閉ざす闇を退けよ──
「ライト」
魔法が発動すると、カイゼルの手のひらに拳大の光の玉が発生した。玉は手のひらを離れ、強い光を放ちながらカイゼルの頭上をフワフワと漂う。ライトの魔法で照らし出された通路の先は深く、先が見えない。
「かなり長い階段ですね。慎重に行きましょう」
「はい」
頷き合うと、二人はゆっくりと地下への階段を進み始めた。