ディーナの ディーナによる カイゼルのための魔法講座 その1
相変わらずの拙い文章ですが、お気に入りが80件超えました。ただただ感謝です。
「お帰りなさいませ、カイゼル様」
「ただいま、ディーナ」
『紅龍の翼亭』に戻ったカイゼルは、宿の外まで出迎えに出ていたディーナと共に部屋に戻った。
「依頼者の方から依頼の詳細は聞けたのですか?」
「ああ、これからディーナにも話すよ」
カイゼルはベッドに腰掛け、ディーナも話を聞くために、部屋に置かれた椅子に座った。
「それでは明日、その遺跡の地下部分を調査するということなのですね」
カイゼルが一通り話し終わると、ディーナがそう聞いてくる。
「ああ。調査に必要な機材や食料なんかも全部向こうで用意してくれるそうだよ」
「そうですか‥‥ところでカイゼル様、一つお尋ねしたいのですがカイゼル様は罠の発見や解除は経験がおありなのですか?遺跡には侵入者を撃退する罠があると思うのですが」
ディーナの問いにカイゼルは頷いた。
「転生前私が仕えていた国の周りには遺跡が幾つもあってね。学者達と良く調査に入っていたから、その手の罠の発見や解除は粗方覚えてしまったよ」
「そうでしたか。それならば問題ありませんね。ただ、用心に越したことはありませんので、罠を察知できる魔法をお教えしておきます。カイゼル様はまだ魔法を使ったことはございませんでしたね?」
「ああ」
「ではまず魔力を練るところから始めましょう」
そう言うとディーナは席を立った。カイゼルも同様に立ち上がる。
「魔法には様々な種類がありますが、どの魔法も発動前には体内の魔力を集め、圧縮し、精製しなければなりません。それが魔力を練るということです」
説明しながらディーナは右手を広げた。その手のひらに、光輝く魔力が集まっていくのが見て取れる。
「イメージとしては意識を集中して身体の奥にある魔力を感じそれを一所に集めていけば良いのですが、魔力の練り方を口頭で説明するのは非常に難しいのです。まずは実際にやってみましょう」
ディーナの言葉に従い、カイゼルは瞳を閉じて意識を集中させる。
(こうか?)
自分の内にあるはずの魔力に意識を巡らせていくと、身体の奥底にある力を感じ取ることができた。これが魔力なのだろうと見当をつける。
(これを一所に集めるのか)
カイゼルは湖から水路を作るように、奥底にある魔力から手のひらまで魔力を流す道を思い浮かべながら魔力を伝わせていく。
「できた‥‥のか?」
手のひらまで魔力が届いたのを感じてカイゼルが目を開けると、先にディーナがやって見せたのと同様に、カイゼルの手のひらに魔力が集まっていた。
「お見事です、カイゼル様」
どうやら成功のようだ。カイゼルはホッと胸をなで下ろした。
「初めて魔法を使う人のほとんどがこの魔力を練るところでつまずくのですが、カイゼル様には無用の心配でしたね」
そう言うとディーナは笑顔を見せた。
「これが、私の魔力‥‥」
カイゼルは自分の手に集まった魔力を見る。それは淡く輝きながら球体を形成し、揺らめいていた。