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魔鎚の神殿

作中の七の刻は現代の午前7時とお考えください。本作の世界は現代と同じで24時間で1日となっています。

翌朝、ディーナを宿に残したカイゼルは依頼者の家の前にいた。昨日エレンから受け取った紙に目をやり、この家で間違いないことを確認したカイゼルが扉をノックする。

 

「はい、どなたでしょうか?」

「ギルドの依頼を受けて来たのですが」

「し、少々お待ちください!!」

 

扉の向こうから慌ただしい足音と、何かをひっくり返したらしいけたたましい音が聞こえてくる。

 

「お、お待たせしました。私が依頼者のタリム・ノーグです」

 

少しして開かれた扉から、眼鏡をかけた優しい顔の青年が顔を出した。

 

「カイゼル・セグナムです。本日は調査について詳細をうかがいに参りました」

「これはご丁寧に。さあ、中へどうぞ」

 

タリムに促されカイゼルは家の中に入った。

 

(これは‥‥凄まじいな‥‥)

 

家の中は足の踏み場がないくらいに散乱した書類や資料、積み上げられた書籍で溢れかえっていた。

 

「いやお恥ずかしい。整理整頓は不得意でして。とりあえずこちらへどうぞ」

 

辛うじて空いたスペースに置かれた応接セットに二人は向かい合わせで座る。

 

「改めて自己紹介を。私はタリム・ノーグです。学者をしております。まずはお礼を言わなければなりませんね。調査依頼、引き受けていただいてありがとうございます」

「いえ、こちらも仕事ですので」

「助かりました。なかなか引き受けてくださる方がいなかったので‥‥ああ、こんな話をしていても先に進みませんね。本題に入らさせていただきます」

 

そう言うとタリムは一枚の紙を机に広げた。

 

「今回調査に入る遺跡は、グレイセルの町から東に進んだ所にあります。我々は『魔鎚の神殿』と呼んでいる遺跡です」

「魔鎚‥‥ですか。変わった名ですね」

「遺跡から見つかったレリーフから名前がつきました。それを写し取ったものがこれです」

 

タリムが机に広げた紙を指差した。紙には角の生えた髪の長い人物がハンマーのようなものを手にし、剣を叩いている場面が描かれている。

 

「これは‥‥鍛冶をしている場面ですかね?」

 

レリーフの模写を眺め、カイゼルはそう口にした。確かにハンマーで剣を鍛えている場面にも見える。

 

「我々もそう考えています。おそらく遺跡は遥か昔、魔族の鍛冶場として使用されていたのではないかと」

「なるほど。魔族の鍛冶場だから『魔鎚の神殿』ですか」

「はい。ですが遺跡からはその仮説を裏付ける遺物が何一つ出てこないのです。炉の跡はおろか、ハンマー一つすら発見できませんでした。それが最近になって、遺跡の地下に通じる隠し通路が発見されたのです」

「では今回の調査は地下を?」

「はい。通路の先に何があるのか見当もつきませんので、冒険者ギルドに依頼を出しました。遺跡が魔物の巣窟になっていることも珍しくありませんので、カイゼルさんには護衛をお願いしたいのです」

「分かりました。遺跡に入るのは私も含めて何人ですか?」

 

カイゼルが尋ねる。人数が多いなら、一人では護衛しきれない恐れがあるからだ。

 

「私とカイゼルさんの二人だけです‥‥」

「二人だけ‥‥ですか?」

 

人数の少なさにカイゼルは驚いていた。

 

「遺跡が発見された当初は調査する学者仲間ももっと沢山いたのですが、遺跡から何も発見できないと分かると一人、また一人と調査から手を引いてしましまして‥‥今では戦鎚の神殿を調査しているのは私だけになってしまいました」

 

そう言いながら、タリムは少し寂しげに笑った。

 

「では、隠し通路を見つけたのもタリムさんお一人で?」

「近隣の村から作業員として何人か雇った事もありましたが、基本は私だけですね」

「そうだったのですか」

「はい。そういった訳ですので遺跡の調査に入るのはカイゼルさんと私の二人ということになります」

「分かりました。それで調査の日程はどうなっていますか?」

「早速明日から始めたいのですが、大丈夫でしょうか。調査に必要な物はこちらで用意してありますので」

「大丈夫です。明日ですね。時間は?」

「そうですね‥‥七の刻に私の家に来てください」

「分かりました。では明日、七の刻に」

「よろしくお願いします」

 

調査の詳細を聞き終えたカイゼルは立ち上がると、タリムの家を後にした。

 



 


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