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ギルドからの試練

辻褄合わない箇所を書き直しました

扉を開けて現れたのは一人の老人だった。いや、ただの老人ではない。少し長めにして後ろで無造作に束ねた髪や長く伸ばした髭は白く、顔には深い皺が刻まれてはいる。しかし、隆々とした筋肉や鋭く光る瞳はどう見ても老人のそれではない。

 

「ギルド長!」

 

受付でカイゼル達の対応をしていた職員が安堵したようにそう口にすると、老人に駆け寄り何が起きたのか説明している。どうやらあの老人がこのギルドの責任者のようだ。

 

「また貴様達か‥‥次に問題を起こしたらギルドから除名すると言っておいたはずだぞ?」

 

騒ぎについて職員から報告を受けたギルド長の顔が険しさを増し、男達を睨みつける。どうやらカイゼル達にちょっかいをかけてきた男達は、これまでも度々問題を起こしているようだ。

 

「う‥‥」

 

ギルド長の迫力に負けたのか、男達は何も言い返さなかった。

 

「で、あんたが冒険者の登録に来た人かい?」

 

何も言い返せない男達に興味を無くしたのか、ギルド長の視線はカイゼル達に移った。品定めをするかのようにカイゼルを眺めると、ギルド長は何か思いついたのかニヤリと笑う。

 

「おい貴様達。本来ならこの場で即刻除名処分にするところだが、チャンスをやろう。俺の出す条件を満たせば今回の騒ぎは不問にしてやる。どうだ?」

「本当か!?ありがてぇ!何をすればいいんだ?」

 

除名処分を覚悟していた男達は、ギルド長の提案に歓喜した。

 

「難しいことじゃねえよ」

 

そう言うとギルド長はカイゼルを指差した。

 

「今からそいつと剣で勝負しな。誰か一人でもそいつに勝てれば条件クリアだ」

 

その提案に周囲の冒険者達からどよめきの声が漏れる。ギルド長はそんなどよめきが静まるのを待って、カイゼルへと向き直った。

 

「悪いがあんたを試させてもらう」

「試す‥‥ですか?」

 

カイゼルの問いに、ギルド長はまじめな顔で頷いた。 

 

「冒険者ってのは危険な仕事だ。生半可な腕じゃあっと言う間にあの世行きさ。だからこれはあんたの腕を確かめる試験だと思ってくれ。もしあんたがそいつらを倒せたら登録を認めよう。ついでに俺から報酬も出す。やるかい?」

「分かりました。やりましょう」

 

カイゼルが提案を承諾したことで、再び周囲からどよめきの声があがった。

 

「決まりだな。ここは狭いし業務の邪魔だ。場所を変えるぜ。ついて来な」

 

そう言いながらギルドの外へ向かうギルド長。その後を追ってカイゼル達は外へ出た。

  

 

 

 

 

 

 

「ここで‥‥試合を?」

 

カイゼルは連れてこられた場所を見渡して困惑の表情を浮かべた。それもそのはず、着いた場所は町の中心に位置する広場だったからだ。

 

「ちょっと待ってろ。今広場の使用許可を取りに行ってるからな」

 

そう説明するギルド長の表情はふざけている様子もない。どうやら本当にこの広場で試合をするようだ。使用許可が降りるのを待つ間に、カイゼル達の周りにはギルドからついて来た冒険者や、何事かと集まってきた野次馬達の人垣ができていた。

 

「ギルド長、許可が降りました」

 

しばらく待っていると一人のギルド職員が紙を手に走って来る。ギルド長はそれを受け取ると軽く目を通した。

 

「よし、許可は降りた。試合を始めるぞ」

 

そう言いながらギルド長は腰に提げていた二振りの剣を抜き、カイゼルとヒューに渡した。

 

「殺し合いをするわけではないからな。試合はこの剣を使ってもらうぜ」

 

カイゼルは剣を受け取る。何の変哲もない両刃の長剣だが、刃を潰して切れなくしてあるようだ。

 

「制限時間はない。どちらかが戦闘不能になるか、降伏すれば試合終了だ。いいな?」

 

ギルド長の説明に、カイゼルとヒューは黙って頷いた。

 

「では、始め!」

 

試合開始と同時に、ヒューがこちらに突進してくる。

 

「フンッ!」

 

繰り出された横凪ぎの一撃。カイゼルはそれを剣で受ける。

 

(重い!?)

 

予想よりも強い衝撃に、カイゼルはとっさに後ろへ飛んで体制を立て直した。

 

(そうか、転生前との体格の差か‥‥)

 

転生前の身体ならば押し負けることはなかったはずだが、今のカイゼルの身体は転生前よりも小柄だ。筋肉の量も減っている。それを考慮していなかったのだ。

 

「その程度かよ!まだまだ行くぜ!」

 

力で勝っていると分かり、ヒューが再び突進してくる。だがそれを見て、カイゼルは不敵に笑った。

 

「力だけでは勝てないよ」

 

ヒューの一撃をカイゼルは、先程と同じように剣で受ける。だが今度は真っ正面から受け止めるのではない。相手の力を殺さず、巧みな重心移動と剣捌きで、相手の力を利用しながら受け流して見せたのだ。


「ちくしょう!どうなってやがるんだ!?」

 

何度ヒューが打ち込んでも、彼の剣はカイゼルを避けるようにそらされてしまう。まるで流水に切りつけているかのような手応えのなさにヒューの顔に焦りの色が浮かび始めた。

 

「クソッ!当たりやがれ!」

 

そう叫びながらヒューが放った大振りの一撃。それによって生じた隙を、カイゼルは見逃さなかった。

 

「ふっ!」

 

剣を逆手に持ち替えると同時に、短く息を吐きながら一足飛びでヒューの懐に踏み込む。その勢いのまま、カイゼルはヒューの鳩尾に剣の柄尻を突き入れた。

 

「カハッ!」

 

踏み込みのスピードと腰の捻りも加えた重い一撃が鳩尾にめり込み、ヒューは短い呻き声をあげながら地面に崩れ落ちた。白目を剥き、完全に気絶しているようだ。

 

「それまで!」

 

ギルド長の声に、一拍遅れて周りから歓声があがる。歓声に包まれながら、カイゼルは残ったヒューの手下達に目をやった。

 

「まずは一人。さあ、次は誰ですか?」

 

カイゼルの視線にたじろいだ男達は、

 

「お前が行けよ‥‥」

「いやお前が‥‥」

 

と、次に誰が試合をするかで揉めているようだったが、しばらくして互いに頷き合うと剣を抜いた。刃を潰した剣ではない、自分達の腰の剣をだ。

 

「その剣を使うのはルール違反ですよ」

 

呆れたようにカイゼルが忠告するが、男達は聞き入れなかった。

 

「うるせえ!こうなりゃもう試合なんてどうでもいいんだよ!テメエをぶっ殺してやる!」

 

そう叫ぶと男達はこちらに襲いかかって来た。

 

「ルール違反の上に一斉にかかって来るとは‥‥救いようのない奴らだな。少々痛い目を見てもらうか」

 

襲いかかって来る男達に慌てることなく、カイゼルは剣を構え直した。

 

 


 



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