69 ジオ国の町へ
<ジリー>
-ジオ国-
「ジリーさま、お待たせいたしました。」
アルは、怪我人の治療が終り、患者が出て行ったのを確認して私に言いました。
「宰相たち三人だけど、疲労と食事が問題ね。
それで、夜に食事を用意して持って行くのと、健康状態を見て欲しい。」
「わかりました。消化の良い食事を手配しておきます。健康状態はどちらで?」
「牢へ一緒に行きましょう。2~3日牢にいる予定だそうなので。」
「そうですか。では、ジリーさま、夜まではどうされるのですか?」
「この国の城下は、行ったことがないので散策してきます。昼食と夕食もね。」
「そうですか、ジーンさまもご一緒ですね。ジーンさま、ジリーさまをよろしくお願いします。」
ジーンがうなずきました。
“皆、転移するからそばに来てね。”
町外れに転移しました。
「オプス、リュミ、見えなくなる魔法の解除お願いね。
フラムは、引き続きお願い。ジーンも引き続き魔力を消していてね。
さぁ、皆で遊びに行きましょう。」
転移先が城下町からかなり離れた場所だったので、お小遣いになる薬草を収集してから
城下町に向かって歩き始めました。
ちょっと離れすぎの場所だったけど、私達二人ですから問題なしです。
魔術を使ってスピードアップして歩けばあっという間に到着。
薬草を薬屋さんに持って行く。
「いらっしゃい。お嬢ちゃんたちお母さんのお使いかな。」
人の良さそうなおっちゃんです。
「違うよ。これを売りに来たの。」ちょっと子供っぽく返事をしてみました。
「おおっ、お嬢ちゃんたち、えらいな。なかなか状態がいいよ。
よ~し、ちょっとだけおまけしてあげよう。」
「ありがとう、おにいちゃん。」お約束ですよね?
ふふっ、昼食と夕食代にプラスお土産代までゲット。
お腹が空いたのでご飯ご飯と。あちこちから良い匂いが漂ってきます。
屋台があるみたいなので、そちらで済ませるのもありですね。
「ジーン、お店と屋台どっちが良い?」
「どちらでも。」
「じゃあ、昼は屋台で食べ歩きしましょう。」
「うむ。」
串焼きもどきがおいしそう~。ジーンの分二つと私の一つ購入。
おいしい~。ジーンの食べるスピードが早いわ。次は何にしようかしら。
じゃがバターもどきを発見。これも三つ。うん、満足。
飲み物とデザート代わりにお菓子を食べつつ、散策。
思っていたより人が多いわね。
ここにいる人達ってお城の様子知っているのかしら?
ちょっと聞いてみようかしら?
「お姉さん、そのピンクの頂戴。」飴かなぁ?
「はい、どうぞ。」
「お姉さん、結界の色が変わったよね。何で?」
「そうね、私は知らないけど。
お城から明日の午後広場に集まるようにとおふれがあったわね。
そこで聞けるんじゃないかしら。」
「そういえば。お姉さんありがとう。」怪しまれないうちに離れました。
へぇ、王の交代を明日の午後に発表予定かな?
明日の朝、お父様と合流するから伝えなきゃ。
あても無くあちこちと散策をしていたら、見たことのある人物が前方から歩いてきました。
ギルと呼ばれていた人と一緒にいた人の二人です。見回り?かな。
どうしようかな?近づくべきか近づかないべきか。
暇だから後をどうどうとつけることにしましょう。
“ジーン、この二人の後をついて行くよ。”
“うむ。”
見回りなら問題ないでしょう。
ふ~ん、この二人もてるみたいですね。常に女性から声を掛けられています。
さすがに仕事中だからか手を振るだけですが。
あら?私達の後をつける人が数人いますね。
へぇ、一応優秀なのかしら?前の二人も気づいた感じです。
通りから一本道を外れて、人気のない場所の方へ進んでいます。
私達もついていってますよ。おもしろそうだもの。
前の二人が、人のいない広い場所で足を止めました。
後から6名ほどのザ・悪者が登場しました。
間に私達二人、・・・目に入っているのかなぁ。
か、入っているけどお互いに相手側の仲間と思っているか。子供二人ありえないか。
ちょっと横にどいていましょう。ジーンは後をついてきている。
「俺たちに何か用か?」ギル。
「死んでもらう。」悪者。ありきたりだなぁ、で負けるんだろう、お約束よね。
嘘、ありえない、ギル弱い・・・。もう一人は、まぁまぁだけど。
ギルは、もう一人の後で守られているって。このままだと時間の問題かなぁ。
しかたがないなぁ、はい、悪者皆拘束と。ついでにリーダー以外は眠ってもらいましょう。
でも、ギルって確か戦うのが専門って、アルに参謀を押し付けていたけど?
これで戦うの専門って言えるのか?アルよりは強いだけ?
「キース、何かしたのか?」ギルが、もう一人に聞いています。
「いえ、勝手に。ギルは違うよな。」
「まぁ、いいか。おい、誰に頼まれた。」ギルが悪者へ。
「知るか、金をもらって頼まれただけだ。」あっさり白状しています。悪あがきしてほしいです。
あんなことやそんなことをしてほしいかも。
「おーい、そこの嬢ちゃんたち。そんなわくわくした目で見られても何もないよ。」キース。
「そこのおじちゃん弱いね。」ふふん。事実を言ってみました。
「ぐっ。」ギル。
「騎士さまって強いと思っていたんだけど。」私。
「嬢ちゃん、このおじちゃん弱く見えたかもしれないけど、正騎士では一番だよ。」
「?」一番弱い?
「今朝、ちょっとあってね。魔術にかかっているんだよ。」キース、子供にも丁寧ね。
あら、本当にそうね。気がつかなかったわ。解除しましょう。
「今もそうなの?」ギルへ聞いてみる。
「おおっ?魔術が解けている。ひょっとして嬢ちゃんか?」ニーって笑ってみる。
「ありがとうな。もしかして、これもか。」と悪者を見る。
親指立ててみる。ちょっとやってみたかったから。
「嬢ちゃん、どこの子だい。」キース。
「う~んと、今の保護者はアル!」一応間違ってないわよね。
そうそう邪魔な悪者リーダーも眠らせておきました。
「げっ。まさかな。同名なだけさっ。」ギル。
「お城で医者をしているアルフォードのことか?」キース。
名前、アルじゃなかったんだ。
「うん。」
ギルが、頭を抱えてしゃがみこみ、キースは、爆笑。
「これからどうするんだ?」とキースが聞いてきました。
「え~っと、夕食を取ってから、お城のアルのとこに行くの。」
「じゃあ、俺たちも食事するから、一緒にお城も行こうか?」キース。
「うん。」
「おい、キース。また、アルに馬鹿にされるのか、俺。」ギル。
「相変わらず仲がいいなぁ。あれはじゃれてるって言うんだ。
お前の反応が面白いから、からかわれているだけさ。
そんなことより、これどうするんだ。」キース。
「どうせ、犯人は腰巾着さ。
こいつらは何も知らされていないだろう、城の牢に入れても殺されるだろうし、どうするか。」
ああ、あれか、口封じ。
「ひとまず、騎士の詰所の牢に入れておくか。」キース。
「そうするか。誰か呼ぶか。」ギル。
しばらくすると騎士らしき人が4名こちらにきました。
「隊長、お呼びですか?」騎士の一人が、ギルに敬礼して話かけました。
「ああ、俺を襲ってきた。牢に放り込んでおけ。それから城への連絡は不要だ。」
「了解しました。」
悪者が引っ立てられました。
「またせたな。何か食べたいものでもあるか?」立ち直ったギルが聞いてきました。
「お勧めの店でいいよ~。」
ギルとキースのお勧めのお店へ。
この世界の普通の食堂で、いかついおっさんが店長でした。
ファミリー向けではなく、働く人のためのお店で、私たち二人はちょっと場違いって感じかな。
味は、お勧めだけあっておいしく、話すこともなく、食べるのに集中させてもらいました。
皆が食べ終わって、自分とジーンの食事代をギルに渡そうとしたら
「おいおい、子供に支払わせる訳ないだろう、大人しく奢られておきな。」
あまり年齢差ないのですが、それに私の方が稼ごうと思ったら高収入になるんだけど。
「ありがとう。」ひとまずお礼ですね。
「さて、お城へ行こうか。」キース。
「そういえば、名前はなんていうんだ?」ギル。
「こっちがジーンで、私がジリー。」髪と瞳が違うけど、正体がわかったらすごい。
「俺がギルで、こっちがキースな。」知ってるけど、うなずいておきました。
ちょっとキースが挙動不審者になっていたけど疑われているんだろう。
ギルは、やっぱり気づかず。大丈夫か、隊長!周りが助けなくてはと思っているのかも。
キースはギルのフォロー役だったりして。
次回更新 8月3日0時