60 リーコス奮闘す
<リーコス>
ふぅ、なんだかなぁ、これでグリューネがわかってくれるといいが。
俺と聖は、ほんの短い時間だけど師弟関係なんだよな。
かわいい弟子に罠なんてとんでもないぜ。
表立って反対できない師匠で不甲斐ない。
本当は、グリューネって悪い奴じゃないんだ。
聖をかわいがっていたのも気に入っていたからで、利用するためじゃないはず・・・。
なぜ、ジオ国となると人が変わるのかわからん。
俺もこの国で育ったが、ジオ国にそこまで悪いイメージはない。
絵本については、思うところもあるが。
今回俺が、グリューネの言うがままだったのは、やっぱり信じているからかな。
長年の友人だ、俺が見捨てたら誰もいなくなるだろう?
ジオ国さえ絡まなければ問題ないんだし。
皇太子、元宮廷魔術師長、宮廷魔術師、グリューネ。
高貴な者と宮廷の魔術師が、ジオ国に良い印象を持っていない?
いや、憎んでいるか。なんでだろうか?
共通するのもは、城?神殿?いつからだっけ?
まぁ、せっかくもらった機会だ、グリューネたちにジオ国について説明しよっか。
海の婚約者の魔族の嬢ちゃんよりは、信用してもらえるだろう。
詳しく知っているわけじゃないが、嬢ちゃんの話に間違いないことくらいは知ってる。
さて、会議室へ皆に集まってもらった。
「まず、魔族の嬢ちゃんが言ったことは間違いないからな。
もちろん、すべてが完璧ですばらしい国という訳ではない。
良いやつも悪いやつもいるが、魔王は民のために政治を行っている。
他の国へ戦を仕掛けてもいない。」
「なぜ、そんなことが言えるのだ?」偽勇者か。
「おいおい、俺の立場というか仕事知っているだろう?
ギルドマスターだぞ。他の国の情報を一番知らないといけないんだが。
ギルドマスターの会合もあるから話は聞こえてくる。
特にきな臭い話には注意している。現在要注意の国を挙げるならこの国だな。」
「リーコス、おまえはジオ国が憎くないのか?」グリューネ・・・。
「なぜ憎いのか、それがわからない。なぜそう思っているんだ?
他国の中の一つとしての認識しか普通ないぞ。
ああ、見た目は悪いか?それを気にする奴もいるかな。」
「子供のころ友達がジオ国へ行って戻ってこない。」
「はぁ?家族で他の国に引っ越したら戻ってくるわけないだろ?
ジオ国じゃなくても・・・。」
「理由はわからないが、憎い。」元勇者。
「同じだな。」元魔術師長。
「・・・わからないが憎く感じる。」皇太子。
「なんか、ジオ国を憎むように操られている気がしないか?
いつからそうなったかわかるか?」
「前王は、ジオ国について何も言われなかった。
亡くなってからだと思う。」グリューネ。
「殿下はいかがですか?」
「おじい様がいらっしゃる頃は、ジオ国へ行ってみたいと言った記憶がある。
そのこと自体を今まで思い出せなかった。記憶に違和感を感じる。」
「城か神殿で何かされたことになる。グリューネ、そんな魔術あるのか?」
「魔術では、私達相手に何もできんだろう。薬草と言葉を幾度と繰り返すかか?」
「城か神殿となると、多数にできる神殿か。」皇太子。
「私は、前王が亡くなってから、数ヶ月で城から出た。その間でか。
となると、前王の葬儀とその後の祈りが怪しいか?」
「それは、王族と魔術師で行われた祈りのことですか?
確か、亡くなった王がお好きな香を焚いてましたよね。」偽勇者。
「そうだった、話の内容とかは全く記憶していないな。」元魔術師長。
おうおう、完全に誰かに操られているってことじゃないか。
いったい誰が何のために?