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扉を開け廊下を右手に折れて進むと中庭のようなところへ出ました。
真ん中に噴水があり、その周りが通路でバラの蔓を使ったアーチとベンチが絶妙
なバランスで設置してあり、さらにその周りに高めの木々があってまさにヨーロッパ
の庭園という感じです。
花の名前は正確にはわかりませんが、日本で良く見る豪華なバラではなくて一重,
半八重のバラのようです。
香りもダマスクよりではなくブルーとかティに近い気がします。
まだ、早い時間なのでしょうか、人が見えませんのでベンチに腰かけてのんびり
させていただきましょう。ぼーっと噴水をみていると中途半端な大きさの虫?が
飛んでいます。虫嫌いな私としては、目に入れたくないんですが、ふわふわ飛んで
いるとつい見てしまいます。虫にしては、手のひらサイズでかなり大きい?ふわ
ふわ?は変ですよね。色は、ブルーで透明な羽。虫だなんて失礼かな?きれいです。
あっ、グリーンのも飛んできました♪一緒に遊んでいるみたいですね。
あら、こっちの方へ飛んできました。
数十メートルくらいになって、目を見張りましたよ。だって妖精みたいですもん。
ふわふわの髪にくりくりのお目目!ワンピースみたいのを着ててかわいいんです。
ぎゅっと抱きしめたいです。
うそ~、ファンタジーみたい!いや、召喚されたんだから最初からファンタジー
と自分につっこんでる時点でパニックに陥っていますね。
「ファンタジーってなに?おいしいの?」
「ファンタジーっていうのはね、魔法とか異世界とか空想の世界の物語ですよ。
おいしい?って質問はお約束?」
誰か何か言いました?ブルーの子が言った?
私は、なぜファンタジーについて説明しているんでしょうか?
独り言言う危ない人?
目の前で妖精さんが手を振ってます。現実に耐えれず妄想の世界に突入したよう
です。幸せだからいいんです。かわいい妖精さんと遊びましょう。
「お姉さん、大丈夫?」
「ぼくたちみえてる?」「きこえてるの?」
グリーンの子とブルーの子が心配そうな顔して聞いてきます。
頬をつねっても痛くない!やっぱり夢です。良かったとしましょう。
ちょっと待った。私サンタさんマスクしてるよね。つねっても痛くないよね?
それに嫌なことまで思い出しました。
勇者確認の石・・・素手で触ってない。よくできた手専用のマスクしてました。
もちろん今もしてます。手を見れば年齢ってわかりますので。
もしかしてやっぱり勇者?いやいやここはスルーでいいでしょう。
近づかないようにしましょう。
「「ねぇねぇ、お姉さん(おねえさん)」」
ん?、あっ自分の思考にどっぷりで返事忘れてました。
「ごめんごめん、なあに?見えてるし、聞こえてるよ」
「すご~い、にんげんなのにぼくたちとかいわできるんだ」
「まぁ、お姉さんは、勇者だからねぇ」
ブルーっ子にグリーンっ子がとんでもないこと言ってますよ。
「お姉さん?勇者?老人じゃないの?」
私、老人の姿で勇者?じゃないはず。質問にもなってない言葉が出てしまいました。
妖精さんが答えてくれましたよ。
「変なもんかぶってるよねぇ」
「はじめてみたよ~」
グリーンっ子、ブルーっ子にあっさり言われました。
マスクないんだ。良かったです、これでこのままばれないでいけます。
「何にばれないの?」
グリーンっ子の言葉にびっくり。はい?私言葉に出してました?
「お姉さん、声大きいからよく聞こえるよ」
「うん」
グリーンっ子、ブルーっ子。テレパシーかな?大きいのは動揺した時と考えて
いいのかな。早速、声に出さないでお話してみましょうか。
(遅くなったけど自己紹介するね。日本っていうこの世界と別の世界から来た
黒宮聖と言います。よろしくね)
(聖、よろしくね~。僕たち名前ないから付けて欲しいな)
(よろしく~。ぼくもつけて~)
(うん、いいよ。で、君たちは何の妖精さんになるのかな)
了解したものの、ネーミングセンスないのよね~。
(僕、風だよ)(ぼく、みず)
風といえば又三郎・・・だめ似合ってない。う~ん。
(風の子がヴェントで、水の子がアクアでどうかな?)
(ヴェント!うん、良い名前をありがとう)
(アクア!ありがとう)