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<海>
「聖、ただいま。」
「おかえり。」ベッドにいるけど起きていたんだな。
「こっちは終ったよ。後は、明日の朝に食事を持ってくぐらいかな。」
「心配してたのよ。携帯を鳴らしていいかわからなくて、用意が終ったと連絡できなくて。」
「ごめん。携帯で確認して場所はわかってた。ブランに伝えれば良かったね。」
「そっか、そうだね。ブランたちにお願いするの忘れてた。」
「さて、朝まであまり時間がないけど寝よ。おやすみ。」
とにかく聖とのことは、きりがついてから。
「そうね。おやすみ。」
数分後、寝つき良いよなぁ。
明日の朝、城は大騒ぎだろう。
奴にとって気にくわない人間達が逃げていないんだから。
八つ当たりができて嬉しいのが本音だったりして。
奴のことを考えていると眠れそうなのが不思議だな。
-翌朝-
「海、おはよう。」
「おはよう。」
「食事してから食料の調達でいいの?」
「それでいいかな。食料の調達よりも、ここの食堂で5人分の弁当を作ってもらった方がいいな。」
食堂で食事をして、弁当を5個頼んだ。一度部屋へ戻ってから出がけに受取ることにした。
部屋から転移だと不在を怪しまれるから、町外れからの転移が無難だろう。
「聖とブランはどうする?」
「グリューネさんとリーコスさんが来ているかもしれないから行くわ。」
「行く。」
「じゃあ、そろそろ行くか。」
弁当を受取り、代金の支払いをすませ、町外れから地下室へ転移した。
昨日とは部屋の様子は変わり、部屋が拡張され仕切りの奥にベッドが三つ。
テーブルも大きくなっていた。
そのテーブルに弁当を並べていたら、奥から元勇者のユーチェさんが出てきた。
聖は、飲み物を用意している。昨日、森の家から持ってきたようだ。
「「おはようございます。」」俺と聖の挨拶が重なった。
「おはようございます。」元勇者からの挨拶。
「お弁当を買ってきましたので食べて下さい。
グリューネさんとリーコスさんは、まだのようですね。
いつこちらに合流するかわからないので、一緒に用意しました。」
「君たちは、いったい何者だい?」
「こっちはグリューネさんの弟子で、俺はその従弟です。
今できることもないので、帰ります。昼に食事を持ってきますので。
グリューネさんにもそう伝えてください。もし、移動するならしてもらっても結構ですと。
では、これで失礼します。聖、行こか。」
「いいわよ。」聖の言葉を聞いて町はずれへ転移した。
「聖、元の世界へ戻りたい?」唐突だったかな?
「もちろん、戻りたいわよ。」無理やりだから当然だな。
「じゃあ、グリューネさんたちに会って挨拶をしたら戻るか?」
「えっ、戻れるの?」ああ、聖だけだけどな。
「ああ、ブランたちが手伝ってくれるから、俺の魔法で戻れる。」
「そうなんだ、嬉しい。
この世界のことよくわからないから不安だったし、仕事が気になっていたのよ。
でも、行方不明の間が問題かしら?」
「大丈夫だ。召喚された瞬間に戻すから。もう一度、変装はしろよ。」
「そのくらい大丈夫よ。」
「聖、元の世界に戻ったら結婚しないか?」最後の確認だな。
二人一緒に戻れないから元の世界では無理だが。
もし、結婚してくれるなら、この世界でになる。
「海は、弟なんだから無理よ。」そっか、やっぱり弟か。
真面目に返事をもらえただけ、良しとしないとな。本音としては半々だと・・・。
元の世界に俺は戻れない。ちょうどあきらめられていいかもな。
こちらの世界でハーレム目指すとするか。ははっ、ありえねー。
「昼まで寝てくるから、聖は町をぶらぶらしたら?昼食の時間に起こしにきてくれ。」
「了解。ブラン行こうか?」
聖を見送ってから宿の部屋へ戻った。
ベッドの上でゴロンと寝ころび、聖のことを考えた。姉として。
世話になったよな。まだ、しんみりするのは早いな。寝よ。