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<海>
食堂でこの世界のアルコールとつまみを注文してブランと食べながらぼーっとしてた。
情報収集なんだから、周囲の話を聞きながら。
冒険者や魔術師が大半のせいか、グリューネさんやリーコスさんの名前が出てくる。
聞いている限り、この二人は慕われているようだ。
それと皇太子がいて王に意見したため、牢に捕らわれているそうだ。
あの王ならやりそうだな。一緒に助けて様子をみるのが一番かな。
皇太子も慕われているようだし。
さて、部屋へ戻るか。
“ブラン。部屋へ戻ろうか?”
“わかった。”
部屋には聖がすでに戻っていた。ブランが戻したのかな?
「海、どうだった?」
「グリューネさんやリーコスさんには、皆好意的だぞ。
それと民に人気のある皇太子も牢に捕まっているそうだ。
一緒に助けた方がいいと思う。今晩か明日の深夜に行動を起こそう。
聖はどっちがいい?」
「遅くなっても良いことがないから今晩動かない?
今晩勇者の所へ行ってどうするか、決めるのもありかな?手分けする?」
「ん?そっちは、俺がやるから、聖は元魔術師長の地下がどこか調べて欲しいな。
で、そこに一度行って魔法で結界を発動させといて。そこへ皆を転移させるから。
グリューネさんとリーコスさんは入れるようにな。その後は、この部屋に戻ってて。」
これなら聖は安全だな。精霊たちも一緒だし。
「わかったけど、海は大丈夫?」
「無理しないからいいさ。ダメだと思ったら明日にするから。
今から風呂へ入って寝て、深夜に起きるから。風呂借りるね。
聖は、今動いても問題から。じゃ、行ってくる。」
森の魔女の家にある風呂へ入って戻ったら、聖もブランもいなかった。
さっそく動いているんだな。俺は少し眠ろう。
-深夜-
目が覚めた俺は、聖が帰っていないことを確認した。
居場所が気になるので携帯で見てみた。部屋の一室でブランと一緒にいる。
これなら心配はないな。今の映像で元魔術師長の地下は確認できた。
では、勇者のところへ行くか。居場所は、わからない。
が、俺が前に案内された部屋だろうと推測する。
姿を消して部屋へ魔法で転移した。
黒い髪の人が、部屋で寝ていた。瞳を見るために起こしてみる。
目を開けたが、反応がない。黒い瞳だ。ビンゴ、やっぱり勇者だ。
しかし、魔術で変えられているとわかる。髪もか。
魔術を解いた。茶色の髪と瞳。あと、勇者から甘い香りがする。
噂通りか。薬草で意識を操るのと、禁術とされる傀儡をと二重か。
一応、新しい魔術師長、知識はあるんだな。
勇者の魔術を解いて姿を現し、持ってきた薬草を飲み薬にして無理やり飲ませた。
数分待ったら意識が戻ったようだ。きょろきょろして挙動不審。
「ここはどこだ?」結界を発動させておいて良かった。周囲に声が聞こえると面倒。
「勇者の部屋。」
「お前は誰だ?」当然言うよな。
「あんたを助けにきたものだ。」
「はぁ、なんでだ?」
「あんたは、操られて勇者とされていた。
グリューネさんたちが様子を見に来たが、逆に人質にされて捕まった。」
「あんたと元宮廷魔術師長を助けないとグリューネさんたちが逃げれない。」
「なんだって?俺が人質?」頭を抱えて座りこんだ。
単純なのか、素直なのか知らんが、初対面の人の言葉を信じるなよ・・・。
信じてもらわないと困るけど。
「おい、時間がないから移動するぞ。」
グリューネさんではない強力な魔力を持つものの気配を探してその牢へ転移した。
「魔術師長さま。」と勇者が近寄った。
「ユーチェ、戻ったのか。」
「やっぱり事実だったんですか。」へこんだ模様。
「すみません。ここに皇太子がいると聞いたんですが、まともな人物ですか?」
かなり失礼な質問だよね。
「はい、民を思うよい方です。」おおっ、スルーして返事してくれました。
あなたもなかなかな人物ですね。
「じゃあ、一緒に逃げましょう。どこかわかりますか?」
「隣です。」あらら、聞こえてますね。俺、この国に良い印象ないから構わないけど。
「じゃあ、連れてきます。」隣に転移。
「聞こえてましたよね?」世話になっていないから敬語を使う気なし。逆に親に怨み・・・。
皇太子の容姿は、俺と同じくらいの年齢で身長は少々高い。
金髪碧眼の王子って王道?よくわからん。
「移動します。」
さきほどの牢へ。
「話は後からということで、先に移動します。」
元宮廷魔術師長の地下室へ。
「ここは、私の家ではないか?」自分の家だから気づきますね。
「そうです。グリューネさんに合流するのに、ここがいいだろうと言われましたので。」
「グリューネさんたちも明日には来ると思います。
ただし、追っ手がこの建物に捜査に来ると思います。
この部屋は捜査されませんので、グリューネさんたちが来るまで出ないでください。
食べ物は明日の朝に持ってきます。」言うことはそれだけなので宿の部屋へ転移した。
元宮廷魔術師長がいるから住みやすくするだろうし、心配もないだろう。