27 城サイド
<召喚された翌日のお城では>
トントン。
トントン。
トントン。
「勇者殿、おはようございます。」
トントン。
トントン。
「勇者殿、開けてもよろしいでしょうか?」
侍女が部屋にいる勇者に声をかけています。
が、返事がありません。
「失礼します。」
扉を開けて、一礼してベッドの方へ向かいます。
「勇者殿?」
ベッドに誰もいません。
侍女は、扉へ戻って騎士に
「勇者殿が、いらっしゃいません。部屋から出られましたか?」
「いえ、誰もこの扉から出ていません。」
と騎士の言葉を聞いた侍女は、宰相へ報告するために執務室へ急ぎました。
執務室で、
「朝早くから失礼いたします。勇者殿が部屋に不在です。
扉の外の騎士は見ていないとのことです。如何いたしましょうか?」
「なんと、手のものを使い、至急捜査するように。
それと神官長と宮廷魔術師を呼べ。」
苦虫を噛み潰したような宰相に
「はっ。」と返事をし、行動するために部屋から退出しました。
侍女は、部下の一人に神官長と宮廷魔術師への連絡を伝え、
他の部下たちに勇者の捜査を指示しました。
この侍女は、普通の侍女ではなく、影と呼ばれる宰相直属の裏で活動する
組織の長でした。
聖を殺そうとしたのも、宰相の指示を受けた、この影の組織の人間でした。
侍女は、再度勇者の部屋を調べるために移動しました。
部屋に何も残っていないかを目を皿にして探しましたが、何も残っていません。
窓から出たことも想定して、窓へ近づきましたが、鍵がかかり開けた形跡が
ありません。
そろそろ神官長と宮廷魔術師が揃うころだと宰相の執務室へ向かいました。
宰相の執務室に宰相、神官長、宮廷魔術師、影の長と4名が揃いました。
「勇者が消えた。至急探すように。」と宰相が言いました。
「ただいま、部屋を確認いたしましたが、何も残っておりません。
窓の鍵もかかったままでした。」と影の長。
「今朝、祭壇へ行きましたら、召喚の魔方陣と勇者を確認する水晶が無くなって
いました。」と神官長の報告。
「部屋と祭壇で魔術の形跡確認を行います。確認後、報告いたします。」
と宮廷魔術師。
「部屋と祭壇を確認後にここへ集まるように。二人とも案内してやれ。」
宰相の一言で皆が部屋から退出し勇者の部屋へ向かいました。
「こちらです。」影の長の言葉で皆が部屋へ入りました。
「魔術を発動した形跡はありませんね。全く感知できません。」
宮廷魔術師の一言で神殿にある祭壇へ移動することになりました。
この国の宮廷魔術師のレベルは、各国の宮廷魔術師の中で3本の指に入ります。
が、森の魔女のように権力者を嫌うものを含めると10番目くらいです。
「こちらでも魔術の発動を感知できません。どちらもわかりません。
執務室に戻りましょう。」この一言で皆で部屋へ戻りました。
「報告いたします。魔術を使われた形跡はありません。原因がわかりません。」
と宮廷魔術師。
「御苦労。陛下へ報告しなくてはならないな。宮廷魔術師は一緒に来てくれ。」
「はっ。」
宰相と宮廷魔術師は王の執務室へ
「陛下、勇者が消えました。
宮廷魔術師に確認させましたが、魔術の形跡はないです。
少ない可能性としましたては元の世界へ戻ったというのも・・・。
いかがいたしましょう。」
「何をいっておる。探せ。探せなければ打ち首だ。1週間以内に探せ。
できないなら換わりのものを召喚しろ。」
「申訳ありません。召喚する魔方陣と水晶も消えました。
もう召喚はできません。」
「なんだと、貴様は、そんなことをおめおめと報告するのか。
下がれ。」
「失礼いたします。」 と王の部屋から退出しました。
「宰相どの、いかがいたしましょう。我らだけでは何もできませんが。」
「この周辺を捜す手配をする他ないだろう。
同時に、黒髪黒い瞳のものを強制で城へ集めろ。」
「はっ。」影に控えていた影の長が返事をしました。