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「魔術の発動は、問題なくできたみたいね。
いまから書庫に案内するわね。ついて来て。」
グリーさんについて二階に上がりました。
私の部屋を通り過ぎて奥の部屋のようです。
中へ入ると小さな図書館のようになっていました。
中央に小さなテーブルと椅子があり、所狭しと棚に本。
テーブルの上に絵本がありました。
「どう?読めそうかしら?」
「はい、題名が読めますので大丈夫です。
用意していただいてありがとうございます。」
「じゃあ、このまま読んでいていいわよ。何か質問あるかしら?」
「あの~、お風呂ってありますか?」
「お風呂?」
「川などで水浴びをするように、家で人が入れる大きなものにお湯を入れて
入ることをお風呂と言っているのですが。」
「湯殿のことね。お城にはあるけど、ここには無いわね。
作ってくれると嬉しいわ。
今日のところは、タオルで拭く程度で我慢してくれないかしら、
暗いから川での水浴びは無理ね。」
「じゃあ、明日できるか挑戦してみます。入りたいから頑張ります。」
「やる気ね。楽しみにしてるわね。明日の薬草収集は私だけで行くわね。
聖は、お風呂の製作ね。
じゃあ、私は、部屋へ行くけど。まぁ、適当に切り上げて。」
「はい、お借りします。」
じゃあとグリーさんは部屋から出て行きました。
椅子に座って、絵本を手に取り、読み始めました。
まず、この世界の国の名前です。
召喚を行ったこの国『「ゴルア王国』、商業の盛んな国『トゥルゴバスキ国』、
軍事国家『アーミヤ国』、宗教国家『クハラム国』、魔族の国『ジオ国』。
大きな国はこの五つで、小さな島国が周辺にあることがわかりました。
絵本には、魔族によってこの世界が荒されていたが、ゴルア王国が勇者を
召喚して、その勇者と仲間たちが魔王を倒し、平和がおとずれたとありました。
それなら、今は魔王のせいで平和じゃないからと、私が呼ばれたのかな?
でも、グリーさんもブランも何も言わないし、行動も起こしていない。
今、私にできることは、グリーさんにこの世界について教えを請うこと。
まずは、一生懸命生きること。それでいいかな。
今日の目標は、国の名前を覚えること。
商業国以外は、何とか覚えれるけど、トゥルゴバスキ国言い難いよ~。
ひとまず、納得できたとこで終了としました。
次は、炊事場へ行ってピッチャーとグラスとボールを借りて部屋へ戻りました。
ピッチャーには水を入れてです。
借りてきたものをテーブルへ置いて、ピッチャーの水を半分ほどボールへ。
ボールの水はお湯へ、ピッチャーの水は冷水へ、指パッチンと魔術を使って。
なんだか魔術を使うということに、多少慣れてきたような気がします。
魔術とか魔法は、小さいころの憧れでしたので、使える自分が嬉しいですね。
お湯が冷めないうちと、体を拭いちゃいました。
喉が渇いた時用に、ピッチャーとグラスをベッドサイドへ。
さあ、寝ましょう。
“皆、お休み~”
“聖、おやすみ”ブランが代表で返事を返してくれたもようです。
<深夜遅く、一般的に人が寝静まったある時間>
ブランが立ち、
“創造のが解放されたぞ。”
“本当ですか?良かったです。”ヴェントが嬉しそうに返事しました。
“ブラン様、創造のが呼んでいますので行ってきます。”
“用心して行け。”
“はい。”
すぐにヴェントが戻ってきました。
“ブラン様、結界を依頼されましたので、この部屋に結界を施します。”
部屋全体が、魔法で包まれた感じになりました。
“依頼とは創造のか?”
“いえ、創造のが一緒に行動する、勇者として召喚された海という人です。
聖の従弟だと言っていました。
勇者として召喚されましたが、髪も瞳も勇者の色ではありませんでした。
聖の影響で呼ばれたようです。
森の魔女に気づかれずに、聖と話がしたいそうです。海は、結界を通れるようにします。”
“では、何らかの方法で連絡を取ってくるということだな。”
“はい、方法は聞いていませんが、そのようです。”
突然、何かの音が鳴り出しました。