19 海 登場
<聖が夕食の準備をしていたころの神殿では>
「お待ちしておりました、勇者殿。」
はぁ?ふ~ん。
結構怒っているんだよね。
さっき、聖が黒い穴へ落ちたの見てたからね。
ドアが開いて出てくるのを待っていたのに、落ちたのを見て急いで駆けつけても
そこは消えていた。
その後に、俺も落ちた。途中下車も含んでここに来た。
異世界トリップで魔王を倒してくれってことだろう。
まずは、聖の状況確認だね。
「私の祖父が、こちらに来ているはずです。すぐに会わせてください。」
でなきゃ暴れます、ってね。
?、急にざわざわしてきましたね。祖父って言葉に反応がありました。
聖に何かしたってことだよな。どんな返事がくるのやら。
「勇者殿、そのような方は、来られていませんが。」
なぁ~んだ、ただごまかすんだ。できる訳ないのにさ。
知っていて聞いている相手に無謀だね。どうしてやろう!
「そちらの隅に祖父の持ち物が落ちているようですが、なぜでしょうね。」
ふん、俺の持ち物を落としてみたが、どう反応するかだな。
「さて、これはなんでしょうか?」
携帯ストラップさ、この世界になさそうなものを選んだからな。
「祖父の宝物です。このような物がありますのに祖父がいないなんて。」
泣きまねこみで、しゃがみこんでみました♪
もちろん俺のストラップは取り戻しました。
「確認してみますのでしばらくお時間をお願いします。」
妥当な返答ではあるが、聖の気配がないからいないわな。
「こちらの石に触れてください。」
これが、勇者かどうか確認するものか、とんでもないもの使ってるな。
ちなみに俺が触っても光らないぜ。薄いけどシリコンの手袋しているからな。
光ってもらわないと困るから強制的に光ってもらうぜ。
「申し訳ありませんが、王がお待ちですので、謁見の間までご足労願います。」
はぁ、その尊敬語変だろう。ご足労願えませんか、が正しい。
尊敬語に命令つけてどうしたいんだ。ただ丁寧に命令したいだけか。
&王がお待ちね。これも俺から言わせれば変だ。俺にとって王は、ただの人。
それも迷惑かけられたから一般人以下。
さて、どうしようかな。ここに聖がいなしなぁ。
王の面でも見に行くとするか。対応に責任はとらないがな。
黙ったまま、謁見の間までついていった。話するのも面倒。
「ひざを突いて頭を下げてください。」
嫌だって言いたいな。えらそーな迷惑な一般人以下に頭下げたくない。
今日のところは揉め事を起こす予定ではないから下げるけどね。
王が出て来て、椅子にかけ
「勇者よ、よく来た。面をあげよ。」
むりやり呼んでそのセリフかよ。テメェ覚えてろ。
顔を上げて王を見ると、ただのデブ、威厳もない。やっぱりな。
「そのほうには、魔王を倒してもらう。」
決定事項ねぇ。絶対やらねぇ。テメェの利益になることはとくになっ。
「無理です。私にはできません。私の祖父を返してください。
家に帰してください。」
「魔王を倒したら祖父と家に帰してやろう。」
よく言うよ。普通はお願いだろうが。
あほらしくなってきた。テメェをあてにするわけないだろう。
「部屋でゆっくり休んでくれ。部屋へ案内しろ。」
最後までその調子か。
部屋へ案内され、侍女と騎士が扉付近に立ったまま、見張りかな?
まぁ、いいけど。深夜にはお暇させてもらうからさ。