1-07
「おあおー」
欠伸が噛み殺しきれていない。寝ぐせもすごい。よくそんな格好でここまで来たな。時刻はAM7:10を過ぎたところだ。ちなみに遅刻である。うちの出勤時刻はAM7:00だ。
「おせーよ今何時だと思ってんだセイラン」
「んあ?7時前くらいじゃねーの?」
「馬鹿野郎7:10だ時計読めねえのか」
「わりーわりー」
なかなかコウマの当たりが強い。ゲーム盤のことを相当根に持っているな。
それも飄々と躱してコートを脱いだセイランが真っ直ぐにカウンターに向かってくる。
「えーもう朝ごはんおわりー?」
「終わりました朝食の営業は終了ですお帰り下さいませ」
「ひでーの」
私の返答にも特に悲しそうな顔をせず、手を洗ってそのまま食器棚のところまで戻ると、鞄から取り出したボトルの中身を自分のマグの中に注ぐ。
「ソラ、これ温めてくんね?」
「えいやなんだけど」
にべもなく断られている。可哀想に。
「えーしゃあない冷たいまま飲むか―」
カップを傾けていたヒナタがボトルを見て目を丸くする。
「それ!!いつも行列出来てるお店が売ってるやつじゃん!!!うちそっち飲みたかった!!!いーなー!!」
「あーこれ貰いモン、昨日帰りに常連さんの一人に会ってそンとき貰った、まだ残ってるけど要るか?」
「んーなんか別にいいかなって感じ」
「そ」
ヒナタの返事を聞いてセイランはボトルの蓋を締める。そのまま鞄にしまった。
「オレもう上行っていい?」
「あちょっと待って洗い物お願いしたい」
私の頼みごとにセイランの足が止まる。
「オレ朝ごはん食ってねえのに?」
「遅刻したんだから当然の罰です、異論は受け付けません」
セイランに洗ってもらうのが一番早いのだ。今日ばかりは水の扱いに長けている彼に任せたい。人数分のプレートとカップとカトラリーに加えてコウマが持ってきてくれた調理器具や皿もあるのだ。
あからさまに面倒くさそうな顔をして、しぶしぶ彼は頷いた。先に荷物だけ置いてくると言って階段を登って、すぐに降りてきた。バタバタと足音がやかましい。
「コウマ!!!!2-3まじ助かる!!!」
「代金払ってくれよなー」
席を立ってプレートとカップを持ちながらコウマが答える。
「おうよ!!!!」
そしてまた二階に戻って行った。
「…あいつ降りて来ないんじゃね?」
「…困るんだけど」
ナリトの指摘が正しいと分かるのはものの数分後のことだった。




