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1-06

食器とカトラリーのぶつかるカチャカチャという音が静かな店内に小さく響く。

「めっちゃ美味しい!!!うち今日何も食べてないんだよね~」

「いつものことじゃん」

私の隣に座るソラの鋭いツッコミが飛んでいく。間に座るナリトとコウマの前を剛速球で言葉が行き交う。

「今日は違うもん!!!間に合うように急いだら食べられなかったの!!!」

「それ遅刻した昨日も言ってなかった?」

「言……ってない!!」

ヒナタがフォークを高らかに掲げて宣言する。

「そっかー」

スプーンを動かしながらソラがあしらう。

店員用の賄いなので、金属の筒に雑多にまとめられたカトラリーを好きに取って好きに使うシステムだ。それぞれが使いやすいものを使えばいい。

一方でナリトとコウマの会話は穏やかなものだ。

「今日持ってきてくれたゲーム盤、どこ置いた?」

「2-3の机」

「ああ、そういえばガタ来てるって言ってたもんね」

「そそ、でもあいつ言う割には何もしねえんだよな」

「確かに」

二階でボードゲーム屋とでも呼べばいいのだろうか、そんな店を展開している彼らの話は私にはあまり分からない。ガタが来てるとはどういうことなんだろうか。それにしても、またか。散々自分でやれと言っているのに。

「セイラン、また?」

「そ、これだめだわって言うだけ言って昨日帰った」

コウマに尋ねるとそう返ってきた。

「どうにかならないかねー」

「どうにもなんねえよ」

ばっさり切り捨てられた。投げやりな回答だ。付き合いが長いだけのことはある。コウマも苦労人なのだな…と渦中の人物の顔を思い出しながら感じる。

そういえば、ヒナタの発言で思ったことがあった。

「え、ねえみんな家でご飯食べて来るの?」

目の前にいるソラが目を逸らす。他三人は不思議そうな顔でこちらを見ている。

「食べてないよ?ここで食べられるし」

「それな!!!しかも作ってもらえるし!!!」

「他力本願過ぎるだろ」

ヒナタの発言はまあ、コウマのツッコミによって相殺されたことにしよう。残るはソラだ。一応聞いておこう。目を合わせようとするが逸らされる。何がそんなに嫌なのか。

「…そんな言いにくいことある?」

「だって食べすぎじゃない?」

「そうかな、だってソラ家ちょっと離れてるし食べて来てるの何もおかしくないと思うけど」

ナリトがフォローする。確かにその通りだ。

「あと俺もなんかちょっとつまんできたりはするし、コーヒー飲むくらいはしてる」

「うちいつも朝ごはん抜きー」

コウマもフォローに回る。ヒナタは論外だ。ここで食べるのだから構わないが。

「えーでもさあ…」

それでもソラは何か言いにくそうだ。普段はっきりとした物言いをする彼女がここまで言い淀むのは珍しい。でも無理に急かして言わせる必要もないだろう。黙々と朝食を食べ進める。やっぱりソラに作ってもらったものは美味しい。口に含んだフレンチトーストからじゅんわりとバターが染み出してきて笑みがこぼれる。蜂蜜をかけたのは大正解だった。バターの塩味と合わさって最高に美味しい。

隣に盛ったこんがり焼けたベーコンの脂がつやつやしている。早く食べてしまわないと冷めてしまう。カリカリのベーコンを咀嚼して飲み込み、紅茶を啜る。いい香りだ。まだこの茶葉がたくさん残っていると思うと嬉しくなる。

ずっと黙していたソラが、バニラアイスを乗せたスプーンを口に運びながらぽつりと言った。

「今日の朝ごはんフレンチトーストだった…」

「ゲホッ」

盛大に咽る羽目になった。

顔を背けて涙目になって咳き込む私の背を摩りながらソラが弁解する。

「だから言いたくなかったんだって~」

「いやそれにしても連続はすげえわ、甘いもの続きじゃん」

ナリトが話題のフレンチトーストを口にしながら言った。メープルシロップを掛けたらしい。少しシロップが滴っている。カウンターに零してくれるなよ。

「あ、やべ零した」

言わんこっちゃない。

「けほ、ちゃんと、拭いとい、て、よ」

「ごめんて」

そんな騒動を尻目にコウマはアイスをのんびりと食べている。

「お、美味い、流石ユキ」

ありがたい一言だが、今じゃない方が嬉しかったかもしれない。

心配そうにソラが私の顔を覗き込む。

「大丈夫?平気?」

「へいき…こっちこそ、ごめん、メニュー、ダダ被りで」

「え?ううんこれでリベンジしたから被ってないよ!ありがと」

「リベンジとは…」

ほんの少しふくれっ面をしたソラがアイスを指しながら言う。

「家でトッピングにアイス乗せて食べようと思ったのに妹にアイス食べられたの!!」

「なるほど…」

同居している妹とは仲の良い姉妹だと思っていたがこういうこともあるらしい。大変だ。

「だから食べられてよかった!!めっちゃ美味しいアイスだったし、リベンジ完了!!」

「だから朝あんなに振り切れてたのか…」

コウマがぼそりと言う。もう全て食べ終わったらしい。プレートの上が綺麗になっている。

「それならお昼に食べに行けばよくない?ここで同じもの食べることないじゃん」

スクランブルエッグをかき集めながらヒナタが告げる。いやだからと言って急なメニュー変更は受け付けられないのだが。でも一理ある。

「だってどうしても食べたい気分だったの!夢にまで見たアイスが乗ったフレンチトースト食べたかったんだって!」

「ソラやば~」

「いいでしょ!」

夢、ねえ。

ぎゃんぎゃんと騒ぎが続きそうだったので一度止めておく。そろそろ食べ終わらなければ。手に持つプレートの上で、最後に取っておいたベーコンの脂が固まってしまっている。もう冷めてしまったのか。

「はいはいそこまでそこまで、もうすぐ食べ終わらないと忙しくなるよ」

「わかったー」

一言掛ければすぐに落ち着いた。いつものじゃれ合いのようなものだ。すぐに収まる。

それぞれ食べ終えカップを傾けたり、今日の営業について話したりしていると、裏口の扉が開いて最後のあいつがやってきた。

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