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1-05

「ソラのそれ、いいよなあ」

「わかるー冬とかまじ便利そー」

いつの間にかナリトとヒナタがカウンターまでやってきていた。牛乳が温まるまでの間は少しだけ手持ち無沙汰だったから、会話に混ざることにした。

「コウマは?」

「ゲーム盤二階に持ってった」

ナリトが答えてくれた。だからあんなに大荷物だったのか。

「なるほど、そんで倒れたテーブルと椅子はどうしたの」

「…あ」

「…やべ」

二人揃って忘れていたらしい。私の視界の端に、いくつかのテーブルと複数脚の椅子が起こされてはいるものの位置が普段の場所から大きくずれているのが見えていた。

「直しといてねー」

「はーい」

いい返事だ。

ナリトが椅子を戻しに立ち上がる。ヒナタはカウンター前のスイングドアからキッチンに入ってきた。どうやらアイス以外が出来上がったのを見ていたらしい。相変わらず動きが速い。怖いので作業台に張り付く勢いでよける。

「ソラ、これ盛り付けて持ってっていい?」

ボウルを抱えたままソラは答える。視線はボウルに向けられたままだ。

「ん、いいよ、食べるだけ持ってって」

「わーい」

ヒナタが食器棚からプレートを取り出し、楽し気にベーコン、フレンチトースト、スクランブルエッグを盛り付けていく。それをなんともなしに眺めていたらソラに声を掛けられる。

「はい、完璧」

そういってこともなげに差し出されたボウルを普通に受け取りそうになって、慌てる。

「いや待って待って待って絶対熱い!持てないから!」

急いでトリベットを敷いてその上に置いてもらう。一旦砂糖が溶けきるまで混ぜてもらう間、私は卵黄を用意した。

「えーっと卵黄を溶いて、牛乳をザルで濾す…めんどいな、いいや濾さずに混ぜちゃえ」

「手抜き~」

砂糖を混ぜるソラから野次が飛ぶ。

「いいでしょ朝食なんだから」

「それもそうか」

卵黄を溶いたボウルに少しずつ牛乳を加えて混ぜていく。そこからまた温めなければならない。手間のかかるデザートだ。

でもデザートは大概このくらい手間暇かけるものか。なら仕方ない。自分で自分を納得させる。

「ちょっとこれ持って温めてね、混ぜながらだと助かる」

「どんくらいまで?」

「とろみがつくくらい」

また少し時間がかかるだろう。その間に朝食の準備だ。ナリトとコウマはどのくらい食べるのだろう。なんにせよ二人ともキッチンには来るのだ。本人に盛り付けさせよう。

私は自分の分の紅茶を淹れることにした。一応ヒナタにも飲むか聞いてみたがいらないとのことだった。彼女は甘い飲み物が好きなのだ。

椅子を戻し終わり、テーブルに残されたコウマの荷物から調理器具と皿を抱えてナリトが玄関近くのドアからキッチンに入ってきた。抱えていた荷物をシンクに丁寧に置いていく。一度軽く洗うためだ。

こちらにも紅茶はいらないと言われた。どちらかと言えば彼はコーヒー派だ。

いつものマグカップに新しく買った紅茶のティーバッグを淹れてお湯を注ぐ。爽やかな香りが漂う。

「ユキー、できたー」

ソラに呼ばれる。

「ありがとー、あとこっちで出来るから盛り付けて持ってっていいよ」

「楽しみ~」

ソラと入れ替わりでカウンターの方へ向かう。

ソラは食器棚から4枚プレートを出していた。気の利く人だ。ナリトに何をどのくらい食べるのか聞いている。私も聞かれたので答えておいた。フレンチトースト2枚とベーコン2枚だ。スクランブルエッグが増えたのでそんなに多くなくていい。

ヒナタは既にちゃっかりカウンター席に座っていた。片手にカフェオレと思しき飲み物が入ったマグカップを持っている。いつの間に作ったんだ。いや買ってきたのか。

まあいつものことだ。

ボウルに少しずつ触れる。まだ熱いが、すぐに冷めるだろう。触れるくらいまで冷めてきたら、ホイップクリームを合わせる。半分くらいしか立てていないのでそこまで神経を使って混ぜる必要は無い。混ぜ終わったらバニラエッセンスを入れて空気を抱きこむように混ぜながら冷やしていく。しっかり右手で抱きこんで、中身を冷やしていく。何せアイスだ。温度が命のようなものである。今までやったことがないので急冷したらどうなるかわからないが、まあ形にはなるだろう。

そうこうしているうちにコウマが二階から降りてきてキッチンに入ってきた。ゲーム盤を持っていくついでに二階の開店準備もしてくれたらしい。それにしても結構な人口密度だ。キッチンにこんなに人数はいらない。

ナリトもコウマも、ソラからコーヒーを貰っていた。紅茶はすげなく断られた。ついでに各々盛り付けられたプレートを持ってキッチンを出て行った。

カウンターに並んで座るコウマが私の腕に抱えられているボウルを、上半身を乗り出して覗き込んでいる。

「そんな珍しいっけ」

「うん、俺あんまユキが能力こうやって使ってるとこみたことねえからさ」

「そうだっけー」

「普段あんま使ってねえじゃん」

「まあねー」

だんだんボウルの中身が固くなってきた。いい具合に凍っていっているようだ。

泡だて器を引き抜き、大振りのスプーンで混ぜる。カウンターに座る面々に尋ねる。

「トッピングにアイスいる人ー?」

「いる!!!!」

「俺もー」

「ちょっと食べたいー」

「アフォガードにしたーい」

四者四様の答えが返ってきた。トッピングにしたいのはソラとコウマ、ナリトは恐らく単品で食べたいのだろう、別の皿に盛ることにした。ヒナタの答えは斜め上すぎる。

「ヒナタ以外のリクエストにお答えします」

「ひっどくない!?うち今日頑張ったじゃん!!!!」

「だからといってアフォガードは無理です。エスプレッソないもん、でしょ?ソラ」

「エスプレッソはないかなー」

「えーーーー」

むくれるヒナタを見て笑いながら、ソラが続ける。

「いいじゃん普通にデザートで食べれば。ユキが作ったんだもん絶対そのままで美味しいよ」

その言葉でヒナタは立ち直ったらしい。

「確かに!!!!」

純粋だな。

出来上がったアイスを、ソラとコウマのフレンチトーストの上に乗せる。小皿を二つ出して、そこにナリトとヒナタの分を盛り付ける。ハーブの植えてある鉢からミントの葉を少し採って軽く洗って水気を拭きとって、それぞれのアイスの上に飾り付ける。全員分摘んだつもりだったが少し足りなかったので私の分のミントはなしだ。まあいいか。でも彼らのプレートの見た目は完璧だ。アイスの味というか、舌触りは保証できないのだが。

自分の分のプレートにも残った分のアイスをかき集めて乗せておく。入れたままになっていたティーバッグを引き抜き、ゴミ箱に捨ててからカップを右手に、プレートを左手に持ってカウンターへ向かう。

やっと、朝食の時間だ。


「いただきます!!」

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