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1-03

「それにしても、お湯沸かすのにコンロ使わなくていいの?まだもう一口空いてるし、抱え続けるのしんどくならない?」

「ありがとう~でも大丈夫、こっちのが早いし」

「そういうもんなんだ、あ、ベーコンとフレンチトースト何枚食べる?」

「ベーコン3枚とフレンチトースト2枚!」

「はいよー」

それなら今焼いている量だけでここの二人分は足りそうだなと思った直後に、ソラから衝撃的な一言が飛び出した。

「あとトッピングでアイス乗せてー」

「まじで???」

今冷凍庫にアイスはない。あまり自分で好んで食べるデザートではないからだ。ベーコンとフレンチトーストを任せて買いに行けということだろうか。この時間に開いている店は無いと思うのだが。

「作ってよー材料余ってるでしょ?牛乳もバニラエッセンスも生クリームも砂糖もあるし」

なんだか今日のソラはワガママだ。ここまでの道中で何かあったのかもしれない。でもねだられても作りようがない。卵がないのだ。

「……卵黄ないよ?」

「卵無しでいけないかな」

どうして即答できるんだ。

「…あっさりしたバニラアイスになりそうだけど」

「じゃあホイップクリーム凍らせよ?」

トッピングへの執着が凄まじい。何がそこまでソラをアイスに駆り立てるんだ。

「それでいいなら作るけど…」

火にかけたままのベーコンとフレンチトーストをソラに任せる。ベーコンは追加したほうが良さそうだ。たぶん今の枚数では後から来る人数に対して足りない。そのあたりの判断も彼女に任せよう。

「フローズンホイップも美味しいと思うけど、でもやっぱりなんか違うなってなりそうじゃない?バニラエッセンス入れない?」

コーヒーを淹れ終わった彼女は、ポットをコルクのトリベットに乗せてからこちらにやって来て言った。

どうやら相当フレンチトーストのトッピングのバニラアイスにこだわっているらしい。

火の近くにいると凍らせるときに非効率なので私は一旦彼女のそばから離れて、奥の客席のカウンターの方まで進む。

彼女は火の扱いが上手い。私よりもおいしく焼き上げてくれるだろう。私がやるとなんだか焼きすぎてしまうのだ。しかも作ったものはすぐ冷めてしまう。その点、彼女は温かいものを調理することにものすごく長けている。

さっきの冷蔵庫から牛乳、生クリーム、バニラエッセンスを取り出し、ソラに声を掛けてコンロの上の棚から砂糖を取り出す。冷蔵庫はコンロの真後ろだ。気を付けて移動する。

さっきよりもコンロの火力が上がっている。彼女が何かしたのだろう。

冷蔵庫の隣にある食器棚の下の段から少し大きめの金属製のボウルと、泡だて器を取り出す。

コーヒーのいい香りが漂う。

元の場所に戻って金属のボウルに生クリームを開けようとしたのと同じタイミングで扉の外から声がした。

「おはよー」

「おはー」

どうやらやってきたのはコウマとナリトのようだった。店の前でばったり出くわしたらしい。彼らもソラと同じ出勤時刻厳守組だ。

「コウマその荷物どうしたの?」

コウマは何か大荷物でやってきているらしい。ナリトが何か尋ねている。

外は春先だと言ってもまだほんの少し寒いのだから一旦店内に入ってくればいいのに。

ボウルに生クリームを開けて、泡だて器を左手に持つ。ホイップクリームは好きだが、作るのは手間がかかって面倒くさいから好きではない。

コウマの声が聞こえる。

「あーこれ?今朝家出るときに隣の家の人がくれた卵。このまえクッキーあげたやつのお礼だってさ、知り合いから貰ったけど使い切れないからって」

左手が止まる。

ソラの方を振り返る。

ソラもこちらを見ていた。

私も彼女も目が輝いている気がする。

ソラが裏口の方へ飛びつくように向かって、扉を開けて、ほぼ叫ぶ勢いで言った。

「卵!!!!!!」

キッチンの奥からでも扉の向こうのコウマとナリトの驚いた顔が見えた。なんだかおかしかったので、私は取り敢えず泡だて器を置いて、左手でひらひらと手を振っておいた。

「おはよーお二人さん。卵持ってるって聞こえたけどほんと?」

「え、こわ」

ソラと私の温度差についていけていないナリトが呟いた。

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