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今日はなんとなく、スクランブルエッグとベーコンを食べたい気分だった。友人たちの朝食はそれで決定だ。作り主に文句は言わせない。
確か卵が残っているはずだと思って、賄い用の小さめの冷蔵庫を開けてみたら期待していた場所に期待していたものが無い。
ベーコンはあるのだが、肝心の卵がない。
残っていると思ったのは勘違いだっただろうかと思いつつ、仕方がないのでベーコンを焼きつつ、昨日の夜山ほど漬けて置いたフレンチトーストも食べようと思って容器を引っ張り出して、声が出た。
「ああ~~~~~卵ぉぉぉ………」
「おは……なにしてんの?ユキ」
「卵ぉぉ……」
ちょうど裏口の扉を開けて入ってきたのはソラだった。彼女が最も早い出勤時間を誇る。店員兼友人の中では、個人的に外で働いても何ら問題ないであろうランキング堂々の一位だ。
「卵?どうしたの、落とした?」
「ううん違うスクランブルエッグ作ろうと思って卵ないじゃんって思ったら昨日の自分が使ってた」
「本当に何してんの?」
そして良いツッコミ役でもある。
フライパンで火にかけられたままのベーコンと、無駄に嘆く私を交互に見て、小さくため息をつくと、羽織っていた薄手のコートをポールハンガーに掛け、手を洗ってソラはコーヒーを淹れにポットを取りに行った。
喉が乾いているのか、裏口から真っ直ぐに続くキッチンを迷いない足取りで進み、調理器具が順序良く並んでいる、客席用カウンターの前からコーヒー用の注ぎ口の細いポットを掴む。そのままこちらに戻ってきて、私の背後にある食器棚からソラ専用のマグカップを取り出して、コンロの隣にあるシンクで一杯水を汲んで飲み干した。そのまま片手に持つポットに水を注ぎ、両手で包み込むように抱える。
その様子を見ながら卵のショックから立ち直った私はベーコンを焦がさないように裏返しつつ、もう一つフライパンを出してフレンチトーストを焼くことにした。
フレンチトースト四枚に対して、バターを一欠け、いや二欠けでいいか、卵が無かったショックをバターで上書きする作戦だ。しかも朝食なのだから多少高カロリーでもいいだろう。なにせこれから働くのだし。ソースは何を掛けようかな。蜂蜜にしようか。それともメープルシロップにしようか。ああそういえばこの前新しく買ってきた紅茶があるんだった。飲み物はそれにしよう。
ポットを温めているソラに、紅茶用にもお湯が欲しいことを告げる。
ポットを片手で抱えつつ、コーヒー豆を取り出しながら彼女は快諾してくれた。いい人だ。




