1-01
いつも、同じ夢を見る。
何かを、追っている。
何かに、追われている。
誰かを、呼んでいる。
誰かに、呼ばれている。
冷ややかな空気に包まれたどこかで、私は走り続けている。
何かに急かされるように必死に走る。
でも、何が目的なんだっけ?
何を、しに来たんだっけ?
私は、何をしなければいけないんだっけ?
は、と短く息を吐きだした。
いつもの夢だ。
もう何年も見続けている、ずっと何かに追われて、ずっと何かを追い続ける悪夢だ。
右側にある窓にかかるカーテンの隙間から朝日が漏れ出しているのが視界の角に見えた。
もう朝か。
深呼吸をして、夢のせいで上がっていた息を整え、ばくばくする心臓を落ち着かせる。
今日も喫茶店<エキゾチック>の開店準備が待っているのだ。早く起き上がって支度をして、絶対に寝坊して遅刻してくるであろう店員兼友人たちを迎えなければ。
のっそりと起き上がって、布団をはぐ。この頃はあまり寒くない。もうこの冬用のスリッパも衣替えしてもいいかもしれない。
微妙に潰れた鳥のような顔が描かれたもこもこのスリッパを履いて、分厚いカーテンを開ける。ついでに換気もしてしまおう。開店する前に閉めればいい。
窓の外はほんの少し肌寒かったが、うららかな朝日で満たされていた。
本格的に春がやってきたのだ。柔らかな風の中に、少し緑の香りが混じり始めている。なんだか落ち着くいい香りだ。いつも通りの目覚めではあったけれど、窓の外の空気を胸いっぱいに吸い込めば、なんだかこころもち気分が晴れやかになった。
さて、顔を洗って、うがいをして、着替えて、髪を梳いて、メイクをして、階下に降りて朝食を作らねば。
顔にかかってきた寝ぐせの付いた少し長い前髪を、右手でかき上げる。
時刻はAM6:30。
喫茶店<エキゾチック>のいつもの朝が始まる。




