表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
方舟戦記:寵愛の神子姫  作者: ゆきやこんこ
序章 『はじまりの朝』
1/2

第一節 『ありがとうのおまじない』

方舟シリーズ3作目です。よろしくお願いいたします。




 けここっこー!

 ニワトリさんの鳴き声が、朝餉(あさげ)の時間を教えてくれる。


「んぅ、うぅん……。さむぃ」


 障子の隙間からやって来る冷たい風に、ボクは急いでお布団の中にもぐる。

 ぬくぬくで、ぽかぽか。とってもあったかい。ミノムシさんの気持ちが少しだけ分かった気がする。


「きょうはこのまま寝てたいなぁ……」


 まぶたが頬っぺたとくっついちゃう。もう目が開かないよぉ~。

 でも──、



「──おはようございます、折姫様。朝餉(あさげ)をお持ちいたしました」


 朝餉(あさげ)はいつも決まった時間にやって来る。

 だからお寝坊なんてできない。


 折角のご飯が冷めちゃうし、作ってくれた人たちが悲しんじゃうから。

 ちゃんと一番おいしい時に、食べないと。


「ふぁ~い」


 お返事をする時に、あくびも一緒に出ちゃった。


「今日は白川産の(あゆ)の塩焼きに、安土産の大根おろしを添えてます。ゆず醤油をちょっとかけて食べると、油っぽさが消えるのでオススメです! 玄米の方もおかわりたくさんあるので遠慮なく言ってくださいね~」


「うん……」


 頑張ってお布団から出ると、女中のお姉さんが朝餉(あさげ)の用意をしていた。


 桜柄のお茶碗にほっくほっくの玄米をよそい、お味噌汁の入ったお椀の(ふた)をそっと開く。

 ふわりと香るお味噌とだしの香りを嗅いだ瞬間、ボクのふにゃふにゃ頭がぴぴーんと冴えた。


「いただきま~す!」


 食べる前にありがとうの気持ちを、元気よく言う。

 それからボクは桃色のお箸を持って、まずは温かいお味噌汁に手を伸ばす。寒い朝は、まず身体の温まる汁物から味わうの。


「はぅ……」


 ぽかぽかだぁ~。やっぱり朝はこれだね~。


「この(あゆ)もおいひぃ~♪」


 お塩加減もちょうどよくて、玄米もぽいぽいお口の中に入ってく。

 それに脂のまろやかさがお塩のピリピリを消してくれるから、とっても食べやすくて幸せだぁ~。


「おかわりもありますよ」


「おかわり~!」


 ボクはすかさず、鮎の塩焼きをお願いした。


「はむっ、んぅ~♪」


 今度は、大根おろしをちょびっと乗せて食べてみた。

 ちょっとだけ舌がピリリと痺れた。でも、脂のたくさん乗った鮎はとってもさっぱりしてて、さっきよりも、もっとおいしく感じた。


「このゆず醤油もさいこ~だぁ~」


 醤油のしょっぱさとコクに、ゆずのすっぱさとすっきりする香りが一緒になって、鮎のおいしさがもっとも~っと増した。


「まだまだおかわりありますよ」


 ボクの気持ちを分かってるなんて、このお姉さんはデキる人だ。


「あと十匹ほしい~!」


「さ、流石に、十匹はご用意してないです……。あと五匹ならあるんですが……」


 驚かせちゃったかな?

 でも、あと五匹は食べられるみたい。


「じゃあ、五匹~!」


 うれしくて声がピョンピョンしちゃう。だって、まだ食べられるんだもん!

 あっ、ついでにごはんもおかわりしよ~っと♪


「分かりました。でも、残したら怒りますからね~?」


「もっちろ~ん♪ たべものは粗末にしちゃだめって、紗季お姉さまに言われてるから、残したりしないよ~♪」


 紗季お姉さまにおしりペンペンされちゃうんだもん!

 言いつけはちゃんと守らないとね!


「てことで、ごはんおかわりぃ~! あとお味噌汁も~!」


 ボクのお腹は、ぶらっくぽーる?

 だから、たっくさん食べてもへっちゃらなんだぁ~♪


「ぷはぁ~! 食べた食べた~♪」


 ぽこぽこお腹をなでなでしながら、ボクは畳の上に寝っ転がる。

 でも、すぐに起き上がった。


 ひとつだけ忘れてることがあったんだ。

 それはね──、



「──ごちそうさまでした!」


 食べ終わりのあいさつ。ありがとうのおまじない、だよ♪



面白いと思っていただけたら、ブックマークと評価していただけると幸いです。

感想もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ