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第八話 俺の嫁になってくれと告白するも……

「うーん、まあまあの出来かな」

 中間テストがようやく終わり、一応、それなりの点数で終わったので、安堵する。

 まあ平均を超えたくらいなんで、木乃香姉さんに褒められるほどじゃないんだけど、赤点もないから良しとしよう。


「ふう、ちょっと重かったな」

 放課後、スーパーに買い物に行って帰宅し、食材を冷蔵庫に入れていく。

 木乃香姉さんはまだ仕事から帰ってくる時間じゃないし、今日はバイトもないから、今の内に洗濯や掃除なんかも済ませておこうっと。

 それで今日の夕飯は……ハンバーグだ。

 俺も木乃香姉さんも好きだし、ちょうど良いだろう。


「ただいまー」

「おかえり」

「おっ、この匂いは……ハンバーグじゃん。きゃー、嬉しいなあ。ハル君が作ってくれたんだ」

「まあね」

 夜中の七時過ぎになり、仕事から帰ってきた木乃香姉さんが食卓に並べられたハンバーグを見て、目を輝かせる。


「ハル君のハンバーグ美味しいんだよねー。てか、エプロン姿も超似あってる♪」

「そうかなー。別に得意って程でもないけど」

「そんな事ないって。家事のスキルは私なんかより全然上だよ」

 お世辞なのか本心なのか知らないが、料理は木乃香姉さんの方が上手だと思う。


 というか、木乃香姉さんの手料理を毎日食べたいのだけど、今はちょっと無理だしなあ。

「ハル君って、主夫とか似合ってそうだね」

「は? いや、そんな事ないだろ」

「ううん、絶対似合っている。どうせなら、専業主夫でも目指してみない?」

「よしてくれ。嫌だよ」


 流石にそんな未来はちょっと勘弁して欲しい。

 俺の夢は木乃香姉さんと結婚して、出来れば木乃香姉さんに主婦をやってもらいたいのだが、流石にこれは口には出来ない。

 今の仕事も楽しそうだし、木乃香姉さんももっと自分のやりたいことをやって欲しいんだけどな。


「ね? どうせなら、私の主夫にならない?」

「はい?」

「ハル君が結婚も就職もできなかったら、そうしてあげても良いよ。毎日、家事をやってくれるなら、私も助かるし」

「…………いやいや、流石に……」

 何を言いだすかと思えば、また変な事を言ってくるなあ。


 木乃香姉さんの主夫って事は、実質ヒモとかニートになれって意味じゃんか。

 仮にも弟に対してそんな事を言っちゃう姉も滅多にいないと思う。

 まさかと思うが、俺はそこまでダメ人間だと思われているんだろうか?


「ね、駄目? お姉ちゃんが責任を持って養うから」

「考えておくわ」

「本当? 約束だよ」

 と言って、木乃香姉さんは自室に戻っていく。

 こんな事で、木乃香姉さんと言い合っても仕方ないので、適当にあしらった答えをしたつもりだったが、よくあんな事言えるなって思う。


 俺が木乃香姉さんの主夫になるって、本当にそうなったら、木乃香姉さんは一生結婚も彼氏も出来やしないぞ。

 いや、俺がなりたいから、他の男を連れ込まれても嫌なんだけど、流石にヒモみたいになるのは抵抗あるな。


「いただきまーす。うーん、美味しいねえ」

「どうも」

 着替え終わった木乃香姉さんが、満面の笑みで俺が作った夕飯を食べてくれると、俺まで嬉しくなってしまい、作った甲斐があったなって思う。


(出来る事なら、死ぬまでこんな生活送りたいなー)

 最悪、恋人同士になれなくても、今の姉弟の関係のままで二人で暮らすのも悪くないかも。

 傍から見れば、夫婦にも見えるだろうし、いっそそうだと言って生活しても……よくない!


 そんな生殺しのような関係はゴメンだ。

 俺は木乃香姉さんを彼女に……したいんだよ、今すぐ。

「どうしたの? 何か怖い顔して?」

「え? いやー、はは……さっきの話思い出しちゃって」

「さっきの?」

「いや、あの……木乃香姉さんが、俺に主夫になって欲しいとかなんとか……」


 咄嗟にそう言い訳すると、木乃香姉さんもクスっと笑い、

「なーんだ、まだ気にしていたんだ」

「それはまあ。冗談で言ってるのはわかるんだけどさ」

「何、冗談だと思ったの? 本気だったら?」

「困るって。俺をダメ人間にさせたいのかよ」

「あはは、でも、ハル君には合ってるかなって、割と本気で思って。ま、本気にしたんなら、いつでも言ってよ。家事スキルをもう少し上げたら、考えてあげる」


 ハッキリと冗談と言わないあたり、流石、意地悪というか小悪魔的な所があるが、いっそ本気で養ってくれと言ってやったらどうだろうか。

 まあ、木乃香姉さんをからかう趣味もないけど、本当に迫ったら、どう反応するかは興味出て来た。


「ご馳走様。片づけは私がやっておくから」

「あ、ああ。頼むよ」

 何て話している間に、夕飯を食べ終わり、食器を片付ける。

 木乃香姉さんに片づけをやってもらうのはありがたいが、本当に主夫になったら、家事は全て俺がやるようになるんだろうな。


「ふーん、ふん♪ ん? どうしたの、じっと見て?」

「いや……」

 鼻歌を歌いながら、食器洗いをしている木乃香姉さんがまるで新婚の奥さんみたいだなって思いながら、眺めていた。


「木乃香姉さんは、将来、専業主婦になりたいとか思わないの?」

「え? あー、どうだろう……あんまり、考えたことないなあ」

「将来、なってくれって言われたら、どうする?」

「うーん、今の仕事、続けたい気持ちもあるしなあ」

 あんまり乗り気じゃない雰囲気だが、木乃香姉さんも主婦になるの嫌なんじゃ。


「木乃香姉さんも主婦似合うと思うんだけどなあ」

「ええー、そうかなあ?」

「そうだよ。どうせなら、俺の主婦になってくれない?」

「ハル君の? うーん、悪くないけど、そんなに稼げる?」

「ば、馬鹿にしないでくれよ」


 そんなに俺って、稼ぎも悪い駄目な弟になりそうに見えるんかな。

「この前の中間テストだって悪くはなかったし、木乃香姉さんを養うくらい余裕だしー」

「本当? でも、私の方が七つも上だからさあ。ハル君がちゃんと稼げるようになるころには、もう私、おばさんだよ」


 俺がちゃんと稼げるようになるまでか……高校出てすぐに就職すれば、あと二、三年くらいだが、大学に行けば最低でも今の木乃香姉さんくらいの年になるまで待たないといけない。

 くそ、そこまでは待てないな……七歳のハンデはかなりデカイ。

 そんなに木乃香姉さんを待たせるのも悪い気もするし……。


「くす、なーに? さっきので、対抗心持っちゃった?」

「お、おう。どうせなら、俺が木乃香姉さんを養いたいなーって思って。俺の主婦つうか、嫁になってくれない?」

「弟に養われるのちょっとなー。てか、私を家政婦扱いする気?」

「それは、そっちもじゃん!」

「そうだけどさ。でも、ハル君は主夫合ってそうだけどな。えへへ、まあ私より稼げるようになったら、出直してきて。それまでは、私が養わないといけない立場なんだし、ハル君が私の嫁ってか、主夫って事で」


 くう……嫁になってくれと、かなりストレートにプロポーズしたつもりなのに、はぐらかされてしまった。

 やっぱり、まだ『弟』としか見てないのか。

 でも、負けないぞ。いつかは、本当に木乃香姉さんを嫁にしてやるんだからな。

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