78話 カミムラユーノとヤギどらごん
よろしくお願いいたします。
お弁当をつくるようになって1か月。
それは私が社会人になって1か月ということ。
土曜日の午前10時。
私はまとめて平日5日分のお昼のお弁当をつくる。カーテンレースを刺す柔らかな光が部屋を温める。これだけでいい休日だと思う。
今回は鳥そぼろと炒り卵の2色弁当。甘く煮たそぼろに塩と胡椒で味付けしたシンプルな卵の組合せ。
彩りを考えてブロッコリーも加えることにした。
茹でたブロッコリーをボウルからお弁当へ入れようとしたとき、掴んでいた箸の間を落ちブロッコリーはテーブルに吸い込まれるように落ちていった。
よく茹でられた緑色は着地と同時に柔らかく砕けた。小さな蕾も舞う。
まるでブロッコリーのバラバラ死体だと思った。私はなんとも不謹慎である。
砕けた欠片を菜箸で掬って掌に集めて味見する。やっぱりいい塩味。
完成した弁当をヤギどらごんぬいぐるみに見せる。
見せるのはヤギどらごん君だけだから、君は特別なんだぞ。なんていつも思うけど、やっぱりぬいぐるみだからは何も反応はない。
お弁当の具材の残りを昼食として摘む。やっぱり美味しい。カミムラユーノは口の端を上げて微笑んでいた。
下へスクロールすると、
☆☆☆☆☆をタッチして評価できます。
ブックマーク、評価はより励みになります。
ありがとうございました。




