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ドリームブレーカーとヤギどらごん  作者: ヤギどらごん応援隊員
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75話 彼女とヤギどらごん

よろしくお願いいたします




「5億円を今貰える代わりにその後の人生の食事が常に5分遅れるとしたら、あなたはその5億円を貰う?」


 料理を待ちながら彼女は言う。

日曜日の14時過ぎ、いつものファミリーレストランに僕達はいる。運ばれてきた料理には手を付けずに僕は彼女を見る。

「それって今みたいに、僕の頼んだものが先に来て君のものは確実に5分後に運ばれてくるような状況ってこと?」

そうよ、と暇な手を遊ばせるようにほとんど空のコップを傾けて彼女は答えた。

「うーん、それって結構なストレスじゃないかな。僕ならその5億円は見送るなぁ」

彼女は目を見開いて僕を見る。

意外だ、とでも言いたげだったのでそのまま続けることにした。

「皆で食事を摂る時に5分遅れる。一人で食べてもレンチン時間プラス5分、料理時間にプラス5分、慣れればいいけどきっとキツいと思うんだ。僕はその5億円は諦めるよ」

ふーん、と彼女は言い、ちょうど目の前に運ばれてきたトマトの赤色が映えるサラダに手を付けた。


 彼女はこんな風におもしろいことをよく言う。妙にありそうな、あったら少し嫌な世界を作るのが上手いのだ。

彼女は物書きではないし空想を詠う人でもない。仕事は家の工場の経理事務をしている。30になる兄が嫁をもらい、家も仕事場でも肩身が狭く、出て行きたいというのが最近の口癖だったりする。

「何と引き換えても欲しいものは手に入れるべきだと私は思う」

彼女の方を見ると何もなかったように涼しい顔をして食事を続けていた。

僕は彼女を見続けた。整った綺麗な顔をしている。「箱入り娘、もう家に必要なし」と彼女が言っていた時期もあった。彼女の首にはいつも着けているヤギどらごんネックレス。彼女はヤギどらごん狂信者。ただひたすら一人で祈ると言っていた。

幸せになれますように、と。


自分のことを見てくれる人がいて、ずっと一緒にいることが夢だとよく語っていた。


 ヤギどらごんでも神様でも何でもいい。

どうか僕達二人をこの場所にいられるようずっと見ていてくれないかな。




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